0166.太陽の巨人
ちょっと遅いけど メリークリスマス! です~
第六層の入り口にそびえ立つ炎の巨人は、その場から身動き一つしないが俺達の動向をしっかり見ているような気がして試しに遠雷をぶち込んでみた。
すると遠雷の軌跡上を避けるように炎の巨人が変形して穴が開き遠雷は素通りした。
こいつ遠雷を避ける!
反応ぐらいはすると思ったが完璧に避けるなんて。
穴の開いた場所は元通りにふさがりみじんもダメージを与えていない。
こちらには気づいてはいるが、たぶん行動範囲外に俺達がいる為何の反応もしないのだろう。
その辺りはダンジョンの魔物らしい。
さて、どのように攻略しようか?
さっきの動きから見て、今までの魔物とは桁違いに動きが早い。
そして、白く輝くその炎はとんでもない高温であることを示している。
太陽に喧嘩を売るようなものだ。
太陽の巨人とでも言おうか。
それが証拠にあいつに近づいて行くだけ周りの温度が上がる。
入り口付近は300度前後だったと思うか、この辺りは気温が2千度を超えている。
巨人の傍はもっと気温が高いだろう。
我ながら高級防具を着ているとはいえ、こんな灼熱地獄なのに平気で存在できる俺達とはいったい?
そしてこのダンジョンは何が使う事を想定されているんだろうか?
俺達みたいな半魔物は存在が異常であり、そうそう居ないと思うし。
そんな希少な者より人種を強くしないと全体の戦力アップにはならないと思うんだが。
俺みたいなのが一人強くなっても、一人じゃ世界を守る奴かどうかなんてわからないだろう?
賭けにしてもひどすぎる!
人種が何人か強くなれば護ろうと思う人間の方が多くなる公算が高いと思うが。
もしかしたら俺専用じゃないかとも思えてくるほどだ。
流石に自意識過剰が過ぎるだろうか?
もし、これが神の手により作られたダンジョンならば、神は人に一体何を求めているのだろうか?
まだ先が有るような気がするので想像もつかない気がするが、この世界の神の代理管理者が欲しいなら俺はお門違いだ。
他所の世界の俺が強くなっても仕方ない気もするよ。
俺は俺の世界だけでも手に余る。
この世界はこの世界の人間に頑張ってほしい物だ。
俺の眷属は別だよ。
俺の眷属は俺のだから俺の世界用だ。
力をいただいた分はお返しとして手を貸さないではない。
などと、余りにも高温そうな巨人に近づきたくなくて現実逃避気味にグルグルととりとめの無い事を考えていると、装備がミシリミシリと嫌な音を立て始めた。
これは装備が俺の魔力に耐えられず限界に来ている!
命拾いしたな! 太陽の巨人め。
「アンいったん帰ろう」
「そうするニャ」
俺達は灼熱地獄から探索ベースへ帰還したが体中汗まみれで気持ち悪い。
「アン先にシャワーを浴びて」
「いやニャ! 後で入るニャ。兄ちゃんこそ先に入ってニャ」
アンが我を張るなんてめずらしいな?
「いや、ここはレディファーストでアンがお先に浴びて」
「アンは後で入るニャ」
そう言えばアンって風呂ギライだっけ?
俺の後でちゃんと浴びるんだろうな?
無理やりにでも入れないと臭くなってしまうぞ。
兄ちゃんとしてはここは心を鬼にしてでもシャワーを浴びさせねば!
「汗だくなんだからちゃんとシャワー浴びないと駄目なんだぞ」
「ちゃんと入るニャ! 兄ちゃん先に入ってニャ。アンもすぐ入るニャ」
「そっそうか? ならすまないがお先に」
なんか変だな? と思いながらも先に入る事にした。
ダンジョンでの戦いに疲れて帰って来る者用に探索ベースには簡易な更衣室とシャワー室があり魔道具のシャワーヘッドによりすぐお湯が出る為非常に便利だ。
俺は家のお風呂に普段入るので利用する機会が無いのだが今日は急いでシャワーを浴びたいのでここを選んだのだ。
更衣室の入り口に使用中の札を掛けシャワー室に入る。
「ふーっ気持ちいい」
汗だくの体をシャワーで流すと落ち着いてきた。
ガチャリ!
ドアが開いた音がしたのでそちらを見るとアンが全裸でシャワー室に入って来ていた。
「アッ! アン、どうして?」
「遅くなったニャ背中を流すニャ」
アンは進化によってもう同い年と言ってもいい体形だ。
いや胸はかなり大きい気がする。
そしてなぜか体が石鹸によって泡立っている。
「いやいいって。俺もう出るから」
「遠慮はいらないニャ」
「まっまて!」
アンはそのまま背中にビタッと抱き着き体を直接俺の背中にくっつけて洗い始めた。
俺は背中にアンの裸体を感じとてつもなく興奮していく。
「アン、ありがとう。もういいよ。無理してそんなサービスをしなくても」
「無理はしてないニャ。アンが好きでやっているニャ」
ニュルンと背中を滑るアンの躰が気持ちよくてたまらない。
だがこのままでは俺が取り返しがつかなくなる。
「アンありがと。凄く気持ちよかったよ」
「おかしいニャ? ここはそうは言ってないニャ」
しかし、アンは止めるどころかさらに煽情的に躰を動かし続ける。
「そそこは背中じゃないって~! あっあっ、アン! あ~っ!」
……ふうふう。えっと俺は何でアンと一緒にシャワー室に居るんだ?
