0145.地球の魔力
俺は青い空を見上げて目が覚めた。
すこし冷たい風が熱かった体に気持ちいい。
ああ俺はあの真祖に勝てたんだな。
魔力量の桁が違う相手に轟雷と言う格上を倒せる切り札があったにしても、勝てないことはないかも、だが負ける可能性の方が高いと思っていた。
生気吸収勝負などになればあっさり俺は吸収されただろう。
その轟雷が通用しなかった時には本当に負けたと思った。
勝てたのはケイのおかげだ。
ケイやガウ、アンは? 後、聖はどうなったのだろうか?
ガウは間に合ったのかな?
『ケイ、……』
あれ?
『アン?、……、ガウ?……』
3人とも応答が無い。
どうしたんだろうか?
ああ、俺のレベルアップがあまりにも大きかったから、レベルアップの睡眠に入っているのかもしれないな。
そう言えば、俺は念話が使えるようになっていたな。
念話で連絡してみるか。
『聖、こっちは済んだ。そっちの様子はどうだ?』
『ああ、タカか無事でよかった。こっちなんだが、ついさっき、いきなりケイが固まってしまって動かないし、ガウは寝てしまったぞ。何があったんだ?』
『いや、こっちで真祖を倒したら、結構なレベルアップをしてしまって、そのせいで眷属にも影響が出たんだと思う』
『なるほど。って、タカ! 真祖ってなんだ? 真祖が居たのかそこに? 真祖を倒したのか?』
『ああ、トリッキーな手段で何とかな』
『トリッキーでも何でも真祖を倒せるとは凄い!』
『俺はこの後この近辺を知らべるよ。またな』
「あっタカちょっと、って私からは繋げないのはもどかしいな。くそっ。でも、真祖か! 僕にはどれほど強いのか想像も出来んよ。流石僕のタカだ。うふふ。二人の子供は素晴らしい降魔師になるに違いない。しかし僕だけがタカにメロメロなのは少し面白くない。こうなったからには僕のこの魅力でメロメロにして、決して僕から離れられないようにしてやる。覚悟してなよタカ! くっくっく」
ぶるっと背筋に悪寒が走る。
いったいなんだ?
まあいい、真祖が居なくなったのですでに用済みの結界では有るが、まずはしっかり調査をしておこう。
と言う訳で俺は皆の所に帰るわけでもなく、結界の解析を続きから始める。
一時もするとケイから連絡が入る。
『ご連絡に応えられず申し訳ありませんでした。あの真祖に勝たれたとのことおめでとうございます。わたくしもガウも元以上の魔力が戻ってきております。ご心配されませんよう。で、タカ様何かわかりましたか?』
『まだ全て分かったわけじゃないが、この結界世界中から、いや、もっと広い宇宙、そう太陽系全域ぐらいの広さから魔力を集めているようだ、だいたい、700年くらい前から。魔力はこの世界に湧き出るように存在するからゼロではないけど、この結界のせいで魔力が薄いんだ、この世界は』
『なるほど、それで結界をどうされるおつもりなんです?』
結界を破壊することは簡単だ。
しかし大きな改変によって世界がどう変化していくか?
例として魔物があふれた異世界があり、あの世界から魔力を求めて悪魔などが転移してくる可能性が高くなることも予想できるので、今出せる答えはこれのみだ。
『あの世界の現状を考えると、今の世界に魔力が溢れたら大変な事になりそうだから、当面は放っておくつもりだ』
『タカ様、わたくしは良い判断だと思います』
『ありがとう。あとは円錐だと飛行機が引っかかるのでもっと低い物に変えれるか頑張ってみるよ』
『分かりました。わたくしたちは予定通りに、もう少ししたら皆さんをこちらへ転移しておきます』
『すまんがよろしく頼む』
さあ、解析を続けるぞ。
「……と言う事でタカ様は遅れるそうです」
ケイはタカから聞いた話をみんなに伝える。
その後、ギリシャのホテルの一室でケイ、ガウ、美香、聖がゆったりとお茶しながら話すが、ケイもガウも話に余り参加しないので、美香と聖の話になってる。
「なるほどな。この世界に魔力が少ない事には理由があったか。それで、タカは魔力を解き放つのはやめたのか。まあ、無難だな。まっタカっぽいと言えばそうなんだが」
「せやなー。今更シャーマンなんかが活躍する世界っちゅうのも、色々もめごとの種になりそうやな」
「700年前か。魔女狩りの時期の少し前だな。周りから魔力が激減すれば使える力が減っていったはずだから」
「魔力がなくなった後にはそれなりの悲劇があった。ちゅうわけやな?」
「そうだと思うね。でもその真祖が暴れまわるよりは良かったのかも知れないけどね」
「まあ真祖がどれだけの事をしたかったかにもよるんやろうけど」
「まあ、もう確認のしようがないな。でも、何もしないつもりなら帰っていたんじゃないかな元の世界へ」
「なるほどやな。のちに吸血鬼伝説もあるみたいやし、何もしなかったわけでもないんやろ。結界が無かったら、人は全て吸血鬼の家畜になっとったって、うちは驚かんな」
「案外それが異世界の真実かもしれないぞ」
「そないな馬鹿な」
「ならいいがな。だけど異世界でも真祖には誰も勝てないのは事実だろう」
「……そう言われればそうやな」
「なのに、平和そうだった。なにか理由があるはず」
「まあ、うちらが考えてもわからんねんな。あははは」
「そうだな、はははは」
「それよりや。L.T会の皆も来るみたいやから。埋没せんように気い付けんと」
「いや僕は会議あるし、サバゲーに参加するしそれは譲るよ」
「あっ、なんか余裕やな。そう言えば道中長いこと一緒にいたんやっけ?」
「そうそう、美香は負けないように頑張ってな」
「ぐぬぬ! 見とれよ。タカの心をグッとつかんだるさかいな。後で吠え面かくなよ!」
「あはは。がんばれ美香」
「凄い余裕や。あの聖が? いったい何があったらそうなんねん。うーん。もっと露出の多い服に着替えた方がええかな?」
美香は妙な焦りを感じるのだった。
「ふむ、こんなものか」
俺は結界外に五か所ある変哲もない岩の内部に書かれている魔法陣を変え結界を改良した。
高さを50m程に抑え、そのままだとあと300年ほどで寿命を迎えそうだった結界を後2000年は持つように強化した。
しかし、この魔法陣に使われている術式は賢者の知識にも、吸血鬼の知識にもない方式がたくさんあったぞ。
似た術式と言えば聖の使う陰陽の術式に近いような気もする。
ああ、そうか! この結界勇者協会深部を守る結界に似てる。
あの結界はここのより強かったので少々の奴では破れまい。
どっちにしても天才の仕事だな。
さて、ルーマニアに寄り道してしまったが、ルーマニアもよさそうだし観光したい。
だがひとまずはギリシャに行きますかね。
もう、俺以外は皆行ってるはずだ。
俺は聖達の居るホテルの部屋へ転移した。
次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。
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