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0156.養豚場2

「えっ、あすか、知り合いなのその方」

「えっ、知り合いってほど知ってるわけじゃあ……」


 と赤くなりそっぽを向いた。


 おいっ! その態度じゃ誤解されるだろう。

 あすかって名前なのか。

 しかし、魅了は怖い! 未だに後遺症が残っているなんて。


「で、あすかの知り合いだか何だか知りませんけど。何の御用なんです?」


 赤子を出来るだけ俺達から隠そうとしながら、しずこと呼ばれた女性が訪ねた。


「慌てずに聞いてください。まずその子はあの大量失踪の時に失踪し1日後に帰って来た赤子ですね?」

「そうだったらどうだというんだ。警察にでも連絡するつもりか?」


 父親と思われる男性が赤子と女性の前に立ちはだかり叫んだ。


「いいえ、そう言ったつもりは有りません。俺も失踪し帰って来た人間ですから」

「すると、お前は吸血鬼!」

「いえ違います。俺は吸血鬼にならなかった者です。その子も吸血鬼になりきってはいません」

「なっ、なにを言ってるんだ?」

「では、これを見てください」


 俺は窓からの日射しの中に入っていった。


「吸血鬼蝙蝠は日の光に当たると灰になりますが、俺はなりません。その子が日に当たったことは有りますか?」

「ある、不注意で少しだけ日に当たった事が」

「その時どうなりましたか?」

「日に当たった所が灰になった。でもすぐ避けてちょっと経つと元に戻ったんだ」

「そうです、吸血鬼は体を再構築して傷を直します。それは、吸血鬼に成り損なっていてもある能力です」


 俺は真っ黒い蝙蝠の羽をバッと広げ、続けた。


「俺は吸血鬼に成らなかった。しかし、能力だけは手に入れた。生きた人間です」


 話を聞いている3人は驚愕の表情でこちらを見ている。


「お願いです。この子を連れていかないで」


 と、しずこさんは俺に懇願してきた。


「俺はそんな事をしに来たわけではありません。ここまで自分の正体をさらした俺を信じてほしいのです」

「じゃあ、何をしにここへ来たんだ」

「その子は吸血鬼では有りませんが、血を吸うアンデッドです。そのままでは全く成長もしないし、何かの具合で吸血鬼に成ってしまうかもしれない」

「……」


 3人とも俺の話に聞き入り始めた。


「だから、俺はその子を救いたいのです。今の俺ならその子を人に戻せるかもしれません。俺はその子を人に戻すためにやって来たのです。俺は地下街に現れた吸血蝙蝠達をすでに滅しています。完全な吸血蝙蝠にその子が成れば、有無を言わさず滅します。お願いです。俺はその子を滅したくはないのです。今ならまだ、人に戻せる可能性が有るのです。俺にその子を救わせてください」


「えっなんだって」

「あなた、私怖いわ」

「しずこ、俺だって」


 あすかはなぜか沈黙を守ってこちらを凝視している。


 もう一押しかな。


「ガウ、姿を現して」

「はいビャ」


 俺の横に宙に浮かんだガウが現れる。

 ガウは白と黒の美しい猛禽類の翼を広げ、角は有るが天使の輪もある神秘的な姿をしている。


「俺にはこの神に連なる者を眷属に出来る力がある。どうか俺に救えるか試させてほしい」


 流石にこれには3人ともびっくりして唖然としている。

 さあ、どうだ。


「わっ分かった、この子に危険は無いんだな?」

「はい、今のままであれば何もしません。でも、少しでも人の血を吸ったりすれば。吸血蝙蝠になってしまうかもしれません。吸血蝙蝠になった場合は残念ですが滅させてもらいます。有無は言わせません、あっと言う間に滅します」

「そんな事させるか」


 そう言って旦那さんは横に転がっていたスコップをもって俺に殴りかかって来た。


『ガウ、動くな。これぐらい俺には何ともない』

『分かったビャ』


 ガンッ! 


