0172.海の底
『よし、キセラ行ける所まで潜ろう』
『了解でス』
ドボォーーン!
大きなしぶきをあげてキセラに乗ったまま海に飛び込んでいた。
そして、ある程度まで深く潜ったら魔力を半分くらい開放し、反応する個体はいないか探知しながら進む。
もちろん、探知で掛かるある程度以上の魔力を持つ魔物の姿も逐一判別していく。
リバイアサンはきっとタコやサメではないと思うんだが、分からないよな?
どうしても分からないなら、最も大きい魔力を持つ魔獣の胃でも持って行って作れるか確認してみるのもいいかもしれない。
魔物だと胃が残らないんだよね、消えてしまうから。
と言う訳で魔物は探知出来た中から外し探していく。
そうだ、巨大な生物も探知しよう!
魔獣とは限らない。
ドラゴンも魔獣では無かったし。
海の中を進んでいく感覚は宇宙とはまったく違ってまた別次元だった。
宇宙は圧力の無い世界。
重力コントロールで細かい動作も結構計算次第で自由に出来たが、水の中は圧力と流れで思うようには動けない。
そして、最深部に到達したが結界と装備のお蔭か圧力で動けなくなると言う事もなかった。
『キセラ、このまま前進だ』
『ハイ、タカ。ここらは割と動きづらいですナ』
そうは言うが、キセラも全然平気そうである。
暗視のお蔭で周りの様子がなんとか分かり、遠視の能力を全開に使ってやっと普段の見え方が出来る見えにくさ。
普通の視力に戻すと暗視が有っても1m前も見えない、水が圧縮され恐ろしく固く不透明になり冷たくてとても居づらい世界だ。
実は周りは氷なんじゃないだろうか?
いや、どけた後にはゆっくりと流れ込んでくるので、異世界のせいかどうかわからんが氷ではないみたいだ。
物理障壁で水を押しのけながらゆっくりと進んでいく。
こんなに深く潜らなくって良かったんじゃないかと、太陽系の外れまで行った俺でも思った。
結界自体はまだ余裕ありそうだけど。
このスピードじゃ埒が明かないので結界で水を切り裂き、キセラの泳ぐ速度をもっと早くする。
途中居て襲い掛かって来る邪魔なタコやイカの魔獣を焼失の炎で灰にしながら進む。
奴らの平均的な強さは、ダンジョンに沢山いた方の炎の鳥の半分よりちょっと少ない位。
だが魔獣ばかりなので取得魔力はさほど多くはない。
奴らもこの圧力の中ゆっくりと俺達を狙って移動できている。
普通に考えるととんでもない化け物どもだ。
そして、少々遠いがデカい魔獣でない生物が、息をひそめるように深いクレパスの様な割れ目の奥に複数頭いる事が分かる。
まるで無機物かの様にほとんど魔力を感じないが、こんな所魔力なしじゃ生きていけまい。
つまり、魔力を隠しじっと隠れているのだ。
なので、発見がなかなかできなかったようだ。
えっと? 形は巨大なクジラっぽいな。
クレパスまでの間に超巨大なサメの魔獣も多数居たのでとりあえず倒し、保険に胃袋をゲットしておこう。
それ、焼失の炎だ! 頭を焼かれろ。
ぼうっとと蒼い火に焼かれ頭が無くなっても、バタバタと体は動いている。
生命力が高い奴等だな。
回復する場合もあるかと思いヒレも全部焼いてやる。
こんな所で胃袋を取るのも面倒だ。
心臓を焼失させてやる。
心臓を無くしてやると流石に動かなくなったので、一番魔力が大きいサメをこういう時の為に洞窟に作った巨大な獲物用の倉庫に転送しておく。
『ケイ。すまんが、一番深い場所に作った巨獣用倉庫にデカい魔獣のサメの体を送っておいたので、アンデッドになったり再生したりしないか監視を頼む』
『はい、了解いたしました。タカ様、そちらはどうですか?』
『今、リヴァイアサンを探して、海の底を探索中だ』
『えっと、リヴァイアサン? 装備を作るうえで何故必要かはよく分かりませんが頑張ってください』
『ありがとう』
さて、巨大生物らしき物がいる裂け目の上には結構な数の魔獣がいる。
いや、魔物の反応の方がはるかに多いな。
よく見ると1万に迫る位、狭い範囲に魔物が密集してやがる。
一体一体はさっきのサメより少し弱い程度だが、あんなにいると迫力が違う。
そして悪意の魔力が溢れまくっていて気持ち悪くなってきそうだ。
これ全部倒せば魔力が美味しいかな?
奴らもこちらに気づいたみたいで、一部の奴らがこちらに移動し始める。
しかし、ここは、超重圧の掛かる深海、向きを変えるだけでも奴らはきついみたいだ。
なるほど、奴等はこれ以上は潜れないんだな。
俺は奴等がばらける前に殲滅することに決めた。
ばらけられると大変なのは宇宙ケイ素生物でもうこりごりだ。
だがここは水の中、旋雷は自分にも食らいそうだから、俺は射程に入り次第聖炎波で一掃することに決めた。
「聖炎波!」
聖炎波で奴らをボールのように囲み内側に向けて発動した。
すると、聖炎波の熱で圧縮されていた水が膨らみ固い波が俺に押し寄せてきて、俺達は吹き飛ばされた。
せっかく近づいていたのに、また結構な距離離れてしまった。
ダメージを俺達が負っていないのは高い魔力のおかげだ。
「しまった。下に居た生き物は巻き込まれたんじゃあ」
と慌てて探知すると。
聖炎波の爆心は裂け目の上から少しだけずれていたため、裂け目の底には影響が無かったようだ。
『ふう、危なかった。下に潜んでいる生物まで殺してしまうところだった』
すると、キセラがやれやれと言った感じで。
『タカはも少し考えてかラ、行動した方がいいナ。無鉄砲が過ぎる事があるとガウがぼやいていたゾ』
「むう」
ガウ……心配かけてすまない。
だが、キセラお前には言われたくないぞ。
畜生~、どうせ俺は考えなしだよ~。
しかし、治さないとそのうち酷い事故の様な物を起こしそうだ。
事はもっと慎重に、慎重に。
お読みいただきありがとう。
なかなか筆が進まなくて投稿を増やせません。
ですがこれに懲りず、またのお読みをお待ちしています。