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0148.年末

「そうですか。キセラはもう行ったのですか」


 ケイは遠くを見るような感慨深い表情で言った。


『キセラ、聞こえますか』

『ハイ、ケイ殿!』

『これからは同じ眷属、同格です。ケイとお呼びなさい』

『ハイ、ケイ』


『仇討ち、頑張りなさい。ですが、あなたはもうタカ様の眷属です。無理をしてはいけません』

『ハイ、ケイ』

『キセラ、帰ってきたらお話があります。よろしいですね?』

『ハイ! ケイ』


 心なしかキセラの返信に怯えがあるよな感じがした。

 ハイがイエッサーの様に聞こえる。

 あれ程までに強くなったキセラをビビらせるとかさすがはケイだ。


 通常眷属同士は争えないようになっているらしい。


 しかし、俺への叛意が認められれば一方的に攻撃される羽目になるらしい。

 ケイは厳しくて容赦がないように見せている(と思う)から、ケイに疑われると死を間近に感じるらしい(アン談)。

 まあそれは怖いか。


 なぜ、らしいばかりかと言うと、ケイは俺の前では忠実で穏やかなのだ。

 厳しい一面はあると思うが全く怖くはない。

 つまり聞いた話でしか無いからだ。

 俺には分からん。



 キセラを見送った後、俺達は車で母さんの実家に出発する。


 年始年末ゴールデンウィーク等の帰省はするが父さんと母さんの実家同士が非常に遠い。

 なので、交互に帰省することでゆったり過ごすのが最近の決まりだ。


 今回は母さんの実家の番だったと言う訳だ。

 俺達の転移で行く案も考えたんだけど、車もなしに遠距離の田舎に突然現れては混乱が起こると危惧された為止める事にした。


 なんせ田舎は、皆知り合いと言っていいほど家族がどこら辺から帰ってくるかを知っていたりする。

 少しでも疑問に思われれば噂が拡散して、じいちゃんたちに迷惑を掛けてしまうかも知れないからだ。


 まあ、道は混んでいるので、ざっと5時間ほどだ。

 飛行機でヨーロッパに行くより楽だろう。


 一緒に行くのは両親、妹、ケイ、アン、ガウ、ウズラ、そして俺だ。

 両親が交代で運転する。

 ニノは悪いけど留守番だ。


 アンとウズラが増えるだけでも、じいちゃんとばあちゃんがかなり驚いているのに、どう見ても背の低い大人なニノは見せられない。

 うちが貧乏なのはじいちゃん達も周知なのだから、ベビーシッターを連れ帰るとするわけにもいかなかった。


「おらはここでおとなしくしてるだ」


 とは言うが俺の罪悪感もすごい。


「アンが時々帰ってくるニャ」


 アンが転移で帰られるのは、寒い中ニノを一人ぼっちに長い事はさせないので良かった。


 俺が運転できれば眠くならない体なのでいいのだが、もちろん免許がない。

 でも久しぶりの遠距離旅行で両親も含め皆楽しそうなので良しとしよう。

 転移で移動は楽だけど味気ないからね。


 ケイとガウは。


「わたくしたちは飛んでいた方が楽なので、警戒がてら飛んでいきます。突然家族が増えすぎるのもいけませんので、わたくしとガウは気配を消したまま過ごします」

「ポキもあの箱に乗るよりは飛んでいた方が楽ビャ」

「アンも走った方がいいニャ?」

「いえ、アンはタカ様の傍に控えなさい」

「分かったニャ」


 俺が何も言わないのでケイがいつも仕切っていた。

 

 俺はケイに”確かに二人でも家族が増えるとなるとビックリしそうです。三人も四人もは論外です。隠れられるわたくし達は隠れていた方がいいですね”と言われて俺はやっとその事に気づき、決まったのだ。