 スコップの縦にとがった所が俺の頭に直撃した。

 痛って~。

 傷は負わなくても痛い物は痛い。


 このおっさん容赦なく頭を殴りやがった。

 俺が詐欺師で普通の人なら死んでたぞ、今の一撃。


「なっ?」


 おっさんの手がしびれたのか、スコップを握れなくなって落とす。


「俺が普通の人でないと理解いただけましたか? 今、滅するつもりなら話しかけたりしません。消えられるんですよ俺達は」

「……こっ今度こそ分かった。言う事を聞こう」

「あなた、大丈夫なの?」

「ああ確かに桁違いの力だ。私達を殺すつもりなら簡単だっただろう。すまなかった。この通りだ。息子を救ってくれ」


そう言っておっさんは頭を深々と下げた。


「その子の背中に耳を付けて心音を聞いてみてください。鼓動の音がしない筈です」


奥さん(しずこさん)は子供を抱き上げ背中に耳を当てた。


「はい聞えません」

「そのままでいてください」


 俺は赤子の胸に手を当て悪意の排除を始める。


 うん、フレッドの悪意だ、間違いない。

 確かに悪意が魂の周りにまるで魅了を掛けた悪気のように纏わり付き、その上で幾らか魂に侵入している。


 まずはこの悪意をニュートラルな魔力に変換し始めた。


 俺の手はボウっと輝き始めている。

 難なく悪意を排除出来たら、体の再構成を始め、生気を吹き込み始める。

 眷属にするには神気か悪気を流し込む必要が有るらしく、生気のみ流し込めば大丈夫のはずだ。


 相手が神気や悪気を持っていればこの方法は使えない。

 完全復活の為には神気や悪気を流し込まねばならず、魂にまで神気や悪気が入り込む可能性が高くて眷属になってしまう。


 まあ、相手の合意なく流し込んでも魂にはじかれるだけだけど。

 もっと制御がうまくなればそれも防げるかもしれない。


 吸血鬼から人への再構築が進み体が生命活動を始め、心臓が鼓動を始める。


「こうちゃんの鼓動が聞こえるわ! 聞こえるのよ! あなた」

「おっおお~航一!」


 おっさんが抱き付こうとしたので。


「もうちょっとお待ちください」


 と左手で制止する。


「あっああ、分かった」


 このおっさん考えなしに行動するな。

 脳筋か?


 普通の体になってきたところで吸血鬼の魔力がドンドン体からこぼれていく。


 これでは吸血鬼の能力は残らないな。

 神気か悪気が有れば能力を留め置く事も出来たかもしれないな。

 魔力もない完全な普通の人になった。


「終わりました。もう大丈夫」


 そう言って僕は赤子から手を離した。


「おぎゃあおぎゃあ」


 赤ちゃんは元気に泣き始めた。


 そうだよな空腹だよな。

 何も食べてないもんな。

 よかった、幼い命、救えて本当によかった。


 先ほどまで静かで冷たかった赤ちゃんの泣く姿をほっとしながら見つめていた。


「あなた、泣いたわ! こうちゃんが泣いたの。帰って来てから一度も泣かなかったのに」


 と、涙を流し喜ぶ姿はほほえましい。


「ありがとうございます。なんてお礼を言っていいか」

「それよりお腹空かしていますよ乳を上げてください」


 と、俺はよそを向いた。よその奥さんの授乳を見るわけにはいかない。


「じゃあ、これで。お幸せに」

「待ってくれ、何かお返しをさせてくれ。あんな扱いをした上に助けられたら私は……」

「いえ、そう言うの要らないです。そうですね、今回の事は内緒にしておいてください。では、さようなら」


 俺とガウは転移しベースへと帰った。


「あたしは逃さん。必ず見つけて恩を返して見せる。まあ簡単には返せそうもないからずっと一緒だ。離れないからな!」


 俺達を見送ったあすかはぼそりと言葉を漏らした。

この後、本日中に登場人物紹介7を投稿します。

仕事の方が繁忙期になりますので、残念ですが0157.から週1での投稿になります。

今の所、毎週日曜日の、出来れば午前中に投稿したいと思っています。

お待ちかねの方には大変申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

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