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0017.まさかの出来事

 朝、目が覚めるとまだ体が熱っぽい。

 まだ、復調してないみたいだ。

 周りを見ると、ケイが傍らに佇んで居るのを見つけて何故かほっとした。


『ケイ、おはよう』

「おはようございます。タカ様。主人様が、タカ様に会いたがっておられます。ご同行ください」


 ! ?


『何を言ってるんだ、ケイ?』

「はい、ですから主人様の命令で、タカ様を案内いたします」


 まさか? 俺はケイの様子を急いで探知すると。

 眷属の繫がりが切れ、魅了の状態になっていた。


 くそっ! やられた! たぶん奴らだ。


 やはり居たか! 吸血蝙蝠達の生き残りが。

 いや死に残りが。

 警戒はしていたつもりだが、分からなかった。

 異世界の洞窟にも帰ってきた様子など無かったのに。

 今の俺で果たして勝てるのだろうか?

 せめて復調してから行きたいな。


「早くしてください」


 ケイは精気吸収を発動した手を伸ばしてくる。

 あれはやばい。

 が少しでも時間稼ぎがしたくて。


「ちょっと待て、着替えて朝食を食べたら行く」

「分かりました」


 表情を全く変えずにケイはうなずいた。

 

 ノロノロと準備したが、さほど時間はかからず準備を終えケイに付いていく。

 ケイは町はずれの山の中に有る洞窟へ入っていった。

 結構歩いたな。


「こちらです」


 浅い洞窟の最奥に裸の男性1名と女性多数が! なんで男は裸なんだ? 

 いやなもの見せるなよ! 目のやり場に困るだろ!


 女性たちの中に知った顔が居る。

 うん? あれは麻生さん! なっ何でまたこんな所に? 

 偶然なのか何なのか知らないが。

 やってくれるな、こいつ、殺意が湧くぜ!


 探知すると、女性は皆魅了状態で奴は死亡状態だった。

 つまりアンデッド吸血蝙蝠だなたぶん。

 魔力は今の俺よりかなり多い。

 まあ今は体が変化処理中なので復調するまでは魔力も少なくなっている。

 なので参考程度だが、現時点では全く勝てる気がしない。


「ご苦労、お前は外で警備してろ」

「はい、主人様」


「さて、同胞よ、よく来たな」


 奴はそう言うとフシューと蝙蝠になり。

 キーンと耳鳴りがしたと同時に右手がいきなり切り落とされた。


「ぐうっ!」


 これは超音波カッターか? くそっ! 変化処理中なので治りが異常に遅い。

 だが治癒は始まっているので痛みが一瞬なのは助かる。

 奴は人の姿に戻り言った。


「はっはっは、弱っちい奴だな。だが、まあいい。何かの役には立つだろう。念入りに魅了して、忠実な僕の家来にしてやるぜ」


 奴の笑いが木霊する洞窟の隅には、死体がいくつか転がっているのが探知で分かる。

 外道め。

 だが今のままでは勝ち目がない。

 時間を稼がないと! と思い何でもいいから質問をぶつけてみる。


「あの勇者たちの猛攻からどうやって生き延びたんだ?」

「お前もあそこにいたからは知っているだろう」

「いや俺は洞窟の奥にいて戦ってないんだ」


「ふむ、どうせ僕の配下になるのだから早いか遅いだけだが。まあいいさ今教えてやろう。僕たちはあの吸血鬼の命令で勇者と聖巫女を入り口付近で迎え撃ったんだ。僕たちは200以上居たので勝てると思いどんどん向かっていったのさ。だがこちらが切り飛ばされ光で焼かれるだけで奴らには掠り傷一つ負わせられなかった。しかし悲しい事に操られていた僕らはそれでも逃げる事は叶わずに、向かって行く事を止められなかった」


 奴は、悲しそうに目をつむり、斜め上を向くと話を進めた。


「だが、切り飛ばされても、即死せず、死んだ味方の下敷きになっていた事で。見つからず何とか止めを免れ、死ななかった数少ない僕たちは、あの吸血鬼が死んだとき、地球に帰る事を切に願ったのだ。すると僕は自分の部屋に帰っていたと言う訳だ」


 そして、ニヤーと悪い顔になり。


「部屋に帰れてよかったぜ。食料も家に居たしな。外に帰った奴はすぐに灰になった」


 キッと俺を睨み。


「僕たちは日の下に出られないはずだ! どうやって日差しの中ここまで来た?」


 こいつ家族も殺したのか!


