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0009.調子に乗ると体調不良

 早めに始まった夕食では妹が熱い視線を送ってき始めたので、冷や汗が流れて余計に気疲れした。

 ああなんて迂闊な俺。


 だが無視するわけにもいかず。

 俺が微笑んだら妹はジューと音がしそうなくらい真っ赤になった。

 調子に乗るからこんな事に。

 まいったな。


 その様子を母さんが物珍しそうに眺めて、にやにやしていたのが余計に胸に刺さる。

 ちなみに父さんは全く気付かないようだった。


 もう日課になっている日を浴びて再生すると疲れがどっと強くなり、非常につらい。

 バイトの時間だが結構しんどいな。

 休みたい。


 バイトはもっと後から始めればよかったかな。

 ダンジョンがこんなに負担が高いとはな。


 まあ、バイトを決めた時には、ダンジョンの存在自体知らなかった訳なんだから仕方ないことなんだが、もっと慎重になればよかったかなと後悔する。


 なんとかコンビニまでたどり着き仕事を始めた。

 探知を使って万引きの防止に努めると更にきつくなり頭がくらくらとしてくる。


 これはいったいどうなったんだ。

 体が熱を持ってる。

 風邪でも引いたのか? 吸血鬼? になってあまりにも体調が良かったので無理したのがダメだったのか? 本能が寝ろと訴えてくる。


 何かも足りない、いったい何が足りない?


「木戸君大丈夫かい顔色が悪いよ」


 赤坂さんも心配そうだ。


「いや大丈夫ですよ?」


 本当に大丈夫なのだろうか。


「少し休憩してきなよ」

「分かりました少し行ってきます」


 そう言って10分ほど休憩すると少しマシになったので仕事に戻った。


 後1時間、後30分、段々きつくなるのに耐えながら仕事を頑張るが、もう少しのところで目が回り始め、いや頑張れ俺と自分へのエールも虚しくレジカウンター内で倒れてしまった。


 俺は浅い眠りの中、遠くに響く救急車のサイレンを聞いていた。


「おに・・ちゃ・・、お兄ち・・、お兄ちゃん」


 妹の泣声が聞こえる、泣声なんて聞くのはいつ以来だろうか。

 段々と意識がハッキリしてくる。


 おやっ? 妹が寝ている俺に縋り付いて泣いている。

 あれっ、俺って死んでる? いや、死んでたまるか。


「おやっ、杏子どうしたんだ、泣いているのか」

「お兄ちゃん仕事中に倒れたのよ! 覚えて無いの?」


 ああ、そうかそうだったな。


「心配かけたようだな、ごめんな」

「ううん、いいのお兄ちゃんが無事なら」

「コンビニの方はどうなったんだろう」


「まったく、お兄ちゃんときたら起きてすぐ仕事の心配? クスッ、真面目なんだから」

「いや、すまん」

「お兄ちゃんはね、過労だって。働き過ぎなのよ、コンビニにはお父さんとお母さんが挨拶に行ったわ。だから気にしなくてもいいの」

「ありがと、分かったよ。で、いつまで縋り付いているんだ?」


 うすい、掛布の上から腰に縋り付いているので、足辺りに妹の胸を感じてしまい、深層に抑え込んでいたはずの欲望が噴き出してくるぞ。


「私が落ち着くまでよ、悪い?」

「いや悪くないよ」

「うん」


 妹は、凄く安らいだような泣き濡れた顔で薄く微笑みを浮かべた。

 俺はといえば欲望に支配されないように円周率を永遠と思い出し続ける羽目になった。


 またぐっと眠くなってきた。


「うん、ありがとう、なにかまだ眠い。すまないが寝るな」

「いいよ、ゆっくりね、おやすみ、お兄ちゃん」


 俺はそのまま眠りに落ちていった。


 次に目が覚めたら朝だった。

 しかし、なんで倒れたんだろう。


 白く清潔な病室には日が射しこんでいて、とてもリラックスできる。

 偶にはこうしてゆっくり休むのもいいな。

 今の体の調子はすこぶる元気だ。


 ふと気づく、さんさんと日差しが病室の窓から俺に向かって降り注でいることに。

 ガバッと体を起こし周りを確認するとカーテンが全開だ。

 だが体が痛くない。


 やった陽光への耐性が付いてる。

 喜びにガッツポーズを決めていると。


「誰がカーテンを開けたの? 患者さんが眠れないじゃない!」


 看護士が不機嫌さ全開にして病室に入りってきて、シャッとカーテンを閉めた。


「あら、あなた目が覚めているのね。あなたがこのカーテンを開けたの?」


 こちらを見ながら聞くので。


「いえ、俺は今目覚めたばかりで知りません」

「そうよねえ、するとあの看護師の職業研修に来てる高校生か、注意しなくちゃ……騒がせてごめんね、あなたお加減はいかが?」

「はい、調子が良さそうです」

「それはよかったですね、後で先生と回診にきます。元気だからと言って動き回らないようにね」


 びしっとそう言って看護師さんは去っていった。

 怖い看護師さんだなーと思いながら寝ていると。


 バンッ大きな音を立てて開いたドアから一人の看護師さんが入って来た。


「アンタね、婦長さんにアタイの事言いつけたのは!」


 何の事だ? それにこいつそれって患者にいう事か?