眩しいほどに綺麗なアンの躰から目をそらせれないでいると。
「今度はアンの躰を兄ちゃんに隅々まで洗ってほしいニャ……じゃあ、アンは皆の手伝いに行ってくるニャ」
あれ? 俺ってアンに体を洗ってもらっていたのか?
「あっああ、がんばれ! 後で行く」
シャワーを浴びると少し照れたような様子のアンは、ほぼ休むことなくダンジョンにとんぼ返りだ。
うっ! 俺はもう寝ようかと思っていたのだが?
もしかして夜にちゃんと寝てるのって俺だけ?
まずい、まるで俺だけ怠け者のようだ!
俺もL.T会のレベリングに参加せねば!
ふうっ、にしても、まさか装備の限界許容魔力量を越えそうになるとは!
あんな所で装備が壊れていたらと思うとゾッとするな。
あの距離からの遠距離攻撃が避けられるとなると、もっと接近して戦うしかないんだが?
今の俺ならもしかしたら大丈夫かもしれないが、なるべく生身では近づきたくないな。
やっぱり、新装備が必要である。
キセラなら問題なく倒せそうな気もするが。
いや、もしかしてアンでもやれるのかな?
神龍の鱗や、凄天虎の毛皮は防御力が高そうだし、二人の攻撃力もすごい。
でも試すには危険が大きいな。
まあそれは最終手段として残しておいて出来るなら俺が倒したい。
そう魔力量は眷属の誰よりも俺が多いのだからなにも出来ないではあまりにも頼りなさすぎる。
ここはハーレムの主としての威厳を守るためにも対策をねらなければ。
くだらない意地のようだがそう言った事も大切なんじゃないかと俺は思う。
そういえば、キセラが結構良い装備を探してきてたっけ。
まずはキセラに相談してみよう。
キセラはベースの居間のソファーに座ってうつらうつらとしている。
非常に疲れているようだ。
キセラは俺達アンデッド系の能力もしくは悪魔系の能力を持っていないため、普通に疲れて普通に寝る。
いや普通よりは遥かに体力がある為、普通の人より元気では有りそうだが。
もしかして、俺ってブラック主人?
一筋の汗がタラーっと俺の額から流れる。
ケイとガウは休めと言っても、疲れないし楽しいので休みません! と言うので休ませられないが。
アンとキセラ、ニノには、もっと休みを与えるべきなんじゃないだろうか?
「キセラ」
「ンッ! アア、タカ」
ぼやっと、キセラが目覚めぐっと抱き着いてくる。
キセラの筋肉質でグッとしまった、そうアメコミの様な筋肉質な躰が俺を刺激する。
しかし俺はそれに反応しないために、まだキセラが人顔になる前のカエル顔を思い出し龍魔人にはなんだか失礼だが、何とか欲望を抑え込むことに成功する。
そう、さすがの俺も爬虫類の顔を主に想像すると欲情は出来ないのだった。
「寝るなら部屋のベッドの方がいいぞ」
「そうだナ、ありがとうタカ。そうするヨ」
「ああ、おやすみ、キセラ」
「おやすミ、タカ。……イヤ、タカはソレガシに用があるのではないカ?」
「いや明日でいいよ」
「ソレガシハ大丈夫ダ、遠慮せずに言ってみてくレ」
キセラは真剣な目で俺を見つめるので聞いてみた。
「どうも、今着ている装備が俺の魔力に耐えられなくなってるみたいなんだ。いい解決方法は有るだろうか?」
すると、キセラは考え込んだ様子で。
「フム、なるほド、そう言った話ならソレガシの装備でも危ないナ。ソレガシの知っている装備開発者の所に行って聞いてみた方がよいかもナ。元勇者協会の主戦力級デ、戦闘よりも装備の作成が得意だった賢者が居るのだヨ」
「へー、それでも主戦力と言う事は強かったんでしょ?」
「蒼天の剣のライバルと目されたパーティーの一員だったらしいガ。突然引退したんだそうダ」
「へえ~、それは凄そうだね」
「アア、凄いサ。あの頃のソレガシと互角の戦いが出来テ、それでいて戦闘は苦手だと言い切っている人だからナ」
「俺の、いや俺達の防具を作ってくれるだろうか?」
キセラは少し考えこんで。
「偏屈な人でもあるからナ。会ってみないと分からないだろウ。ソレガシが一緒に行って説得しよウ」
キセラに紹介してもらう約束をして、俺もダンジョンへ皆のサポートの為向かった。