「教えてやらん!」

「まあいい、後でゆっくり聞くさ」

「なぜ、吸血鬼にしないで殺す?」

「ふんっ、それくらいも知らないのか? 僕らには、あの吸血鬼の様な人をアンデッドにする力などないよ」

「殺さなくてもいいだろう」

「沢山いて勝手に増える家畜などいくら死んでも構わないだろう?」


 もうフレッドの最後並みに壊れてやがる。

 フレッドでも、半年位は動物の血で頑張っていたのに。

 もはや手遅れか。


「クックック、お前は誰も殺してないのか? 木戸貴志」


 くっどこで名前をってケイからか。


「俺は血など吸っていないし、ましてや殺してなどいない! お前の名は?」

「ふん僕かい? まあいい教えてやろう銅路登也だ。今後、お前のご主人様だよ」


 俺に魅了の力が飛んできた。

 しかし、俺には効かない。

 俺には耐性があるのか、魔力の差がもっと大きくないと効かないのか、もしくは両方か。

 たぶん両方だな。


「ふん、生意気に魅了をレジストするか! だがいつまで耐えれるかな。くっくっく」


 すぐには効かないが、確かに少しずつ侵食されてきている感がある。


「くそっ!」

「ふふふ」


 負けてたまるか、俺がここで負ければ、まだ生きている麻生さん達も殺されてしまう。

 皆を助けるためには勝つんだ!

 気合を入れると少し押され感が弱くなる。


 男同士のにらみ合いが続き、誰得なのかな? とどうでもいい事が頭をよぎっていると、パンッと中間で弾ける音がした。

 やっと、俺の体の変化処理が終わり魔力が増えたのだ。


 増えても魔力は奴より少ないが耐性も有り何とか拮抗したようだ。

 シューっと切り落とされた腕が再生されてくる。


「くそ配下に出来ないなら、今ここで殺す!」


 奴は俺に飛び掛りながら


「火よ」


 火魔法が飛んできて。


「くっ」


 俺はよけようとして飛び掛ってきた銅路は避けたが、魔法の方はよけきれず足に当たり、魔法の当たった足は炭化する。


「ぐううっ!」


 炭化した足もすぐ再生が始まるが。


「ふははははは~。それなりに素早いな。だがこれは避けれるかな?」


 奴は高らかに笑い次の魔法用の魔力が複数個所に集中し始める。


 これは、よけきれない。

 これを食らえば負ける! 素早くそう判断し俺は一か八かの捨て身の攻撃にでた。


「やられてたまるか、聖光」


 最低出力で一瞬聖光を光らせた。

 魔力を練らないので奴の魔法より先に発現する。

 奴は。


「うぎゃー目が! 目が~!!」


 叫び。

 俺も叫ぶ。


「うが~~~! 痛い! 痛い!」


 奴は、着地失敗して体を打ち付けた上に体のほとんどが消失し、残った体も全身火傷状態で骨まで焼け見えるほどダメージを受けてのた打ち回っている。


 なぜかこんな状況でも自動で発現している探知で解る。


 俺もどうやら片目が無いようで残った目も見えづらい。

 まだ動けているのが不思議な状態だ。


 再生が少しずつ始まり落ち着いてくると俺の状況も詳細が分かってきた。


 聖光を発した右手先の方から円を描くように消失していて、顔の半分もが無く、心臓までも一部だが無くなっているようだ。

 意識があるのが不思議で、流石にこれは俺も助からないかもなと諦めの念が浮かぶ。


 俺の残った体も体中火傷で満身創痍だが奴より多少耐性が高かったらしく足の辺りは割と無事だ。

 慣れのお蔭で、痛みにのた打ち回らずに済んだ。

 痛いのよ俺もかなり。

 努力の賜物だな。


 だがそう何度も出来ない。

 次は俺も消失するだろう。


 多少、可哀想だがなんとかして奴に止めを刺す方法はないかと考えていると。


 奴は


「いだい、いだい」


 と言いながら段々這って逃げていく。


 ああなると惨めだな、止めを刺しづらい。

 しかし、奴を放っておいてはじきに再生して、また人を襲うので被害者が増えてしまう。

 ここは心を鬼にしてだが、さてどうしよう?


 おっと閃いた聖光を飛ばしてしまえばいいのでは。

 上から下に残った左手を振って投げるように意識して聖光を放つと、半月の形で聖光が飛び、スパッンと奴を真っ二つに切り飛ばした。


 “聖光漸”そう呼ぼう。

 自分にあまりダメージが来ない便利な聖属性魔法だ。

 聖光を放てば無傷とはいかないようで左手の指先が無くなっている。


「ぎゅわうあ~」


 奴は叫び、手足を変な方向にバタバタと壊れた自動人形みたいに振り回し、切り口からじわじわと灰となっていく。


びぃびぁだうゔぁ(いやだぁぁ)~~」


 断末魔を発し、この世から消滅していった。

明日は5話更新です。初めの更新は12時になります、よろしくお願いいたします。

楽しんでいただければ幸いです。

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