0008.ダンジョンの探索
ダンジョン内からはなぜか転移で部屋に帰れないので、元の洞窟へ出てそこから帰ってきた。
洞窟に戻ったとたんダンジョンの形状などの探知がなんとなく広い空間くらいしか分からなくなり、ちょっと離れるとその空間すら探知できない。
ダンジョンの秘匿性能が凄い。
ダンジョンがちゃんとある事が分かっていて、そこに探知の力を一点に集めても全く存在が分からなくなる。
これではフレッド程の力でも広範囲探知では見ようとしても見えていたかどうかだな。
日光浴をこなして、夕食で妹の魅了され具合の様子を見る。
じっと見つめてやるとぽわぽわしだし、落ち着きがなくなっていった。
これは、魅了効果まだ続いているな。
早く何とかしないと。
焦っても仕方がないと自分に言い聞かせて落ち着きを取り戻した。
そろそろバイトの時間だ。
そう言えば日光浴だが痛いは痛いのだが、かなり楽になって来て5分くらいは日に当たる事が可能になって来た。
再生速度も速くなってきている。
ふふふ、もう少しだ、夏休み終わりまでには耐性を獲得してやる。
コンビニに今日は麻生さんは来てなくて赤坂さんだった。
残念なような、よかったような、どちらともいえない感覚だ。
しかし魅了は問題が大きくてヤバイので、今日から探知の練習だけすることに決めた。
探知しているとお客さんが何をしようとしているかが良く解る。
あれこれ悩んでくそっ高いなと諦める人、ああ、有って良かったと安心する人、千差万別である。
特に分かって良かったのは万引きしようとする輩で、その兆候が面白い、ゆっくりと周りを伺いながら入ってくる。
盗る商品を見定めて寄っていき、きょろきょろしてスッと手を伸ばそうとする。
俺には入ってくる時に彼らの悪意の様な興奮がなんとなくわかるので、きょろきょろし始める頃には傍にいて、手を伸ばすなと分かれば。
「ちょっとごめんなさいね」
と声を出し後ろを通る。
それで皆諦めて帰っていく。
「ちぃっ!」
とか言うなよ万引きしようとするお前が悪いだろ。
相手が団体さんの場合は台車を押しながらやってやる。
お客さんの姿が店内から見えなくなると、赤坂さんが突如興奮しながら話し出した。
「お前よく分かるな~すげえや。俺なんか木戸君が万引き防止にお客さんの後ろに回り込んでから、何でお客さんの後ろに立ってるんだ? と思うよ。よく見ると、プルプル震えてたり、キョロキョロしていたり、オドオドしていたりとか、やっとそのお客さんの挙動不審な態度に気づくんだよな」
とレジカウンターから万引き阻止を何度か見た、赤坂さん(男、大学生)の好感度が上がったようだった。
「いや~偶然ですよ」
「そんな訳あるかっ! はっはっはっ、これが又、万引きを防がれてから慌てて店から出ていく姿が凄く面白くってサイコー。笑いをこらえるのが大変だよ。ナイスジョブ。くっくっく」
赤坂さんは俺に向かって親指をグッと立てた。まあ、確かに俺も面白い。
これからも積極的に万引きを防いでいこう。
「ふむ」
突然赤坂さんはまじめな顔で言う。
「店の万引きによる損失が少なくなれば、俺達の時給アップとかあるかなあ?」
「いやーそれは分からないっす」
「そりゃそっか、あっははは」
赤坂さんは明るい人だなあ。
などと軽口を叩いている間に。
バイトは終わり、お楽しみのダンジョン入りだ。
なんとなく疲れを感じていたが、昼食まで休憩を取ったら少し元気が出てきた。
準備を整えさあ出発だ。
ダンジョン内からは直接は帰れないので、安全を考えてまずは片道1時間で転進できるようにアラームをセットしダンジョンに侵入した。
もちろん探知は全開である。
探知したので分かるがめちゃくちゃ広い、東京ドーム何個分かは分からないが、1個ってことはないだろう。
木などがまばらに生える荒れ地と岩場と言った感じだ。
天井はそれほど高くなく緩く輝いて、ダンジョン内を照らしている
暗視が出来る俺の目には明るさはさほど関係ないが、この明るさなら普通の人が見えなくて困ることはないだろう。
