0132.闘技会始まる
「さあ、5年に一度のお祭り、ゲレナンド王国主催、総合闘技会本戦がやってきました。今年は何と! 異世界で陛下を助けていただき、今や時の人となっている。そう、みんな大好き多属性異界人! 木戸貴志氏! が特別参加すると言うビッグな話題とともに観客が例年に増して訪れ、20万人収容可能なこの、巨大な国立闘技場も入れ替え制になってしまった史上に残る大会です!」
俺達は入場ゲートに並んで開会式が始まるのを待っている所だ。
会場内に大きな声で実況が流れている。
しかし、多属性異界人って。
「そうですねえ、新聞の記事では三次戦力相当と言われる彼が、冒険者ギルドで言うAまたはS級でほぼ二次戦力級の参加者とどの位戦ってくれるのか、非常に楽しみな所ですねえ。彼の試合を見られる時間のチケットは高騰しとんでもない値段になったとも聞きますね。まあ、異界人がこういった大会に出る事は非常にまれですし、人気が出るのもうなずけますね」
うわ~、会場大きいな。
東京ドームの比じゃないぞこれ。
あんな遠くから見えるのかと聞いたところ、自動の望遠魔法が観客席に掛かっているので問題ないとの事だった。
すげー、オーロ〇ビジョ〇なんかより遥かに凄いな。
会場の外にも映像を映す魔法で入り切れない人々も見ていると言うし。
雲一つない、かなりの高度の上空にも超巨大な映像が四面あり、かなり遠くからも見えるようになっている。
まあ、ラジオやTVなどの電波放送という概念はなさそうだんだけど。
「まずは開会式の後、木戸氏と王国騎士団長とのエキシビジョンマッチです。解説のアダさん。どんな展開になるでしょうか?」
「騎士団長は世界でもそうはいない主力クラスです。普通に考えると三次戦力相当の彼がまともな勝負は出来ないと言えるでしょう。しかし、最新の情報によるとですね。彼は相当な実力アップをされていて、蒼天の剣とも特訓したと聞いています。良い試合になるかもしれませんよ」
「なるほど、なるほど、人類最強との呼び声も高い蒼天の剣ですか。あっ今選手団の入場が始まりました。まず、先頭は前回の優勝者チュン氏。その後ろに木戸氏。おっとその横に控え付き添っているのは? 一見獣人の女性に見える、ですがその頭に輝く天使の輪。アダさん?」
「あの子が木戸氏が眷属にしたと言う小悪魔ですね。進化してすっかり姿が変わっているとも聞きましたが。あれだと天使にしか見えませんね~」
「その後ろに、各地で行われた予選を勝ち残った勇姿が続きます」
すごい観客の数だ!
圧倒されるなー。
でもやる気もふつふつと出てくるぞ。
「早く進めよ、この愚図が!」
「あっ、すみません」
ボーっと周りを見ていたら、後ろの人に怒られちゃったよ。
しっかり進まないとな。
「たかが三次戦力手前風情がこの大会に出てくるなんぞおこがましい」
「はっはっは、そう言ってやるな、その坊ちゃんは、偶然陛下を助けただけの奴なんだから」
「へっ天使だか、悪魔だか知らんが神聖な闘技場に女を連れ込みやがっていいご身分なことだな」
「おいジンとやラ、女がいると不味いのカ? それはソレガシに言っているのカ?」
「ふん、キセラか。龍魔人族がエラそうに。お前みたいな種族がいるから、俺らが悪魔だと間違えられるんだよ。お前なんぞ瞬殺してやるぜ」
「なんだト。この下郎ウ」
「そこっ、うるさいぞ。陛下の御前である。静粛に」
「おっと、怒られたぜ」
なんだ、俺はハムのコネで無理やり出たと思われているのか。
逆に無理やり出されたに近いんだが。
まあ、楽しんではいるけど。
飛び入り参加の俺が気に入らないのも分からないではない。
おっとガウの表情が険しい。
『ガウ、そんなに怒るな、言わせておけばいいんだよ』
『分かりましたビャ』
「(俺に当たったら、偶然を装ってぶっ殺してやる)」
おいおい、こんな奴いるのか?
