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0161.帰還してみたら

 俺はもしかしてとんでもない厄介事を引き受けてしまったのだろうか?

 地球の平和が宇宙から狙われるなんて思っても見なかったぞ! この野郎!


 異界の脅威から守るとばかり考えていた。

 ああ、俺いつも考えたらずだ。

 考えてみれば、異界転移の方法が隠されていたのだから、こっちが本命だったのだ。


 しかし、ちゃんと説明しろよな! くそ親父。

 と怒ってみても、状況は変わらない。


 どこかでこのストレスを発散せねば。

 そうだ、ミルスに甘えてこよう。

 と思い帰った時刻は朝、学校に行く時間だった為、母さんが。


「貴志、お帰り。さっさと朝ごはん食べて学校に行きなさいよ」


 ミルスの所には行けなかった。

 畜生!

 そう言えば何も食べてないのでお腹がとても空いているな。


「母さんお代わり」

「おらがご飯をつぐだ」

「ありがと、ニノ」


 ニノもすっかり家になじんでいる。


「おにいたん。ぼくもダンジョンで鍛えたい!」


 ウズラが俺に、にこにこしながらねだって来た。


「まだ小さいんだから、大きくなってからな」

「うー、ぼくも強くなりたいー。皆だけずるいー!」


 ウズラもまだまだ子供だな。

 慣れてきてからは子供らしくぐずる事も有るようだ。


 俺にも時々こうやって甘えてくる。

 ちゃんと家族になって来たなと思う。


「ご主人様、鬼人族は強くなることにどん欲だって聞いた事があるだ。種族属性だと思うので余り押さえつけるのもどうかと思うだ」


 なるほど。


「少し考えてみるよ」

「うん、おにいたんお願い」


 ミルスや、アンに相談してみよう。

 まてよ、勇者協会のシンディやマリーの方が詳しいかな? 

 あとで念話してみよう。


「おはよー」


 少し遅くなったが遅刻することなく教室に入れた。


 教室に入った途端、皆の目が俺に集中する。

 いったいなんだこの反応は。


 周りがひそひそと俺の噂を始める。

 俺の聴力は並みでないのではっきり聞こえる。


「あいつ! よく登校で来たなあ」

「しっ聞こえるぞ。あいつとんでもなく強いって噂だぜ」

「木戸君があんな事したなんて信じられないわ!」


 あんな事だと? 

 俺が一体何をしたって言うんだ。


 うんっ? 皆の目が俺を見た後別の方向を見ている。

 俺もその方向に目を向けてみる。


 すると、頭に包帯を巻き左腕を吊ったオーランが席に座っていた。

 なんだ、あいつ、ケガをしたのか? 


「あんな可愛いオーラン君を襲うなんて、ひどい人」

「なんでも、瑪瑙(ひじり)さんに粉をかけたって言って殴ったらしいよ」

「ひどいわ」

「ひどい奴だ」


 えっ、えっ、え~~!

 これはいったい?


 俺はキョロキョロと周りを見ながら、いつもの様にショウに話しかけた。


「おはよう、ショウ」

「タカお前、やっていい事と悪いことが有るのう」


 ええっ!


「そうだぜ、タカ! 僕はお前がこんな奴じゃないかって実は思っていたんだ」


 ショウに冬二まで! 

 横にいるあかりと樹里を見ると、あかりは両手を軽く上げ困った顔をし、樹里は目をつむって首を振った。

 それって処置なしって事?


 周りを見回すとL.T会の皆だけが心苦しそうにしていて、その他の人間は白い目で俺を見ている。


 遥か太陽系外周で正体不明なケイ素生物を倒して疲れて帰ってみれば、学校における俺の居場所が消失していた。

 俺は絶望の淵に追いやられ始める。


 いや、これはいくら何でもおかしい。

 冬二はともかくショウまでこんな態度をとるなんてありえない。

 俺は2人とは親友だ。

 俺は2人を信じている。


 考えてみると、これは、俺の魅了に反応が似ている気がするぞ。

 俺はクラスの皆を探知で軽く調べてみた。


 すると、L.T会の者や、オーラン以外は軽度マインドコントロールの状態である事が分かる。

 マインドコントロールを維持するための魔力の流れがオーランに接続されていた。


 なるほどこれはみなオーランの魔法のせいか。


 L.T会の皆は隠蔽魔法で隠してはいるがオーランより魔力が高いので洗脳魔法をレジストしたのだろう。


 元吸血鬼?の俺に精神操作で挑んでくるとは、いい度胸をしている。

 異界の魔法技術を学び、神の知識まで得た今の俺には洗脳を解くことなど造作もない。


解除(リリース)


 柔らかな精神異常を解く魔力の波が俺から広がっていく。

 その魔力を感じたのか、洗脳の魔力ラインを切られたことに気づいたのかオーランが突然、落ち着きなく周りをキョロキョロし始める。


 オーランの魔力はダンジョンで鍛える前の聖より少しだが多い。

 魔法を破られたことなど無かったのだろう。

 ひどく狼狽し始めた。


 まあ、狼狽していたのはほんの短時間だ。

 こいつの精神力は鋼鉄だな。


 教室はさっきまでの殺伐とした空気が消え、多くの級友は戸惑いに迷い始めた。

 しかしいくばくかの連中はまだ俺を白い目で見ている。

 洗脳ではなくオーランの言い分を本当に信じた奴らなのだろう。


「っ、おはよう? タカ、あれっおかしいのう。今までなんでオーランの言う事を鵜呑みしてしまっていたんだ? タカがそんな事するはずも無いのにのう」

「えっ、あれっ、タカがオーランをシメたんだよね? あれ?」


 と、正常な思考を取り戻し始めた。


「いや、俺はそんなことしてないよ」


 周りではL.T会の皆が。


「でも、タカってそんな事するひとだったかしら?」

「えっ? そ、そうよね」


 と周りの空気に応じて懐柔を始めた。

 素早い。

 皆本当に優秀だな。


 オーランがギリっと歯を咬む音が俺には聞えた。

 だが、聞こえたのは俺にだけだろう。

 オーランはすでに何食わぬ顔して席に座っている。


 こんな魔法が使えるなら同じ一族の取り巻き達も洗脳されてそうだな。

 洗脳などの精神へ作用する魔法の怖い所は長くかかっていると魂がそれを受け入れてしまって簡単には戻せなくなるところだ。

 戻すには長いカウンセリングが必要となる。


 へたに魔法で魂から無理に洗脳状態を抜いたりすると人格まで変わってしまったり、又は魂が崩壊してしまう可能性が高いので普通はほぼ無理だ。


 まっ俺ほどになると大概の場合、洗脳部分を分離できると思うけどね。

 分離できずに崩壊した魂を再構築しても洗脳されていた状態に戻るだけだ。


 おおっ! 神の知識は流石に深い。

 役に立つには間違いない。

 まあ、嘘を混ぜられてる可能性も否定は出来ないから、慎重にいろいろ試してみよう。


「おっはよー」


 聖が明るく遅刻ギリギリに教室へ入って来た。

 えっと、なんで聖はこんなに明るいんだ。


 もしかして状況を把握していないのか? 

 把握していないとしたら空気読めないにも程が有るだろう。


 昨日も登校していた筈だよね? 聖は。

次の日曜日もお楽しみに!

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[一言] 明確に敵対しちゃったかぁ… 馬鹿だなぁ…
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