 小出しにした方がいいのかもしれない。

 ケイは母さんたちにその旨をすでに伝えているらしく、電話でもケイやガウ達二人の事は話していないとの事だった。


 俺がポンコツなせいでケイには負担を掛けるなあ。


「タカ様には自分を守れとか言いにくい事は解っています。わたくしにお任せあれ。見事に仕切って見せましょう」


 ケイはふんすっ! って感じでどやった。

 その姿は見た目年齢に沿っていて可愛い。


「ああ任せるよ頑張ってね」

「はい、タカ様」


 ケイはとてもうれしそうだった。

 車の三列シートの中の席には子供用シートがセットしてあり、そこに座った、興奮気味のウズラは、はしゃいでいる。


「兄たん。ねえ、どこいくの? ぼく車に乗れてうれしいな」


 と嬉しそうに聞くのだ。


「ああ、俺のおじいちゃんの家に行くのさ。優しいじいちゃんたちだから安心していいよ」

「うん楽しみ」


 車が走り出すと。


「うわーすごいー」

「早いニャー」


 アンとウズラが窓に張り付いて外を見ている姿がほほえましい。

 出発し高速に乗って少々走ってから。

 ウズラが


「お兄たんトイレってどこー?」

「ちょっと待て車の中には無いんだ。父さん」

「ああ、ウズラ、パーキングエリア(PA)まで待って、そこにトイレがあるから」

「アンもしたいニャー」

「アンも待ってな」

「車に乗るとどうしておトイレ近くなるのかしら?」


 と妹までもが青い顔だった。

 そう言えば、家を出る前に興奮して、喉が渇いたのかジュースをしこたま飲んでたっけこいつら。


 えも言えぬ顔でトイレを我慢している妹達の顔がなんだか、可愛い。


 何とかPAに到着すると皆急いで車を飛び降りていった。


 さて、俺も車の中でしたくなっては辛いのでトイレに入っておくかな。

 俺がちょっとした売店を覗いて車に帰ると、妹たちはほっとした顔で缶ジュースを買って飲んでいた。

 案の定、出発してすぐにまたトイレ、トイレと騒ぎになった。

 もうちょっと考えろよな。


 そんなこんなで大騒ぎしながら、皆眠くなって静かになった頃、車はおじいちゃんの家に到着した。

 田舎と言ってもそんなに辺鄙なわけではなく、それなりに家は有る、所々に田んぼや畑が有ったり、大きいマンションなんかが無かったりするが、さみしいというほどの場所ではない。


「ただいまー」


 母さんがそう言って、実家である神山家に入っていくと。


「おお~、ようきたね~。早う上がって休むがええ。疲れたやろ? アンちゃんとウズラちゃんね。話は聞いとるよ。遠いところ疲れたよね。うちがおばあちゃんよ」


 と優しくおばあちゃんが迎えてくれた。

 居間に入り大きな掘り炬燵に皆座る。

 居間のこたつにはじいちゃんが一人座っていた。


「ややこれは、めんこい子供たちじゃ。紀子よくやった。ほめてやろう。わしがじいさんじゃよろしくのう」


 アンとウズラを見たじいさんはうれしそうだった。

 二人とも流石母さんの親だ。

 ちなみに紀子とは母さんの事です。


「嘉子も生きていれば……」

「おじいさん。それは言わない約束ですよ」

「すまんのう。年を取ると忘れっぽくていかんわ。かっかっか」


 嘉子とは母さんのお姉さんで、地震で倒れてきた家具の下敷きになって亡くなっているらしい。

 母さんには後お兄さんもいるが今年は帰って来て無いらしくいない。


「そうそう、仏壇に手を合わせないと」


 と母さんが立ち上がり。

 俺たちもそれに続く。


 アンもウズラもよく分からなそうにしていたが、空気を読み、とりあえず立ち上がり付いて行く。


 もちろんケイとガウも宙に浮いたまま後ろについてくる。

 じいちゃんとばあちゃんには見えてはいないが。

次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。

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