 髪を金髪に染めてる若そうな看護師は続けて捲し立てる。


「アンタのせいでアタイの評価が悪くなったらどうしてくれんのよ!」


 鬱陶しいなこいつ、そんなだから婦長さんに目を付けられるんだよ、答えるのも億劫だ。

 自業自得だ俺のせいじゃないぞ!


 無視して、その看護師を観察する。

 怒りで歪んでいてもまだきれいだと分かる美人で、大きないいケツとバランスの取れたいいチチをしているな。

 こんな煩そうな性格じゃ無かったらいい女なのに。


「ねえ、なに、黙ってるのよ何とか言ったらどう!」


 うるさい静かにしろ病院だぞ!

 むかつくな、これでも食らえ。

 俺は1/2に出力調整した魅了を一瞬、看護師に掛けてやった。


 ボっと赤くなった金髪看護師は


「ああアンタねえ!? えっと……」


 あれ様子がおかしいこんなに効くはずはないのに、ちょっと気勢がそがれる程度のはずだ。

 無駄と思いつつも、探知をかけて調べたら。

 軽度魅了の状態異常ありと何と無く分かった、おやっ何故分かる?


「とにかく、婦長さんに何も言うんじゃないよ。あっアタイ、アタイは別にアンタの事なんか何とも思ってないんだからね」


 と言い残し病室を出ていった。

 なんで俺がそう思うと思ったのだろうか、感がいいのかな? 

 そして、ツンデレかっと心の中で突っ込むと、俺、何も喋って無い事に気づき苦笑した。


 しかし何であんなに効いたんだ。

 明らかにおかしいだろ。


 調整せず掛けても、あの状態になるには20~30秒は掛け続けないと駄目なはずだろ。

 それがわずか1秒満たない間で、ああなるなんて、これは計算外だ。

 おかしい、色々と検証し直さないと。


 まずは探知からだな。


「回診です」


 と病室のドアが開いた。

 優しく笑いかけながら気弱そうな先生が


「おはようございます、お加減はいかがかな」


 低くて落ち着いた優しい声を掛けられたので、俺は体を起こして、先生に答えた。


「はい、元気になったみたいです」

「ふむ、それでは診てみましょう。はいお腹を出して」


 聴診器でお腹の様子を診始めたので、俺は先生に探知を掛けてみた。

 軽度腰痛、軽度疲労、軽度老眼等の状態異常あり。


 おお、すごい。

 凄い進化だ探知君。


 なんだか治せそうな気がする。

 なるほど俺は治癒魔法も使えるのか? 


 なんだか吸血鬼に合わない能力だな。

 こそっと腰痛を治してみるか。


 探知で分かる患部を意識し頭の中で治癒魔法を発動してみる。

 歪んですり減っている腰の軟骨がみるみるうちに正常な大きさと形へ整っていく。


「先生、腰大丈夫ですか?」


 と言ったら


「おや、そんな話しましたかね」


 おっと不味い。


「先ほど腰を摩られていたので、そうかなっと思って」

「ははは、そんなに痛そうだったかね、それ程痛くは無いんだがね。これでは逆だね~」


 と笑って腰を捻って見せる。


「おや、なんだか痛くないぞ? あはは、君のお蔭かな」

「えっ俺ってすごいな」

「あはは冗談だよ。しかしもう何ともないな? 不思議だね~はははは」


 と笑ってすませてくれた。


 よし、成功だ。どうやら患部が持つの回復力を魔力でブーストするようだ。

 魔力の使用量によっては欠損部位の再生すら出来そうである。


 では婦長さんはっと。

 軽度更年期障害の状態異常発生中、なるほど機嫌悪そうなはずだね。


 異常状態が簡単な感じで認識できるようだ。

 俺、医者になれるかな。


 な~んてね。

 なれても怪しい心霊医師だな。

 止めておこう。


 まあ世話になったお礼に看護師さんの状態異常も治癒しておく。


 よしたぶん出来たが、これはこの世界ではちょっとチートがすぎるな。

 バレると大変な目に遭いそうなのでこれ以上は自重しておこう。

 まあ家族や親しい者には遠慮なく使うけども。


「ふむ、どうやら回復しているようだね。これは退院だね、午後誰かに迎えに来てもらいなさい。もう無理はせず疲れたら休むようにしなさい」

「はい、ありがとうございます。母に電話してみます」

次話 00時 更新予定 

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