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0136.闘技会の行方

 色々あったこの武闘大会も決勝戦だ。


  パワフルなうえ技巧派のチュンと、たぶんだがシンディやマリーにも迫る魔力量を誇るキセラの試合が始まろうとしている。


 チュンは緑色の肌を持つ魔人族で、よく鍛えられた鋼の様な肉体を持ち、豊かな髭を蓄えた中年風の落ち着いた表情が印象的な大柄な男だ。


 対してキセラは長く曲がった角を2本持ち、黒いドラゴンの翼を背中に小さく畳んでいる。

 背中と腕と翼に黒い鱗を纏っていて、悪魔に見えない事もない風貌の少し薄い褐色の肌、青い髪をもち、顔は、口の小さいカエルを気持ち人に近づけたような感じの小柄な女だ。


「ふんっ、実況も試合を盛り上げようと必死だな。まあ、あの木戸氏の試合が控えているとは言えんようだ。あんなのを見ると、ばかばかしくなってくるなあ、おい、キセラよ」


「……」


「大体、協会でキセラ、お前の姿や話を聞いたこともない。どうやってそこまで強くなれた?」

「ソレガシは、臥龍山脈でドラゴンの魔物と闘い強くなっタ」

「なんだと、入ったら最後誰も帰ってこないと言われるあの山脈でか?」

「そうダ」

「くっくっく、世の中は広いねえ、お前と言い、木戸氏と言い。限界が見えねえ。面白くなってきやがったぜ」


「ヌシは、中々に強い、ソレガシの糧とさせてもらおウ」

「ほう、そんな簡単にやられる訳には行かんな!」


 ピンと緊張した空気が張り詰める。


「始め」

「魔力量が、強さの全てではないところを見せてやるぜ!」

「望むところダ」

「ちっ、ぬかせ」


 チュンの怒涛の剣技がさく裂し、さしものキセラも完全に流せてはいない。


「ほう、見るべきものが有るナ。しかし」


 ヒュンヒュンとキセラも連撃を見せる。

 そう言えばキセラの今までの試合は皆一閃で決まっていたな。連撃を見せるのは初めてだ。


「くっ、はええ」


 チュンは素早いバックステップでその連撃を躱した。


「ほう、よく躱しタ」

「はっ、はっ、それはどうも、炎剣」


 剣身が魔法の光で数倍の長さになる。

 名前からして本当は炎を剣に纏わせる魔法技なんだろう。

 が、今は大会なので非殺傷な光だけになっている。


「うりゃぁ、これでどうだ?」


 その長い剣身で先ほどの様な剣技をふるう。キセラは横に少し動いて避ける。

 しかし、上から切り下げられる剣筋が真横に変わった。


「くっ」


 しかし、キセラは大きく体を後ろに曲げ、その剣を躱すが、その剣筋が下へと再度変わった。


「もらった」


 これは避けられない、そう思ったが、キセラはその状態から横に転がり剣を避けた。


「むうっ」


 剣がキセラが転がる方向にまた向きを変えるが、キセラはどうやってか飛び起きチュンに急接近し、剣を上から下に降りぬいた。


 ブー


「キセラの勝ち」


 チュンはがっくりと肩を落とすのだった。


「えっと、アダさん、余りの速さに実況が追いつきませんでしたが、どうなったのでしょうか?」


「あまり見る事が有りませんが、チュン氏の必殺剣で自在剣を使ったと思われます。ですがキセラ氏は地面に転がるという窮地から翼の力で起き上がり、大技で隙のできたチュン氏を切り裂いた。様ですね。龍魔人の特性を生かした素晴らしい反撃です」


「なるほどあの一瞬にそんな攻防が! では、スローで見て見ましょう」


 おおすげえ二人とも強いな。


「マサカ、こんな苦戦をするとはナ」

「いや、俺に勝ったんだ。誇っていいぜ。次のエキシビション負けるんじゃねえぜ」

「まったク、無茶を言ってくれるナ」

「くくくっ、ちげえねえ、わっはっはっは」


 さて、俺の相手はキセラか、ぞくぞくしてくるぜ。


 それから1位から3位までに記念品と賞金の授与式が行われ、エキシビションマッチが始まる。


「さあ、地方予選から言うと2か月、長かったこの大会もこのエキシビションマッチで最後です。前年度チュンピオンを難なく退け、まだまだその実力を見せきれない強さを持つ優勝者キセラ氏。相対するは、元主力の猛攻を苦ともしない、国王を救いし英雄、多属性異世界人、木戸氏。彼の実力も全く測れません」


