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0174.母クジラ

 ズオー! 


 巨大な影が裂け目の上を覆う。

 裂け目の幅より躰が大きいため中には入ってこれないようだ。


「グオバー! オオオオオ~~~」


 怒りに満ちた鳴き声が聞こえ続ける。

 そして、突然大きな魔力を感じたかと思うと俺達は周りの水ごと持ち上げられ始めた。


「うおお! なっなんだ?」


 その急激な流れに逆らいながら治療を続ける。


 俺達が叫んでも母クジラの鳴き声に阻まれて全く耳には聞こえてこない。

 母クジラがどれだけの音量で叫んでいるか想像もつかない。

 子クジラ達が暴れていては治療もままならない。


 どうするか? 

 と考えていたら大きな魔力の流れを感じたとたん、周りの水の勢いが遥かに増し俺達は抵抗もむなしく裂け目の上まで持ち上げられていった。


 そして気づくと、母クジラは大きな口を開け俺達を食べようと待ち構えているではないか。


『キセラ、脱出だ!』

『任せておケ!』


 俺がキセラの背中にしがみつくと、キセラはギュンッと加速し移動する水の檻から脱出した。

 バッと広がった視界、そこには異様に強そうなクジラ型生物の姿の全貌があった。


「シャァ~!」


 母クジラは、またも奇声を上げる。

 しかし、子供たちは念話を飛ばしていたので理性が無い訳では無いはずだ。


『子供を襲ったのは俺じゃない! 大量な魔物たちだ! 誤解だからまず落ち着け!』


 と念話を飛ばしてみる。


「キェエエ~!」


 しかし、どうやら完全に自分を見失っているらしく念話を無視してこちらに突進してくる。

 これは幾らなんでも正気を失いすぎじゃないか? 


「くっ、早い!」


 流石海に特化した種族だ! 

 この動きにくい中、ちょっと考え事をしているうちのあっという間に接近してきた。


 仕方ない、まずはぶっ飛ばして頭が冷えるか試してみよう。

 俺はキセラから前に飛び出し、顎に一発アッパーを繰り出した。


 普通に繰り出すと貫いてしまうので、物理障壁を広く拳の前に張って広範囲に威力を散らしたパンチを繰り出す。

 何故そうするかと言うと、実力が違いすぎるので手加減しないと殺してしまうからだ。


「ぐふぇっ!」


 母クジラはその巨体で縦回転しひっくり返った。


 おお! さすがにすごい迫力だな。


『俺はお前の子供を傷つけてはいない。それよりも早く治療しないと死んでしまうぞ!』


 だがひっくり返っている母クジラは体を痙攣させながらも、その目はまだ狂気を宿し睨みつけている。

 これは、子供の為に戦っている訳では無いのか? 


『タカ、これは状態異常かモ?』


 なるほど、キセラに言われて確かにそんな感じだと気づいた。

 情けない限りだ。


『キセラ、ありがとう』


 俺は探知で母クジラを詳細に調べる。


 すると、意思衰弱と狂化の呪いが掛けられていた。

 かなりやばい呪いだ! 

 いったい何に掛けられたのか分からないが、子供たちは豹変した母クジラからも逃げていた可能性が高いのかな? 


『キセラ、俺は母クジラの呪いを解く。キセラは暴れないように押さえておいてくれ』

『了解だ。タカ』


 キセラは母クジラのお腹に乗り、全体的に重力魔法で荷重しうまい事動きを阻害した。


『よし、いいぞキセラ』


 俺は母クジラに手を当て呪いを解呪していく。


『今助けるから! 静かにしていてくれっ!』


 しかし、話の通じない母クジラは。


「グギャギャギャガ~!」


 と悔し気に鳴くだけだった。


 そして、呪いの構造を調べていく。

 すると、その呪いは3次元で書かれた魔法陣の様な物がいくつもきめ細かく絡み合い出来ていた。


 呪いの解除は難しい。

 なぜかと言うと、間違った手順で解除を試みると暴発するらしいのだ。

 しかもどんなふうに暴発するか予想もできない。

 それはとても危険なパズルなのだ。


 俺が前に掛かっていた呪いもとんでもなく複雑だったと聞く。

 それを思うとマリーさんには足を向けて寝られないのな。


 しかし、これは難しい! 

 少しずつ魔法陣の形から意味を割り出し方式を調べ、隠れている陣も有るので慎重に形をめくっていく。


 水の中なのにたらりと汗が流れる様だ。

 一つずつの呪式の並びを丹念に評価し意味付けていく。


 どのくらい時間がたったのだろうか? 

 やっと、呪法の基部と思われる結び目を発見した。

 この結び目をほどけば解呪がやっと始まるはずなのだ。


 もし間違っていたら? 

 ほどけないどころか強固に成ったり、変質したり、暴発したりするかもしれない。


 落ち着け俺! 頑張って解析した俺を信じるんだ。

 大丈夫だ! 

 だからここをほどくんだ。

 何度も間違いが無いか確認したじゃないか。

 俺は、覚悟を決めその結び目をほどき始めた。


「キシャーっ! グエエーー!」


 母クジラが奇声を上げ苦しみ始める。

 むっ、もしかして失敗か? 


『オオッ、凄く暴れ始めしたゾ』

『もしかして失敗したのかもしれない、再度確認する。すまないがそのまま押さえておいてくれ』

『それは大丈夫ダ。問題なイ。タカ、焦らずにゆっくりとで構いまわなイ』

『ありがとう』


 再度、呪術陣の解析を始める。

 それに並行して魂の具合も探知でモニターしてみた。


 すると、”おおおおお、わ、れ、……、ぬおお、ど、う、な、って、おおおおおお、ぼおおおおううう”む、なんだか回復してきているのか?

 もしかして? 


 呪術陣の解析結果も別に破綻はしていなさそうだったので解呪を続けることにした。

 呪いは魔法とはまた一風違ったつくりでは有るが、魔力によって出来ているには違いない。


 俺は今回の呪術陣の解析によって、魔力操作技術が格段に上昇していっている事を自覚し始めていた。

ふう。やっと書けたよ。

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