0151.創生神
俺とガウは不審な声の元を探しある古墳の中に入っている。
そしてその声の主に記憶の封印を解かれ、実の母は母さんのお姉さんの嘉子おばさん、ママで有る事を思い出し泣いていた。
ママ、俺はこのことを胸に収め、育ててくれた父さんと母さんを親とするよ。
ママごめんなさい。
もう、忘れたりはしない、ママ。
「うっ、ううう」
泣くのをこらえようと頑張って見ても大粒の涙が頬をつたい流れ、俺の悲しみは収まらない。
そうか、俺が人助けするのはママを救えなかった後悔の現れなんだな。
『タカシヨ、モウ、時間ガナイ。先ニ、力ヲワタソウ。神ノ力ダ。ウケトレ』
へっ! 神の力?
「ちょっとま…………」
言葉を最後まで発する事は出来なかった。
巨大な神力と魔力が体に流れ込んで来て体は一切動かせなくなり、俺は真っ赤に燃え上がった。
(ぐおお、熱い! だが意識があるぞ。燃え上がったように見えはしたが実際には燃えてはいない様だ。むむっ? しかし、なにも出来ないな)
『タカシ、ソノママ聞クガヨイ。ワレラノ、神界ハ、次元的ニ、遠ク離レ、次ノコンタクトハ、最低デモ、200年後、トナル。
タカシ、ヨシコトワレノ、愛ノ結晶ヨ、ワレ、ソノ世界デ、ソノ時ハ、モウスデニ、力ヲ振ルエナンダ。
ワレノ、力ヲ振ルエレバ、ヨシコヲ、救エテイタモノヲ、口惜シヤ。力ガ振ルエルホド、近付クノハ、2万年先ナリ。
ソノ時ニハ必ズ。スマヌ。ワガコヨ、コノ世界ヲ、オマエニ託ス。
生気アル、ガガ、ヴヴゥ、ウツシヨノカミ候補ヨ、ソウセイシンノチカラ、タシカニワタシタ。正シク神トナリコノセカイヲマモリタマエ、ヴッ、ヴヴ、ジジジ…………』
おっ、おいって!
もう何も感じない。
まだ、体も動かないし念話も出来ない。
周りの様子すら全く分からない。
創生神と名乗っていたな。
しかも、創生神との繋がりが切れたようだ。
一方的に話しまくって、力とやらをくれたようだが俺まだ生きているのか?
我が子とか現世の神候補だとか俺の事を言っていたな。
候補ってことは他にも似たような存在が居るのだろうか?
どんな存在か分からないが注意しておくに越したことは無いだろう。
確かにママの記憶はあってもパパの記憶はない。
百歩譲ってこの世界を守るのは良いだろう。
陰ながら外敵から守るのは良い。
趣味に合う。
しかし、託されてもそれ以上は何をしていいのかわからんよ。
何を期待しているのか全くだな、パパ。
うわっ! なんだかこの年でパパとか恥ずかしい! 親父で十分だな。
何でママは平気なんだろうか?
親父はかなり無理をして連絡を取ってきて力をくれた事がなぜかわかる。
力をありがとう親父。
分からないなりに頑張るよ俺。
少しの間なにも出来なかったが、段々周りの様子が分かるようになってきた。
『タカ殿! タカ殿!』
ガウがしきりに声を掛けてくるのが分かり応える。
『ガウ、心配を掛けたようだね。もう大丈夫。進化が終わりそうだ』
『それは良かったビャ。ポキ達も進化に備えるビャ。ケイ、アン、キセラ、進化が始まるビャ。心と体勢を準備するビャ』
ガウにも何が起こっているか分からなかったようだ。
『了解。ガウ、タカ様は無事なのね?』
『分かったニャ』
『マっまて! ソレガシ高高度を飛行中ダ』
『ケイ、タカ殿は無事進化が終わりそうビャ。キセラは早くどこかに着陸するビャ。時間はあまりないビャ』
『ワ、分かっタ。ガウ、ありがとウ』
そうか、俺の進化が終わったら続けて眷属の進化が始まるんだな。
キセラの着陸が終わらないと不味い。
真龍状態がいかに頑丈でも意識を失い多分10マッハ以上位で飛んでいるはずのスピードを減速できずそのまま地面に激突すればどうなるか分からない。
キセラの体勢が整うまで少しでも進化を長引かせれない物だろうか?