他に出口はないか探知してみると俺の探知範囲は思うより広くなっていて。
2か所ほど別の通路の様なものが結構遠くにある事がわかる。
試しにダンジョンの壁を軍用ナイフで引掻いてみたが、掠り傷すら付ける事が出来ない、突くとキーンと金属を突いたような音がした。
とても堅そうだ。
触ってみると意外とツルツルしていて岩の様な見栄えからは想像のできない触感だった。
探知には数百体の動体が反応する。
探知を絞り詳しく調べ、最も近くで周りに他の動体が近くに居ない上に小さくて動きも遅い動体を目指して進んでいく。
ふふふ、ダンジョン内の動体なら怪物だろう。
人がこんな所にこんなに沢山いるとは思えない。
大きさも動き方も個々皆違っていて、2m以上もありそうな奴までいる。
あんなのには近づけないな。
歩きにくい岩場を進み、近くまで行くとネバーとした半透明の生き物がのたーと動いている。
なるほど、これが俗にいうスライムだな、本当にいるもんなんだなー。
感慨に浸りながら詳細に探知すると、いわゆるスライムの中心核が分かった。
本当に動きが鈍いので近くまで行き観察していると、こちらを認識したのか果敢にも向かってくる。
シューと触手のように伸びてくるが遅いので避けるのは簡単だ、当たった木や草はジューと溶けていく。
敵意満々だなこいつは。
まあ不用意に近づいた俺も悪いのだが、この位ならGを退治するのと変わらんな気持ち悪いし。
などと余裕を見せていると、ぴゅっ、何か液体が飛んできて肩に掛かる。
「ギャー熱い!」
ジューと体が焼け溶ける。
陽光とはまた違う痛みに少しのたうつが、シューと言う音とともにあっという間に痛みが引いていった。
肩がなくなる勢いで溶けていたけど、陽光よりも治りが速いな。
なるほど陽光は弱点だものね。
衣服までも補修したこの能力、実は俺の能力の中で最もチートじゃないか。
納得いったり、いかなかったりであれだが。
ところで、こいつには悪いが俺の力の為に犠牲になれ。
グサッ、軍用ナイフを核に向かって差し込むと体液が散り、俺の体に当たった所があちこちが焼ける。
スライムはジューッと周りを溶かしながら自らも溶けていった。
「ふうっ」
こいつどんくさそうな見た目よりはるかに強いな。
そしてスライムの死と同時に何かの力が自分に入っていくのを感じる。
これが俗にいう魔力かな、どうやらこれを繰り返せば強くなれそうな気がする。
同じように動く奴らの所へ移動しスライムばかり3体程倒したところでアラームが鳴る。
よし今日はこれ位だな。
帰る途中、動かない奴がいたので寄ってみると、蛇が蜷局を巻いていて飛びかかって来た。
「うわっ」
叫びながら突き出した軍用ナイフが偶然にも蛇に刺さり事なきを得た。
「ひえー! びっくりしたなー!」
落ちた蛇は地中に帰るように泡になって消えていった。
びびったースライムだと思って油断したなー。
あの蛇も怪物と言うか魔物だったのね。
魔物の方が怪物より呼び方がしっくりくるな。
死体など残さずに全て溶けて消えたし。
異世界だし。
ダンジョンだし。
いや、まてよ。
何か黒く輝く石みたいなものが残ってるな。
何か綺麗っぽいから拾っておこう。
価値が有るかもしれない。
バイトが済んだら次、又こよう。
いやなんだかひどく寝むたいな。
次は寝るぞ。
俺はアンデッドじゃないのだから、ずっとは働き続けられないのだろう。
精神的にも疲れるよ。
いや笑い事ではなく本当にだるい。
部屋に戻ろう。
寝る時間は無くとも少しは休憩は出来る。
俺はダンジョンの異常な雰囲気が怖くて探知を目いっぱい使い、分かる動体をしっかり距離をとって避けながら、ダンジョンの出口に向かって走った。
次話 22時 更新予定
もし、楽しんで頂けたなら。
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、面白くなかったら星1つ、教えていただくと指標になります!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。