「そうですね、魔力量で言えば木戸氏のそれは破格で、しかし、対するキセラ氏もその実力は隠したままなのではないかと思われます。いい試合になるでしょうねこれは」


「うおおおおっ!」


「おっと、キセラ氏。その魔力の隠蔽を解いた。凄い、凄いこれは、凄い魔力だ」


「おおっ、まさかこれほどの魔力の持ち主とは。これは、蒼天の剣のお二方に勝るとも劣らないほどです。人類最強の域。まさかこれ程の人材が在野にいるとは……長生きはしてみるもんですねえ」

「さあそろそろ世紀の一戦が始まります」


 歓声が嵐のように鳴り響く広い闘技場で俺はキセラと向かい合っていた。


「キセラ、優勝おめでとう」

「フフフ、ありがとう、と言っておくヨ」


 実際に向き合うと物静かに見えるキセラは、その闘志が燃え上がって強いプレッシャーを俺に向けてはなっている。


『何という殺気をタカ様に向ける、この女は!』

『いや、試合だからそれは仕方ないんだよ』

『そうですか、分かりました。しかし、十分にお気を付けください』

『ふむ』


 しんっ、先ほどまでの喧騒が嘘のように静まる。


「始め」

「うおおおおっ」


 キセラが開始早々魔力を全開にし突進してくる。

 今まで受けに終始していたキセラが攻めを見せたのだ。


 その気迫に押され俺は守備一辺倒になっていた。


 ヒュンヒュン! 


 シンディとさほど変わらぬ剣速の正確な連撃が俺をかすめ、俺が避けるための空間を徐々に無くしてゆく。


 くっ! 


 ギャイーン! 


 とうとう避け得ない攻撃が迫り剣で受け止めた。


 俺は魔力による身体強化のギアを一段上げる。すると体が魔力の強化に耐えきれずギリリと痛み始めた。


 体中の関節がぶっ壊れそうだ! 

 基人の体は進化していても物理的には超人種や鬼人種に及ばないのかもしれない。


 しかし、その痛みに耐えれば今まで捉えきれなかった剣の動きがはっきりと追え、キセラの剣筋に軽く剣を合わせる事が可能になった。


 やるな! キセラ! 


 ここまでするのはシンディとの模擬戦以来だ。

 再生力で壊れはしないが、痛い! 辛い! 


 待てよ! もしかしたら俺の強化の仕方が雑なだけかもしれない。

 そう考えた俺はキセラ内の魔力の動きを探知しまねて行く事で体の負担を抑える事に成功した。


 これなら今まで以上に動ける! 


 キセラも負けじと連撃の速度を上げていく。


 シャイーン


 チャリーン


 ビシュー


 痛みをあまり感じなくなって余裕のできた俺はキセラの剣戟を難なく受け流す。

 キセラのパワーはシンディに劣りはしないが。

 技の切れはシンディのが上だな。


 シンディいったい幾つなんだあの人は? 

 見た目だと同い年位にしか見えない。


「ここダ!」


 最接近したキセラがビームに似た魔法を放つが、それも魔力の流れを読んでいた俺は剣を斜めに当てる事で後ろに流す。


「!」


 そして、そのまま一閃。

 キセラの胴を横に切り裂いた。


 ブー


「木戸の勝ち」


 ウワァ~-! 


 緊張で静まり返っていた会場に歓声が戻って来た。


「ソレガシの負けダ。ここまで実力差が有るとワ」

「いい戦いだった」


 俺は握手の為手を差し出す。

 しかし、キセラはその場に正座し三つ指をついて頭を下げ。


「木戸氏、ソレガシヲ! 弟子にしていただきたイ!」


 ええ~なんだって~!

次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。

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