0020.遭遇
俺達はダンジョンの第二層にとうとう入り込み、ちょくちょく罠にはまりながらも第二層を絶賛探索中だ。
その度に死ぬほど痛い目に遭うのでたまったもんじゃない!
探知出来る範囲内にいる魔物の中で比べると、ゴブリンより強い魔物は強さが全然違い魔力量が俺と同程度以上の魔物になる。
第一層では殲滅しても眠くならないほどで、最強だった大きい熊の何十倍もの魔力量を持つ強さになっていたのにな。
これは一気に強くなり過ぎだろう。
しかも複数で固まってるし!
でもその位でないとこの先強くなれないか。
そういえば今までは2倍とか10倍の魔物と戦って来たんだったな。
とりあえず同等の魔物に向かう。
「うわっ!」
ビビったー。
なんと途中矢が横から飛んでくる罠があり、矢が目の前を横切ったのだった。
ケイが申し訳なさそうに言う。
「罠に関してはわたくしではなにも出来ません。すみません」
「いやいや、謝る事なんてない。出来る事からすればいい。ケイは優秀だから気にするな」
しかし、なんとか罠感知できないものかねえ。
進むのにやたら時間がかかるのも、罠に掛かって痛いのも嫌なんだが。
きっと探知の力が強くなれば分かるようになるはず。
それまでの我慢だ!
魔物の姿が見えて来た! 猿の魔物だ。
そう言えば調子に乗って第1層を狩っていた時2回り位小さい猿が居たなあ、ハイになっていたので問答無用で駆除した気がする。
すでに俺はこのダンジョンでは殺戮者だし、第一層ではリポップしてたし、あいつらはNPCそう思ってガンガン行くか。
2頭で狭い範囲を行ったり来たりとうろちょろしてるので作戦も立てやすい。
「ケイは右の奴を頼む」
「はい」
「テヤー!」
気合と共に猿の魔物に切りかかる。
ズバッ、バシュッ、グサッ
「キキッキーッ」
2度切りつけ最後に無防備になった頭を突くと猿の魔物は断末魔をあげバタッと倒れた。
両断できるほどでは無かったが、それでも危なげなく長剣で切りつければ猿も消滅するみたいだ。
猿は一撃すら俺に当てる事もなかった。
これは弱すぎるな。
こいつ本当に俺と同等の強さなのか?
猿だから素早く動き回られると手強そうだと警戒していたが、なんだ?
見た目の迫力は有るが、動きは鈍いし攻撃力も思うほどはなさそうだ。
再生力が強いわけでもなく、ケイも危なげなく生気を吸収でき消滅させていた。
まあいいか、考えても分からん! 勝てるのだから良しとしよう。
「わたくしは大丈夫ですので、どんどん先に進まれてもいいですよ」
「よしっ、じゃあ、次いくか」
次は俺よりちょっと魔力が強い奴とやろう。
感知できた魔物へ向かっていくと4頭の狼が見える。
こちらからこうも見えると皆戦わずに別の通路に逃げるんじゃね? と思ったが考えてみると暗視がなかったら薄暗いダンジョンの中では、こんなには見えないか。
それに、遠くが以前よりはっきり見える気もするし、視力自体がもう常人のそれではない気もしてきた。
狼はゴブリンらより、大分遠くでこちらに気づき、
「ガウウアウウ、ガウ」
と吠えながらこちらに向かって凄い勢いで走って来る。
「先頭を俺が叩くから、残りを頼む、あとは手の空いた順に倒そう」
俺が先頭の狼に切りつけると他の3頭が回り込んで来ようとする。
が1頭はケイに捕まって生気吸収されているためにこちらに来られない。
その間に俺の間近まで迫っていた他の2頭も
「遅い!」
動きが見え見えなので、俺はすっと奴らの攻撃を避けながら1頭目を2撃3撃と攻撃し消滅させる。
ふむ魔物との戦闘は楽勝だな。
総合的に身体能力がかなり高くなっていたようだ。
残りも軽く倒すと。
「タカ様やりました」
と両手を挙げケイは喜んでいた。
かわいいもんだな。
探知で分かる範囲の魔物はゴブリン、猿、狼の3種のみだったので、手分けをして狩っても大丈夫だな。
「この調子なら手分けをして次々狩るぞ、だが周りの探知は忘れるな!」
「はい、タカ様」
ケイには罠が関係ないのでどんどん狩ってもらい、俺は罠に気を付けつつマッピングも行いながらゆっくり狩っていく。
しばらく狩ると体が熱くなってきてレベルが上がったと感じた。
時間を見ると17時が近かったので、帰る事にし、全周を一応探知してみる。
魔物がほとんどいなかったので避けて通らなかった経路でダンジョンの魔物とは明らかに違う何者かを感知した。
何者だろうかと集中して探知してみると吸血蝙蝠らしき奴ら3人出口に向かって移動しているのが分かった。
きっと日本に転移して帰ってきたおかげで死に残った吸血蝙蝠達だ。
一人いたからにはもっといる可能性もあるとは思っていたが、本当にまだいたとはな。
そうか俺達が出会わなかっただけで奴らもこちらに来ていてダンジョンを見つけていたんだね。
『ケイ、吸血蝙蝠がいる。奴らとはたぶん接触することになるから。接触し戦闘になったら聖光を使う場合も有るので出来るだけ安全な所に移動して待機していてくれ』
『分かりましたタカ様、お気を付けください』
ケイの返事は心なしか震えているようだった。
こちらを何度か振り返りながらケイは退避していく。
俺は奴らの通り道の岩陰で待ちながら探知してみると、皆一様に俺より魔力が高かった。
が、こちらに気づいた様子もなく談笑しながら歩いてくる。
その姿は吸血蝙蝠か疑わしく見えたが、探知ではアンデッドとわかる。
さて、どうしてやろうか?
感じ取れる邪悪さは、銅路とほぼ変わらない。
つまり人を人と思わないくそ野郎等と言う事だ。
せっかく俺と遭遇したんだ、ここは素直に負けて滅びてくれませんかね?
俺が隠れている所からちょっと離れた場所に奴等は立ち止まると、その中の一人がにやにやしながら俺の隠れている方向に向かって声をかけて来た。
「おい、そこの岩陰に隠れている奴、バレバレなんだよ、さっさと出て来いよ! こそこそとみっともない、バレてることが分からないなんて馬鹿みたいだぜ。ヒャァッハッハッハー」
無駄に甲高い若い男の声がダンジョン内に大きく響く。
どうやら、俺は吸血蝙蝠達に見つかってしまったようだ。
だがケイの事には気づかれていないみたいなのでひとまずほっとする。
次回更新は18時となります。
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