0024.新しい魔法の習得
俺はエアガンを構え30mは先に居る魔物の蛇を狙っていた。
エアガンはいわゆる狙撃銃と言われるタイプの物でスコープが付いていてカッコいい。
もはや、魔物を躊躇なくただの的として倒せるなんて人間慣れとは恐ろしいもんだな。
人知を超えたパワーと視力によって狙いは揺らいだりしない。
完璧だ!
それでも俺は、いつものように狙いがぶれないようゆっくりと引き金を引く。
シュパッ
「あれえ~? 当たらないな~」
蛇の少し上を掠めただけのようだ。
BB弾は軽いのでどうしても上下左右に誤差が出てしまう。
「まあ、蛇は細長くて小さいいから仕方ないか!」
と言い訳しても誰も答えなかった。
何故かって? ケイとアンは、二人ともに魔法の練習にのめり込んでいるからだ。
「やったー! アンの勝ちだニャ!」
「ぐぬぬ、次は勝つわ!」
「続けて勝たせてもらうニャ」
「勝負よ! 次はあのスケルトン」
二人は遠距離からの火魔法でどちらが先に魔物を仕留めるかを競い合いヒートアップしている。
今の所ケイがリードしているが、アンが段々上達し追いつき始めていた。
そう二人とも焼失魔法ではなく火魔法でだ。
ダンジョンに着いてから、まず俺たちは新しい魔法を試す事にした。
「アン、魔法なんて使った事ないニャ。使えるのかニャ?」
アンの住んでいた町では危ない為、ある程度の年になるまでは魔法を教えないのだとか。
「大丈夫、きっと使えるさ」
「わたくしでも使えたのよ、アンにも使えるわよ」
「そうだろかニャ?」
しかし、練習を始めると二人は火魔法をはじめとして水魔法から電気、風、土と一通りの属性魔法を発現したが俺には全く発現しない。
水よ出ろ! って、焦りながら祈っている時につい自棄になり聖水でもいい出てと願ったら。
ちょっぴり水が手の上に出たように見えたが、聖水だった為手のひらに火傷を負った。
「あじ~!!」
「大丈夫ですか? タカ様」
「にいちゃん痛いのニャ?」
「大丈夫ごめんごめん」
心配をかけた事と魔法が出来ない事も相まって、俺はすっかり落ち込んだ。
聖水はこうして作られるのかな? 大変だね。
聖光程の威力は感じなかったので、労力がかかり過ぎるなと思った。
ケイとアンは、新しく覚えた火魔法の練習を二人で始める事になり。
そして俺はエアガンの練習を一人でする事となった。
水魔法で軽やかに火魔法を防ぎたかったな。
蛇は止めた! スライムを撃とう。
ここは、この階層にてタカ様から最も離れた場所。
ここならば、いかに耳のいいタカ様の耳でも届かないでしょう。
「ここまで離れればもういいでしょう。さて、アンお話があります」
「なんだニャ?」
「先に言っておきますが、わたくしは別に裸を見せたい変態では有りません。なのになぜわたくしがタカ様の前で全裸をさらし、あなたにも強要しようとした理由についてお話いたします」
「そんな理由があるのニャ?」
「あるのです。…………」
スライムを何体か仕留めてふとスマホを見るともう23時だ。
「おーい、帰るぞー」
「「は~い」ニャ」
二人とも楽しそうでよかった。
「やっと、お兄ちゃん帰って来た。アンちゃん私と寝ましょうね」
「はいニャ」
アンを自室に連れて行った。妹は探知でも使えるのか!
帰ったら即、この部屋に来たぞ。
「ケイも女同士で話とか有るだろうから、あっちに行ってもいいよ」
「いえ、わたくしはここで」
「そうか? まあいいか」
「おやすみケイ」
「はいタカ様」
次の日、朝一番から銅路の居た洞窟の様子を見に行こうとしたら。
「まだ警察が居るのでは?」
とケイに諭されてダンジョンに行くことにした。
犯人は現場に戻るって言うのは本当だった!
いや、別に俺が犯人ってわけじゃないけど。
今日は第2層にまで行ってみよう。
蝙蝠どもが居るかもしれないしね。
もし見つければ今度こそ必ず滅してやる!
3人で第1層を殲滅し第2層に行くのにさほど時間はかからなかったが、第2層に入ってすぐアンが熱っぽくなって眠そうになったので早々に切り上げ帰ることにした。
アンは生気吸収を使っている様子は無かった。
レベルアップに生気吸収は関係ないんだな。
「あら、お兄ちゃん早いわね?」
また妹は俺達が帰ってすぐ部屋に顔を出す。
どうやって分かるんだろうか?
「アンがたぶんレベルアップで熱を出したので中止して帰って来たんだ」
「レベルアップってゲームじゃあるまいし! って本当なの?」
妹は懐疑的な目を俺に向ける。
「ああ、アンをお前の部屋に寝かせていいか」
「うんいいよ、アンちゃん立てる?」
「うーん立てるニャ」
アンは相当眠そうだ。
「じゃあアンをよろしくな」
「分かったわ、アンちゃん行きましょ」
「アンしっかり休めよ」
「分かったニャ」
「アン大丈夫かしら?」
ケイが凄く心配そうだ。
「大丈夫さきっと、俺も最初はレベルが上がるたびに寝込んでいたんだ。今はちょっと熱っぽいだけで済んでるけどね」
「そうだったのですね。でレベルって何ですか?」
「ああ、そこからか」
俺はケイにレベルの説明をするのであった。
「ゲームには強くなるたびにその指標として数字で表すレベルが有って、タカ様は数字で分かる訳ではないけれど強くなることを分かり易くレベルが上がる、またはレベルアップと言っているのですね」
「うんそう」
「わたくしにはないのかしら?」
「ケイは今まで戦って来て強くなってるけど、分かりやすいレベルアップって無かったよね」
「そうですわね、わたくしにはないのですね」
ケイは少し残念そうだ。
それから俺は午後に麻生さんに会う準備を始めた。
「怪しいわね!」
お昼時、開口一番妹は言った。
「今までそんな恰好しなかったでしょお兄ちゃん。何するつもりなの?」
「コンビニで一緒にバイトした麻生さんと喫茶店で会うんだよ」
「女の人ね!」
「よくわかるな」
「むうう~」
「変な奴だな、それより食べようぜ」
「うん」
「そう言えば、アンの様子はどんなだ」
「よく寝てるよ」
「そうかありがと」
「むう、何か割に合わない気が」
「わたくしが見られればよかったんですが、すみません」
「ケイ、気にするな」
「ケイちゃんは関係ないわ、ごめんね」
妹には聞えていない筈だが? 俺の反応でケイが何か気にしてると悟り反応した。
ニュー〇イプの様な妹だ。
そう思って妹を探知してみると、ほぼ生気で体は構成されているが神気が少し混ざっていて、魔力もほんの微量だが持っていた。
他の探知した周りの人の中で両親も含めて魔力を探知出来たのは妹だけだ。
体も皆は生気で出来ている。
もしかして俺も元から神気と悪気、魔力を持っていたのだろうか?
ケイが幽霊になれたのは悪気と魔力を持っていた為とかも有りそうだ。
アンと俺がアンデッドにならなかったのもこの辺りに答えがありそうだな。
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