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0140.キセラとダンジョン

 夕食後、キセラが一人でダンジョンに行こうとしていたので止める。


「一人では危ない! 俺も行くよ」

「フム、なぜ危なイ? あの先に反応が有った程度の魔物にはソレガシ負けないと思うガ?」


「あのダンジョンは取得魔力量が多いので急激な身体強化に耐えられず寝てしまう事があるんだ。ダンジョンの中で寝てしまう危険は分かるだろう?」

「なるほド、あの眠気はそのせいカ。流石のソレガシでも寝てしまえばやられてしまうナ」


 眠気を感じた経験はあるんだね。


「だから一人は危険なんだ。最低でも2人じゃないと。蒼天の剣なんか最初二人ともいっぺんに寝たんだからな」

「ソレガシ、ずっと一人でやって来たので分からなかっタ。仲間の優しさとは良いもんだナ。それではすまないがご同行を頼ム」


「アンも一緒ニャ」

「はっはっハ、それは心強イ。こういうのもいい物ダ」


 第四層に行き吹雪の中で戦う。


「これは探知の練習にもなるシ、臥竜山脈より弱いし数も出ル。しかし受け取れる魔力は桁違いに多いナ。これなら今までより遥か強くなれるゾ。はははハ」


 アイスウルフの大群と戦っている途中でキセラがくらくらし始めた。


「なるほどこれは眠イ。ここまで眠いのは初めてダ、ワクワクすル~~、ぐ~~」


 と寝始めた。

 いやあ早いな。


 俺とアンはキセラを抱えて撤退した。

 少し寝て目覚めたキセラは。


「あれで4階層だったナ。タカはどこまで潜っているんダ」

「俺は第五層を攻略中だ。まだ先は有りそうだ」


「フム、普通にやっていてもかなり強くなれそうでは有るナ。しかシ、陛下をお助けしたときはまだ大分弱かったのだろう? 進化はその第五層で?」

「そうだ、第五層には稀にとんでもなく魔力が大きい魔物が出るみたいなんだが、そいつを倒したら進化した」


「そうニャ。アンは一人でそれを倒したら死ぬところだったニャ。にいちゃんに助けてもらって、その時アンは眷属になれたニャ」


「なるほド、死の淵から助けるとなるト、とんでもない魔力を注ぎ込まれたはずだからナ。魔力を注ぎ込んで眷属にカ。フム、ソレガシの知る限り人には出来ぬナ。神か悪魔か? タカはもしかしテ、人種じゃなイ、のカ?」


「う~ん、よく分からないんだよね。吸血鬼に攫われて吸血蝙蝠になりきらなかったなりそこないって、何だと思う?」

「フム、ソレガシにも何かわからないナ。ダガ生きているなラ、吸血鬼ではないだろウ。真祖に似ているガ、真祖というわけでもなさそうだナ?」

「真祖を知っているのか?」


「ああ、山脈を越えた先まで行ったときにナ。吸血鬼の国を作っていたのが一人いたヨ。奴らは力を隠さないからよく分かっタ。心底化け物だったナ。まあ、他にも何人かいるようだガ、どれも化け物と聞いていル」


「真祖の眷属になろうとは思わなかったのかい? 強くなれるだろ」

「奴らの眷属だト? 冗談じゃなイ。いくら強くなれてもただの操り人形になるつもりはなイ。アンデッドにもナ。……アア、タカの眷属になってもいいと言った事カ?」


「そうだ」

「タカの眷属は確かにタカに従ってはいるが奴らとは違ウ。もっと自意識と自由があるように見えるからナ」


 そんなものなんだろうか?

