0167.ブラックハーレム
明けましておめでとうございます。
本年度もよろしくね!
ダンジョンでL.T会のレベリングのサポートをやっていると朝の4時が近くなって来た。
L.T会は12人ダンジョンに来ていて戦うのは3人×2チーム。
6人とも眠くなるまでレベル上げを行い交代する。
眠くなったら寝てしまう前にすぐ休み交代しながらガンガンやるのが凄くて効率良さそうにやっている気がする。
それを4時間やって次の12人と交代する。
昼間に8時間休みがあるだけだ。
もちろん皆暇ではないので、それ以外の時間は学業に仕事に精を出している。
一時はその8時間の休憩すらなかったが、流石に皆それ程仕事や学校を休めなくなったようだ。
だが、こんなに過密な訓練ってやり過ぎじゃなかろうか?
「皆、頑張るなあ! 大丈夫なのかい?」
休んでいる6人に声を掛けてみた。
「あはは、大体3日に一度4時間だからね。物足りない位だよ」
しかし、普通に学校に行ったり仕事したりの後だからきついんじゃないかな?
「ダンジョンって楽しみだよねー」
「ね~、木戸君にも会えるし」
にこやかに返ってきた。
目の前でこう言われるとこっぱずかしいなあ。
しかし、6人とも元気そうに振舞ってはいるが疲労がたまっている様子は隠しきれていない。
すると俺を見つけたケイがこちらにやって来た。
「タカ様とアンは寝てください、後はわたくし達でやれますから」
「それを言うなら、ケイやガウも休憩すべきだ!」
「ポキは疲れないビャ。昼間に10分から30分寝れば十分ビャ。その時はキセラかアンがいるビャ」
「わたくしは寝る必要も休む必要もありません。幽霊とはそういった物です。それよりもタカ様が体調を崩したりリズムを崩す方が問題です。そろそろ明日の為に休んでください。そして、タカ様は時々顔を見せるぐらいで十分です。それで皆やる気がでますから」
えっ俺って要らない子なの?
「タカ様、そんな顔をされないでください。サポート自体は転移ドアが在る事によって自主的に集まれるようになってからは一人でもできるのですから。多くても2人もいれば十分なのです。タカ様はタカ様の用事をされるか、休まれていただければいいのです。これは、わたくしが作った仕事です。わたくしに全てお任せください。わたくしを含め眷属は無理をしていません。御心配には及びません」
「眷属に仕事を任せるのも主の器ビャ。ポキなどは主人の為に活動限界まで動くのが喜びだったりするビャ。ポキ達を信じてほしいビャ」
「ああ分かった。寝るよ」
そこまで言われると仕方ないので寝に帰るとしよう。
そんな顔ってどんな顔だったのだろう? 少し気になるな。
「木戸君おやすみー」
とL.T会の6人が手を振ってくれる。
「ああ、お休み」
と返すが、顔はにやつきが止まらない。だって俺好みの美少女たちばかりなんだもん! 仕方ないじゃないか。
次の日。
「おにいたん、おはよー!」
「ああ、おはよう」
俺より先に起きて朝食を食べ終わったウズラが挨拶して来たので見ると、ウズラは元は4歳くらいの見た目だったのに小学校1年生くらいまで大きく育っていた。
男っぽくなるかと思っていたが、そうでなく、手足が伸びた分なぜかもっと可愛くなっていた。
凄いな鬼人族!
ウズラはいつまで可愛いのだろうか?
マッチョなウズラ。
イメージ的にあまり見たくないような気もする。
そう言えばお父さんであるグラはマッチョじゃなかったっけ。
なら、マッチョにならない場合もあるのかな?
「大きくなったなあ、ウズラ」
「うん、ぼくね強くなったんだよ。凄くうれしい!」
ウズラは明るく微笑み、えいっ! やあっ! とうっ! とパンチキックジャンプをしていて何気ないジャンプで、天井を壊さずに張り付いて見せる。
そして張り付いた天井からも静かに床に着地を決めたのだった。
すげーな、おい!
ちょっとしたしぐさも今までと違いすべてが成長したと言う実感がわくしぐさだった。
ウズラは鍛えればどんどん育つのだから、このしぐさを見られるのも今日だけなのかもしれない。
ピンポーン!
朝一番玄関の呼び鈴が鳴る。
こんな朝早くから誰だ?
ケイが作った朝食に舌鼓を打っていたところだった。
「は~い! 今いきますよ~」
と母さんが玄関にパタパタと走っていく。
いったい誰だろう?
ハーレムの皆さんは転移ドアでくるし。
近所の方々にしても早すぎるだろう?
「貴志~、お客さんよ~」
母さんは、もう興味が無いのか居間に帰ってきている。
俺に客? ちゃんと呼び鈴を鳴らすあたりショウかも?
「は~い」
玄関に行くとそこには見たことのある金髪が揺らめいていた。
「げっ! お前は、金髪看護師!」
「げっ、とはなんだこの野郎~。ぶっ飛ばすぞ!」
額に青筋を浮かべて腕を振り上げる。
すぐに怒りが爆発した。
気の短い所変わってないな。
「なんで、ここが分かったんだ?」
「はっはっは、よくぞ聞いた。病院に忍び込んでカルテを見たんだ。頭いいだろ?」
「おっおま、それ犯罪だから!」
「固いこと言うなって! お前だってうちの養豚場に無断侵入しただろっ!」
ぐぬぬ、確かに。
「で、何の用事なんだ?」
「くっくっく、お前には大きな借りが出来ちまった。それを返させてもらう」
慣れないしぐさで品っと品を作って見せる。
だが色気など微塵も感じさせない。
かなりの残念美人だな。
「あっ、そう言うの間に合ってますんで。では、さようなら」
ガツンッ
ドアを閉じようとすると足先を突っ込んで来て締まらないようにされる。
「急に閉めるんじゃねえよ! 危ねえだろうが! ちっ、人が下手に出てれば調子に乗りやがって。……アンタに借りをアタイが返せたと思うまで絶対帰らねえからな!」
それが、借りを返そうかと言う奴の態度か? そんなに危ない閉め方はしてないだろ?
と思ったが、そう言えばこいつにも魅了を掛けたことを思い出した。
くっ! 魅了を掛けた俺が悪いのであまり粗雑に追い返すわけにもいかないか。
ケイが霊体になって俺の後ろからずっとこいつの事を観察している。
ケイはどう思っているのだろうか?
「まあ、こんな所で立ち話もなんだ。上がれや」
気の短いこいつの事だ、他にいる大勢の女性陣を見ればきっと腹を立てて帰るだろう。
俺は探索ベースでは無く異界側に作った居間に彼女? えっと名前は~そうそう、あすかだったな! あすかを連れていく。
あそこは暇なL.T会メンバーの寄り合い所の様になっているからだ。
転移ドアを開けようとするとあすかは言った。
「そう言えばアタシ、名前をちゃんと名乗って無かったわー、雲見 飛鳥。あすかでいいよ。よろしくね!」
軽い感じの笑顔が全く似合わないぞ!
「ああ、俺は木戸貴志だ。タカでいいよ。よろしく」
あすかはきっと口で拒絶したぐらいじゃ諦めないだろう。
俺への恩返しと言った目的が有るからよけいにだ。
魅了とは本当に一時的な物だとはっきり分かった今ならば、俺の事を軽蔑し諦めてもらうのが一番いいと思いベースへの扉を開けた。
お読みいただきありがとうございました。
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