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0168.あすか

 異世界の洞窟奥に作った居間は広い! 


 周りに誰も住んでいないでかい山の中なので遠慮なく調子に乗ってどこまで大きく出来るか試した感が有る。


 魔法による純度100%の強化金属を使い、ボルトなどは一切使わず一体化成型したハニカム構造の外壁がドーム状の形で支えている。

 その強度は現代トンネルの比ではなく丈夫なので安全面でも心配はない。


 美香やインテリアに一家言あるL.T会のメンバーたちのデザインによりでかいホテルの端正なロビーを思わせる感じに近くて、それよりも実用性が重視されソファーや机が多い感じだ。


 れーちゃんやむーちゃんの要請で幾らかの仕事机も置いてあり、彼女らはよくここで事務仕事や研究を行っている。


 地球の小山のてっぺんに魔法で見えなくしたアンテナなどを立て、魔石を利用した発電機も備えているので家電やPCも使い放題である。


 ネットや電源などの接続は電設関係に勤務しているL.T会メンバーたちの設計施工で問題なくできているので一人静かにとはいかないが中々の快適さを実現している。


 今日は土曜日だ、いつもよりたくさんの人数がいるかもしれない。


「おいっ! ここはどこなんだ? 教えろ! あの家の中じゃないよな? それくらいアタイにも分かるぞ」


 窓もない廊下に案内されて、あすかは不安さを隠せなくなったようだ。


「あすかも俺達が普通の人間じゃないと知っているだろ」

「それは、たぶんそうだと思ってはいるけど。何なんだ! お前は?」

「前に言った通り攫われたが吸血鬼にならずに済んだ者だ。それから色々あって強くなってはいるけどな」

「そんな事でここの説明がつくかっ! もっとちゃんと教えろ?」


 かんかんになって怒鳴ってくるよ。


「俺達が攫われた先は、そう、吸血鬼がいたところは異世界だったんだ。まるでラノベの様な」

「アタイはラノベなんか読まないから知らん。分かるように説明しろ!」


 え~それは面倒だな。


「異世界ってわかるか?」

「それなら、まあなんとなく」

「……と言う訳だ」


 俺の説明が終わると、あすかの目がキラキラと輝き。


「魔法だって言うのか? ここを作ったのも、突然養豚場へ現れたのも」


 そのうっとりと憧れるような表情に、もしかして失敗したかもと俺には冷や汗が流れた。


「魔法使ってみたいぞー! ヒャランラーってか。くっくっく」


 なんだ? ヒャランラーって。


「まっ、そう言う事だ」


 俺達は異界に作った居間に入っていく。


「おお~、木戸君だ~! おはよー」

「本当だタカだ~おは~」


「タカが見たことない娘連れてるぞ」

「誰っ誰っ? 新たな、ハーレムメンバー?」


「木戸くーん、会いたかったよ~。おはよう」

「また一緒にデートしてね~」

「タカ~愛してる~♡」


 皆、思い思いに声を掛けてくる。

 だが彼女達はあすかが居るのでそこまで露骨には絡んでこない。


 いつもなら抱き着いてきたりして俺の中の淫欲が活発になったりするのだか。

 そのさい記憶があいまいになったりするのだがそれはナゼなんだろう? 


 あすかは目を丸くして周りをキョロキョロしながら俺の後を付いてくるのだった。

 くっくっく、あすかめ驚いているな。

 計画道理! 


 皆から少し離れた空いてるボックス席を見つけてそこに向かう。


「まっ、座れよ」

「あっ、ああ、分かった!」


 あすかが座ると俺は対面に座った。


「お茶をどうぞ」


 ケイがお茶をすっと机に並べてくれ、すぐ幽体に戻り通常では見えない存在になると俺の後ろに待機した。


「凄いな、おまえ! ここにいる皆は、もしかして全員ハーレムメンバーか?」

「そうだが何か? むふんっ」


 俺は出来るだけ下衆な顔で応える。


「うっわ~、ないわ~」


 うんうん、そうだろ。


「でも~、そこにシビれる! あこがれる!」


 えっ、なんだって~!


