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０１７９．魔法少女

　俺はアンに任せっきりの３人の様子を見るついでに護身用ブレスレットを渡そうとダンジョン第一層に足を運ぶ。

　そこにはレベリングを監督するアン、そしてウズラ、あすかと、ニノが頑張っている姿が見えた。

「おにいたーん！」

　ウズラが少し離れたところから走ってくる。

「そーれ、肩車だー」

　俺はもうそんなに小さいわけでは無いウズラを肩車する。

　力は常人のそれではないので、やろうと思えば大人でも楽勝だ。

　いや、やらないけどね。

「うわーい」

　と肩の上ではしゃぐウズラ

「あのねー、骨さんをいっぱい倒したんだー」

「おおっ、それはすごいな。にいたんにも倒せるかな？」

「え～？　わかんない～」

　はっはっは、元気いいな。

「アン、皆頑張ってるな」

「にいちゃん、あすかが凄いニャ！」

　えっ、凄いってなんだ？　

「見てみないと分からないニャ」

　そう言ってあすかの方を見た。

「おっ、そんな風に言われると流石のアタイも照れるなあ」

　あすかは頭を掻きながら言った。

「まず、こうするニャ」

　アンが一番近いスケルトンに飛び掛り手足を砕いて弱体化し目の穴を持って引きずってくる。スケルトンはカタカタと歯を咬み鳴らすが抵抗には全くならない。

　なるほど、ああ持てば咬まれる心配もないのか。

　かなりぞんざいで少し引くが。

「まだ健常なスケルトンに効くほど威力ないニャ」

　アンはもっているどくろをパキャーンと握りつぶす。

　だがスケルトンはその位では消えない。

　うんなるほど？　よく分からん。

「あすか、やって見せるニャ」

「よし分かった。ふっふっふ。ヒャランラー！」

　とあすかが軽く人差し指を振った。

　すると、あすかの指先から小さくほのかな光の粒の様な物がボワーっとこぼれ出てスケルトンの核のあたりに飛んでいく。

　そして、“ボコンッ”と音を立てスケルトンの体から魔石が飛び出し、スケルトンは消えていった。

　こっこれは、いわゆるいにしえの魔法少女の魔法！　

　いったいなぜこんな現象が起きているのかさっぱり分からない。

　思い通りの奇跡を魔力で無理やり起こしていると言われても信じてしまいそうだ。

「それ、こんな事も出来るぞ！　ヒャランラ～」

「ひゃっ！　なっ何をするだ！」

　ニノの服がめくれ上がり形のいい胸がプルルンとあらわになった。

「ブっ！」

　俺は不意打ちの露出にびっくりし耐えきれず淫欲が噴き出した。

　ドキドキする。

　目が離せない。

「あすか！　やめるだ！」

　ニノが服を押さえ胸を隠そうと頑張るが持ち上がる服を抑えようとあたふたと頑張っているが抑えきれない。

「ひゃっはっは」

　あすかは笑い転げながらも魔法を止めない。

「あすか！　もう止めるニャ」

　アンが軽くはたいて止めるまであすかは止めなかった。

「ご主人様に頼まれて脱ぐのはいいだが。無理やりは止めてほしいだ！」

「てへへ～」

　だがあすかに反省の色は見えない。

　俺も止める事が出来ずじっと眺めていてしまった。

　むぐぐ俺の淫欲め！　

　その時俺は、はっと思い付き探索ベースを最初に掃除した時に使った竹ぼうきを転移にて取り寄せる。

「あすか、もしかしてこれを空飛ぶ箒に出来るか？」

　俺はリアル魔法少女の顕現にドキドキしながら言った。

「ふっふっふ、任せたまへ。ヒャランラー！」

　また、淡い光の粒が竹ぼうきに絡みついて行く。

　グ、グググ、グッ箒が動き始める。か！　と思ったが、あすかがぐったり倒れ箒はカタンと地面に落ちた。

「ウグー、もうだめ目が回る」

　魔力を使い切ってしまったようだ。

　どうやら俺はつい楽しくて無茶を言ってしまったようだった。

　しかし、魔力さえあれば出来るのか？　

　凄いな確かに。

「おい大丈夫か？」

「アタイは～このくらいへいきだ～～」

　とくらくらしながら言う。

「ベースへ連れて帰ろう」

「皆も休憩に帰るニャ」

「おらが、あすかさんを連れて歩くだ」

「ニノ、よろしく」

　俺はウズラを肩車したままベースへと歩みを進めていると。

「あのね、おにいたん。ぼくね、体がむずむずするの。ぼく、もう一度レベルアップしたら育つのかも？」

　そうか、もう大きくなってしまうのか。

　次に目覚める時にはプチマッチョになってしまっているかもな。

　まあ、一緒にお風呂に入るときに見るが。

　まだ、筋肉もちん〇んもプチなままなんだが少々は大きくなるのかな？　

「そうか、大きくなりたいか？」

「うん、大きくなって強くなるんだ。それでみんなと一緒にハーレムはいる～」

「ははははっ」

　どうしよう。

　周りの影響を受けるとこうなるよね。

「いや、男の子は違うんだ！　ウズラ」

「え～。ぼくハーレムはいりたい～」

「ごめん、ごめんよ～」

　ウズラはがっくりと俺の頭にもたれ、すっかり落ち込んだのだった。

　すまんウズラ。

　まさかそんなふうに思っていたなんて。

　俺もウズラの夢を壊したみたいで辛かった。

「でも、俺とウズラは兄弟だ。だから心配するな」

「うん、おにいたん。でもぼく女の子がよかったな～」

　今の見た目は確かに女の子みたいに可愛い。

　だが何度か成長していくうちにマッチョになっていくのだろう。

　想像したく無いなあ。

「おにいたんすき～」

「おう、俺も好きだ～」

　ウズラは俺の頭にしっかと抱き付いた。

　ベースに着くとウズラを肩車からおろしあすかをソファーに座らせる。

「皆に護身用ブレスレットをあげたいんだ。これはね……」

　俺は説明を繰り返す。

「先ずはウズラから」

　今ある腕輪にカッコいい紋章のあるブレスレットのデザインを追加する。

「ふお～、かっこいい」

　先ほどまで落ち込んでいたのだが、テンションが上がりすっかり忘れたように走り回り始めた。

「アンにもこれな」

「にいちゃん、うれしいニャ」

「ニノにも。はい」

　二人の手に護身用ブレスレットが現れる。

「おらこっただいいもの貰えねえだ。おら奴隷なんだべ」

「いや着けていろ。これは命令だ！」

「分かっただ」

　そしてこちらを見ながらなんだかワクワクしているあすかの手にも作ってやった。

「これで、第二層も怖くないな！　ぐふふ」

「いや第二層とかで戦うと死ぬからな。たとえ勝ってもレベルアップに耐えきれず死ぬからな。絶対に行くんじゃないぞ。これは振りなんかじゃなく、本当だからな！」

「そんなに必死にならなくても行かねーよ。ここの狼にも勝てないもんなまだ」

　とあすかは軽やかに笑ったが、あやしい。

「死者が出るとか勘弁してくれよな。ほんとにもう」

　そうはいっても行くんじゃないかと俺は気が気でもなかった。

　アンや皆に目を離さないようによく言っておかないとだめだこれは、と俺は強く思う。

花粉症で頭痛い……