おっ! ちょっとなら出来そうだ。
それでも数分が限界かな。
でも数分あれば着地できるだろう。
そうだ!
『キセラ、転移だ! 転移で安全な所に行くんだ』
『ソっそうだナ』
ブンッ
『タカ、お待たせしタ。もう大丈夫ダ。すまなかっタ』
『間に合ってよかった。俺の進化はもう終わる』
ゆっくりと周りが見え始め、探知も作動し始める。
指を動かすと少しだが動き始める。
グッと握りしめてみる。
ガウが心配そうにこちらを見ていた。
目の前に揺らめいている炎の様な物が薄くなり消えていく。
体が急激に楽になっていき突然力が溢れだす。
「おおっ! アホみたいな魔力だ! 真祖の男爵より遥かに多いぞ!」
「タカ殿、進化おめでとうございますビャ。超絶強くなってますビャ」
ガウはそう言ってにこやかに微笑んだのもつかの間に。
「あ、ビャビャ」
シュルルルッと白い糸の様な物に包まれ卵状になっていった。
眷属たちの進化が始まったのだ。
眷属との繋がりを確認てみればちゃんとガウとの間に眷属の繋がりがある。
むっ、繋がりの線が一本多いぞ?
何だこの線は?
いったい誰に繋がっているんだ?
お兄ちゃんがウズラをしっこに連れて行って、謎の声が聞こえるという謎の言葉を残してガウとどこかに行っちゃった。
つまんないな。
「ここで待っていても寒いし、こういう時のお兄ちゃんっていつ帰って来るか分かんないから、先に帰ろうよ。お兄ちゃんなら大丈夫だし」
私のお兄ちゃんは強いんだ。
この世界にお兄ちゃんに勝てる存在なんて、ふふん♪
そう考えるとすごくうれしいわ。
「ウズラ、アンと手をつなぐニャ」
「うん」
「そうね、お爺ちゃんの家で待ってましょう。ねっ父さん」
「あいつの事だ、また何かに巻き込まれているんだろう。なら、すぐは帰ってこないな。帰ろう、母さん」
父さんも母さんも同意したので帰り始める。
おじいちゃん家が近づいてくると。
「わたくしは姿を消します。近くには居ますので」
そう言ってケイちゃんが姿を消しました。
「よお帰ってきたのう。寒かったじゃろ」
「お雑煮を食べなせい」
「おじいちゃん。おばあちゃん。明けましておめでとう」
「ああ、おめでとう。さあ入りねえ」
「貴志は? 姿が見えないが?」
「お義父さん、貴志はまた何か事件に突っ込んでいきました」
「貴志はいつもせわしいのう」
炬燵に入ってお雑煮だ! あったまる~。おいし~♡ おばあちゃんのお雑煮最高!
お兄ちゃんも一緒に食べればよかったのに。
「父さん達もう寝るからな。杏ちゃんも無理しないようにな。貴志はいつ帰るかなんてわかったもんじゃないんだから」
「うん、わかった~」
もうすっかり寝てしまったウズラを連れてお父さんとお母さんは床に入った。
「アンは一緒に居るニャ」
「アン今日は帰らないの?」
「兄ちゃんの方が心配ニャ」
「ふ~ん」
いつの間にか向かいにケイちゃんも座ってる。
お兄ちゃんを待ちつかれて眠くなってきた頃。
「タカ様が進化しました。わたくしとアンも進化の為動けなくなります。杏様、すみません」
と二人とも白い煙を出しながら動かなくなった。
でも、あれれ、私も動けないぞ?
一体どうなっているの?
私の体からでる大量な白い煙を見ながら、気が遠くなっていった。
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