「じゃあ、今更アタイ一人くらい増えても問題ないね! アタイもそこに追加と言う事でよろ~」


 えっ、いったい何でこうなった? 


「あすかさん。あなた、本気でハーレムに入りたいですか?」

「おう、任せとけ! それで恩が返せるならたやすいものだぜ」


 ケイが後ろに現れ厳しい顔で問いただすと、あすかはケイにメンチを切った。

 おおっ幽霊然として気迫を込めた透けて見えるケイにひるまないとは! 大したものだ。

 途中からは、あすかに絞った畏怖の力が少々では有るが注がれている。


 畏怖の力とはあれだ、俺がウズラを売ったバスラに浴びせた力の事だ。

 バスラは急にビビッてすべてを話したっけ。

 これに動じないあすかの精神はとても強そうに感じた。


 んっ、あすかの足はぶるぶると小鹿の様に震えている。

 なんだ、やせ我慢してるだけか。


 まあ、普通やせ我慢も出来ない筈なんだけど。

 そして、ケイはあすかを詳細に探知している。


 その探知はあすかの本人が思い出せないほどの細かい小さい頃の思い出から性癖まで赤裸々に露見するほどだ。

 隠し事の一つも出来ないであろう。

 俺はそんな探知は出来るだけしないように心掛けているが、ケイの前にはプライバシー尊重などあまりない。


 ケイは戦前戦中の全体主義な教育を受けた人で、その後、空襲で亡くなり防空壕にずっと一人幽霊として世をはかなんでいた。

 なので生き死に疎く個より集団の規律が最も大切な人なのだ。


 まあケイの場合はその集団の上に俺が君臨していそうだが。

 ケイは俺以外の人の死をただの状態変化ぐらいに思っているので、邪魔者を殺すことに躊躇がない。

 そう俺以外には本当に怖い存在なのだ。


「いいでしょう、あすかさん合格です。わたくしは幽霊のケイ。タカ様の一番眷属です。ハーレムに入るには色々な決まりごとが有ります。説明するのでこちらへいらして下さい」

「へい、へい、決まり事ね。いいでしょ伺いましょう」


 あすかはそう言って、ケイに付いて行ってしまった。

 どうもハーレムメンバーには俺にあまり知られたくない決まりがいくつかあるようである。

 俺が知らない方がいい決まりだと思うので俺も調べたりしない。


 俺も上辺ではめんどくさそうな女と思っていても、深層ではきっと美人なあすかを欲しているんだろう。

 なんと貪欲な事か。

 俺には自重と言う言葉など無いのかもしれない。


「はあ~っ」


 そんな所もケイには丸見えなのだろう。

 だからケイは俺に聞いたりしないのだ。


 ううっ、しかし男が、いや人が深層意識のままに行動したらそりゃあやばい事になる。

 理性なり常識なりで無い事にしている事なのだから出来たらそっとしておいてほしかった。


 あすかはケイに連れられ、れーちゃんとみーちゃんの所へ行った。

 おっとここに居ると聞えてしまうかな。

 俺は早々に居間を後にしてダンジョンにいるキセラの元へ向かった。


「オウ、タカおはよウ。昨晩は失礼したナ」

「おはよう、キセラ」

「装備を探しに行くのだろウ。案内するゾ」


「こっちはポキ一人で大丈夫ビャ。行って来るといいビャ」

「ケイは少しの間来ないかも」「知ってるビャ。大丈夫ビャ」

「わかった。キセラ借りていくな」

「お気をつけてビャ。あっちは物騒ビャ」


 そうだな俺を狙っている奴が居るかも知れないんだったな。

 うん、しっかり気を付けよう。

お読みいただきありがとうございました。

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