0154.吸血蝙蝠残党
「え~杏ちゃんいいな~~。チートだよ杏ちゃん。私も冒険でチート無双したい~~!」
芽衣は杏子が眷属になって強くなったことに対して悲壮な顔で叫んでいた。
年末に別れた時にはほぼ同じくらいの魔力量だったから置いて行かれ感が凄かったらしい。
「ごめーん。私ってなぜか物心つく前から眷属だったみたいなの」
「う~うらぎりもの~」
芽衣は涙目になりふくれっ面になっていた。
普段はおとなしくて従順な感じなんだが、こういった面もあるんだな。
まあ、それもかわいいんだけど。
正月も終わり各自帰省から帰り冬休みの残りも僅かになった頃。
久しぶりにいつものメンバーが探索ベースに集まっている。
だがケイとガウとキセラはL.T会のレベル上げが新年早々始まったのでそちらに赴いていてこの場にはいない。
「タカ、毎日来るって言ったのに来ない日があった」
プンプンと怒りミルスは頬を膨らませている。
ふくれっ面のミルスも可愛い。
「ごめん、ゆるして。色々あったんだよ」
「まあ、タカの事だからそうなんでしょうけど~」
と唇を尖らせた。
「うちらは、正月やったけど、ミルスは何でもない日常やったからな寂しいのはしょうがないで。うちかて帰省して家族に会っていても寂しかったんやから」
「美香は寂しかったのか? 僕なんか年始年末の挨拶が忙しくてそんなの感じる間なんてなかったよ」
「冷たい聖はそんなもんやったんやろうな」
「ぼっ僕は、冷たくなんかないよ」
「まあまあ、美香姉ちゃんも聖姉ちゃんも久しぶりに会ってすぐ喧嘩は良く無いニャ」
「そう言う、アンも育ったねえ。もう、子供じゃ無いな」
「聖姉ちゃんありがとうニャ」
美香はそんなアンを見てハアハアしていて危ない感じだ。
美香は心にモフ好きなおじさんでも飼っているのだろうか?
「しかし、杏ちゃんも眷属だったとはねえ。この僕と比べ物にならない位、魔力が増えていていいなあ。でも、杏ちゃんは他の眷属が育ったのに育ってないねえ」
「育ってないとは失礼な聖さんですね。私のカップだって平均以上はちゃんとあるのよ! 感度だって……おほんっ。あのね普通の人は進化しても育たないんだって、ガウが言ってたの」
「へーなるほどねー」
「でもね、第二進化まで行った人種は知らないから次の進化は知らないって。だから次の進化時には爆乳になってお兄ちゃんの視線を独り占めよ!」
「ふーん。それは良かったね。皆わけわからないほど強くなってしまって。僕も眷属化を考えようかな? いや時間は有る。もっと考えて決めるべきだな」
「そうやな、レベルアップして若い期間がすでになごーなってるよって、焦らんかて考える時間は有るんやな。うちも肌や体調はまるで中学生みたいやし。いや、ニキビや肌荒れが無くなって生まれたての赤ちゃんみたいにお肌プルンプルンやで。うちはいつでも眷属になってええけど」
と美香の目は輝いていた。
確かに、美香は会った時より若々しくと言うか、幼さが見える程の感じになってる。
いやまて、こんな非人道的なシステムの眷属は出来るだけ増やしたくは無いんだが……。
そんな事を言いながら、すでに5人か。
決して裏切ることのないある意味一心同体の可愛い彼女達の存在を内心では喜びに感じている部分もある。
俺はなんて破廉恥なんだ。俺は俺を軽蔑するぞ!
「杏姉ちゃんは眷属の中では一人っきりの貴重な聖属性ニャ。いいニャあ」
「そ、そう? そう言われると照れるよ、アンちゃん」
えへへ~と杏子は、はにかんだ。
「ほな、レベルアップのすばらしさを再確認出来たら、ダンジョンいこーか!」
「おう!」
と皆でダンジョンに向かう事となった。
ここで、今回の進化で分かっている事をまとめてみよう。
ケイは大精霊となり、さらに自然属性魔法と探知魔法に特化したようだ。
その気になれば天候ぐらい簡単に変えてしまえるらしい。
そして世界中の電子情報は思いのままになったのだ。
たとえスタンドアローンであっても彼女の魔法の前には意味がない。
アンは凄天虎になり、さらに大きい黄金色の虎になれ、その際には金色の猛禽類の羽が新たに生え対空戦闘も可能になった。
今までよりも格段に早く、力強くなったようだ。
ガウは死生天、魂を直接攻撃したり復元したりできる様になり、他者の体を癒すことは出来ないが再構成出来るなど後衛としてとても優れた能力を持ち、眷属内で最も防御にも優れ前衛すら苦も無くこなせるるジョーカーの様な存在だ。
ちなみに天使の輪が有るが聖属性ではない。
キセラは超龍魔人になった。
白銀に輝く神龍になれ、圧倒的なパワーを誇るが、素早さでアンに劣り、防御力ではガウに劣る。
それを加味しても戦闘力においては眷属最強だろう。
特に一対多、高防御力を持つ相手などとの戦いが得意そうだ。
どちらかと言えばキセラは対空戦、遠距離攻撃が得意で、アンは対地戦、近距離攻撃が得意に見える。
龍虎並び立ってしまったようだ。
杏子は天聖人とのことだが、外見に変化もなく、回復や再構成以外にどんなことが出来るのかよく分からない。
魔力は蒼天の剣のシンディの半分くらいと言った所だろうか?
それでも人種としては最強に近い魔力を内包している。
蒼天の剣が強すぎると言った感じなだけだ。
そのうち何ができるか分かるだろう。
俺は劣化創生神として現生神となったらしい。
だが俺も何ができるのかよく分からんな。
不本意ながら、背に大きな蝙蝠の羽を任意で展開できるようになり対空戦闘も幅が出てきた。
神なのにまんま吸血鬼のイメージで嫌なんだがな。
もう、蝙蝠の姿なんてなることは無いだろうと思える。
他の能力なんかは、これから手探りで探していくことになるだろう。
しかし、神って、また大仰なものになったもんだ。
ちなみに探知はどんな物かと思って探知してみると太陽系内は全て探知範囲内だった。
広げればまだ遠くに届きそうだ。
一点に集中させればば屋根越しにでも月の表面をまるでそこに居るかの如く映像としてみる事も可能みたいだ。
不味いな。
これでは色々な物を覗き放題だ。
映像化は普段は封印して薄く地球全体に邪悪の侵入がわかる程度の探知だけにしておこう。
最大探知範囲が余りにも広大だが、宇宙の探知って何の役に立つのだろうか?
でも、時々はやって見よう。
今見ただけでも太陽系はどんどんと弱くなっている結界に囲まれている事が分かる。
そのうち消えそうだ。
こんなものを設置できるのは神だけだな。
張ってあるって事は侵入し脅かす何かがいるってことだ。
もしかして世界を守るって、これの代わりをしろって事か?
もっと具体的に教えてほしかったな。
そして、精度を上げて近県の距離内の円形探知に切り替えると、なんと、吸血蝙蝠の存在が一つ見つかった。
それほど遠くない場所にいたようだ。
ああ、まだこの世界にいたのか吸血蝙蝠。
でも、反応が弱いなこの吸血蝙蝠。
俺みたいになり損ないなのか邪悪度も低い。
神の力を宿した今ならば、まだ助けられるかもしれないと久しぶりに内なる知識がつぶやいた。
すぐに発見した吸血蝙蝠の元へ行ってみるとする。
助けられるといいな。
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