0001.主様の為に
初投稿作品です。つたない所もあるかと思いますが。
頑張りますので、楽しんでいただければ幸いです。
加筆加筆でこれまたかなり長くなってしまった……ごめんなさい
暗い地の底、部屋とも洞窟とも分からないゴツゴツとした岩の天井に足で掴り逆さに俺はぶら下がっている。
あれ? 俺は何故こんな格好を? と思うが自分が何故そう思うのか、それすら分からないほど何も思いだせなかった。
ただ遠い前方で椅子に優雅に腰掛け佇む者が俺の主であり、主の命令を待っている事だけが確信を持てる思いであった。
主を見ていると幸せな気分になり、その威厳ある姿に跪きたかったが、ぶら下がっていては出来ないなとあきらめた。
ふと周りを見ると同じようにぶら下がっている蝙蝠がいて、下には跪いている人狼がいる。
その前には人? いや吸血鬼らしき者たちが並び、最前に主が一人此方を向き豪華そうな椅子に、目を閉じゆったりとくつろぐ様に座っていて、主の後ろには人狼が主を守る様に数人傅いている。
周りは皆蝙蝠なのでもしかして俺も蝙蝠なのか?
自分の体を見回してみると確かに蝙蝠の羽があり自分で動かせる。
しっかりと蝙蝠だ。
自分が何者かわかり少々落ち着き、主の命令を待つことにしたのだった。
主様の命を待っていると、ある人狼が数名の女性を後ろに引き連れて戻ってきた。
「ご主人様、ご所望の若き乙女にございます」
人狼は、主様の前までやってくると、片膝を立てて座り主を見上げる。
後ろの女性たちはうつろな顔で立ち尽くしている。
なかなか、可愛い女性たちだ、主の供物にはとても良い。
主様は、女性たちを舐める様に見回すと。
「動くな」
と女性たちの行動を制限した。
「うむ、魅了を解き下がれ」
「はっ、仰せのままに」
人狼は恭しく頭を下げると、立ち上がり、女性たちの方を見、人狼たちが居並ぶあたりに帰っていった。
それを機に連れてこられた女性たちが騒ぎ始めた。
「いや~」
「きゃー」
「うぇーん」
各自それぞれに泣きわめく。
主の前で失礼な奴らだな。
喜んで血を差し出せばよいのに。
女性たちはひとしきり泣きわめくが、全く体を動かせない。
俺は主の威厳の力に凄いなと平伏する。
「脱げ!」
主様が言うとすすり泣きながらも彼女らは服を脱ぎ裸体をさらす。
そして、少しの間泣くと諦めたのか女性たちも静かになった。
だが顔は恐怖にひきつったままである。
主が立ち上がり一人に近づいて行く。
「あ、こ、こないで」
か細い声が一人の女性から聞こえ、
「クッフフフ、お前に我の力となる栄誉を与えよう」
「いっいやっ、止めて! お願い!」
「そうだ、我を畏れるがいい、もっと畏れあがめよ」
そう言いながら彼女の首筋をなでる。
「ひぃっ! 冷たい! この化け物! 触らないで!」
主は体を舐めるように眺めると。
「ふっふっふ、お前もこれからその化け物になるんだ! ふわっはっはっは!」
主は形のいい胸を揉みしだくと
「ああ、なに? こんな、いや~! なんで気持ちいの? ああ、いや~!」
(危ない、あの娘を助けろ!)
俺の心の奥がなにかつぶやいた気がする。
だが主から流れ込んでくる快感に翻弄され俺には全く気にならない。
それどころか仲間が増える歓喜に体が震える。
そして主との繫がりを強く感じた。
主は首筋を撫でていた手であごを、くいっと持ち上げる。
「あっ、いや」
まだ幼い感の残る可愛い唇を奪い、血を吸い始める。
健康的だった彼女の肌の色はみるみる色あせていき、青白い肌を持つ吸血鬼に変わった。
彼女は表情を失い冷たい目をしていて、口元には長い牙が覗いている。
「あちらにいけ! まだだ、まだ全然魔力がたたらん。なんだあいつは? いくら魔力を注いでも深層まで屈服しきれないぞ! くそがっ!」
(大量に送り込んだ先鋒の人狼軍団がもうもたない。勇者とやらが迫っている。これ以上は無理だな。俺が弱体化し戦闘できなくなってしまう。後回しだな。後があるのならいいのだがな)
主が言うと頭を下げ、吸血鬼たちの元へと何の感慨もなさそうに歩いて行った。
「さあ、次はお前だ!」
「ひいっ!」
主は順々に連れてこられた女性たちを吸血鬼にしていった。その陰惨な光景を何の感慨を持たず見つめている俺がいたのだった。