それはやばいぞ!
手加減出来なかったらどうしよう。
「陛下の開会の儀も滞りなく終わり。会場はエキシビジョンマッチの準備に入ります。開始まで少々お待ちください」
ハムは貴賓席に戻りニタニタとタカのいる方向眺めているマーロウ王子に嘆息しながらも声をかけてみた。
「のう、マーロウ。あそこに眷属化した元小悪魔が見えるじゃろ。彼は詐欺師ではないぞ」
「親父、珍しい獣人に魔法を掛けているだけだと気づけないとは耄碌したな」
「また、そんな事を……」
ハムは難しい顔で黙り込み。一緒に貴賓席にいるシンディとマリーはあきれ顔だ。
さて、体を温めておこう。
俺の為に特別に用意されている控室に入り体を動かしていると。
「タカ殿」
「なんだいガウ」
「この会場内で魔力の隠ぺいを止めれば、妙な奴も変な考えを捨てるかもビャ。結界もしっかりしているから会場外に影響を及ぼす心配もないビャ」
「なるほど、では出る時にはそうしよう」
そうか、俺の魔力が分からないからいろいろ疑ってくるわけね。
本当に優秀ならそれを隠している能力に気づきなんとなく実力がわかるんだが。
蒼天の剣の二人やハムみたいに。
「タカ様、出番ですこちらにどうぞ」
「はあい」
案内の方に付いて行き、会場に入ると、俺は、隠蔽の結界を解いた。
どんっ!
隠ぺいを解かれた魔力が、一気に広がり可視化しているのかと誤認しそうなほどの圧縮された魔力が爆発の様に大気を揺らす。
「うわあ!」
「ひええ!」
傍にいた大会役員から悲鳴にも似た声が漏れ撥ね飛ばされる。
その膨大な、人ではとてもたどり着けないと思える程の濃厚な魔力が周りに溢れていく。
腰を抜かしながらもへっぴり腰で立ち上がった係員が頑張って仕事をした。
「えっ、ひええ。あっあちらの中央へ」
俺は中央へ向かってゆっくりと歩いていく。
そこには騎士団長が悠然と待っている。
参加選手たちは闘技場に隣接する一般用控室でその様子を見てしまった。
「なっなんだあれは? あれが、さっきと同じ人物なのか?」
「こっこれほどの魔力を隠していたなんて! すごい魔法制御力だ」
「ばっばかな! あんな奴に勝てるわけないだろ! どんな化け物なんだ!」
「異界人、凄まじいな。陛下の報告は嘘だったのかな。良い意味でな」
「(いや、陛下は優秀なお方に見えル。それから強くなったと言っていタ。こんなに強くなれる方法があるのなラ……)」
「なっなんだあれは、親父?」
マーロウ王子は座っていた椅子から転げ落ち震えながらハムに懇願するように尋ねた。
「あっああ、見た通りタカが隠ぺい魔法を解いた様じゃな。(しかし、予想を上回る力じゃな。ここまで強くなっていようとは! 知りたいの。研究したいの)」
「ばっ化け物だー! だれぞ討伐を!」
マーロウ王子はプチパニックを起こし泣きながら騒ぐ。
「やれやれ」
ハムは周り手を振りマーロウ王子が出した命令を取り消すと暴れるマローの肩を押さえ顔を近づけ静かに諭した。
「これ、何を血迷った事を。あれに見えるは人じゃ。しかも吾輩を助けてくれた恩人じゃ。吾輩の言う事もこれで信じられただろう」
王子は震えながら、コクンコクンとうなずくだけだった。
「(ふむ、この様子であれば洗脳は解けるかの。あとは、誰が? かの)」
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