 俺にはよく分からんな。

 俺は眷属を三人、奴隷を一人従え、ハーレムまで持つ禄でなしだからな。


「そんなことはどうでもいいだろウ。また第四層に早く行きたいゾ」

「わかった、行こう」


 真祖、真祖か? そう言えば吸血鬼の親玉としか知らないな。


『ガウ、真祖ってどんな存在なんだ?』

『真祖は、邪神、魔神、悪魔王などと並び称される者たちで、悪気の体を持つ生きた存在だビャ。陽光が苦手なのは吸血鬼と変わらないけど吸血はしないビャ。眷属になればすべからずアンデッドになるビャ』

『なるほど、ありがとう』


 第四層での戦いが始まるとキセラは一体魔物を倒すたびに一度引くという変則的な戦いを繰り返した。


「タカ、寝てしまいそうダ。連れて帰ってくレ」


 ふらふらと力なくキセラが体を預けてきたので受け止める。

 その肉感を感じただけで淫欲が起き上がって来る。


 この淫欲は時も場所も選ばないのだ。

 魅力的な女体ならいいらしい。


 いや若い男とはこんなものかもしれない。

 まるで野獣だな。

 こんな自分がとても情けなくなるよ。

 沸き立つ淫欲をグッと抑え抱きとめる。


「わっわかった」


 ベースへと連れ帰って見るとパタンと寝込む。


 さっ触ってもいいかな? 

 いや駄目だろう! 


 何を考えているんだ俺は。

 抑え込んだはずの淫欲が抑え込めてない? 


 あっアンの視線が痛い。


 キセラは少し寝て起きると言った。


「どのくらい戦えば眠くなるか解っタ。もう一人で大丈夫ダ。食事前に迎えに来てほしイ。どうしてもの時は念話を送ル」


『助けてとナ』


「だかラ、タカは5階層で戦ってほしイ」


 おっ念話か? 

 凄いな。


「こんな魔法あるんだね」


 魔力の流れも分かったよ。

 もう使えるはず。


「アア、父さんや母さんがドラゴンの姿をしているときに必要だったので覚えたのダ」


 なるほど、ドラゴンの魔法なんだね。

 便利だから皆で覚えるといいな。

 教えてみよう。


『キセラ聞こえるかい』

「おおッ! 念話をもう使えるのカ。流石はタカだナ。大体教えても皆、聞くことは出来ても話すことはできなかったのニ」


 なら大丈夫なのかな?

 まあ、キセラ程の実力者が此処まで言うんだ。余り否定も出来ないだろう。


「分かった気を付けるんだぞ」

「アア、任せておケ」


 それから俺とアンは第五層へと向かい魔物を倒すとする。

 アンに20式ライフルを渡し近距離で発生した魔物を任せるとし。


 俺は対物ライフルを取り出した。

 装甲車などを破壊するためのライフルだ。


 少し前に瑪瑙家から”長らく待たせたが満足の行く物を調達したつもりだ”との連絡と共にセミオートの対物ライフル”アキューラインターナショナル AS50”が送られてきたのだ。


 その射程は魔力の補正なしで2kmを越える。

 また、弾も大きいので、込められる魔力が全く違い、固まって飛んでいれば炎の鳥3羽くらいは軽く消滅できる。


 凄いよこの銃。

 気に入ったわー!

 

 アンと並んで、炎の鳥を撃っていると。


『タカ~、助けてくレ~』


 キセラの情けのない声が念話で届く。


『すぐ行く』


 俺達が慌てて駆けつけるとキセラは落とし穴に落ちて動けなくなっていた。

 とっさに剣山を手でつかんだものの、手の甲と太ももにぐっさりと刺さってしまったらしい。


 深い落とし穴の中でキセラは血をボタボタと垂れ流しながらも苦笑していた。


 まさか俺達を呼ばずに知らないダンジョンを歩いて帰るなんて思わなかったよ。


「ハ~、死ぬかと思っタ。いやア、痛くて集中できないから飛べなくテ」


 助け上げると膝から太ももにザックリ突き抜けた跡があるよ、他にも体中刺し傷がいっぱいだ。

 わー! 痛そうだ。

 魔法で回復させながら何故か聴いてみると。


「ソレガシ、お腹が空いてきたので何か食べさせてもらおうかト。タカたちは鍛えてるので邪魔したくなかったのダ」

「ダンジョンは危険なんだ。移動は慎重にしないと死ぬよ。構わないから俺を呼ぶんだ」

「ヨクわかっタ。これからはすまないがそうさせてもらウ」


 ほんとに大丈夫なんだろうか?

次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。

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