0121.主力地球へ
次の日、警備事務所に報酬をもらおうと、アンスラルドに転移する。
いつものアンスラルドの風景だな。
ちゃんとついたなと安心した瞬間だった。
「!」
目の前にシンディさんの顔のどアップが現れる。
どうやらすぐに蒼天の剣の二人が俺を見つけたらしく目の前に転移して来た。
いくらシンディさんが美人でもすげえビックリした!
心臓止まるかと思ったよ。
「よう、タカ、遅くなったが、報酬を持ってきたぞ」
「この位で、ビックリしていてはあきまへんなしね。気が抜けてる証拠なましよ」
「ああ、どうもありがとうございます。シンディさん、マリーさん」
「タカ、さん付けなんぞ、他人行儀だぞ、シンディでいいさ」
「そうなまし、あちしも、マリーでいいなまし」
えっと、いいのだろうか?
仮にも二人はこの世界の英雄だろう?
とも思ったが異世界人の俺には関係ないね!
友達ならそれでもいいだろうと思い。
「分かりました。シンディ、マリーよろしくね」
「おっと忘れる前にこれ」
と言って中金貨4枚を俺に渡した。
「それが報酬さ一人一枚、ちょっと、渋い額ですまないが、勘弁してくれ」
4百万円相当の金額が妥当かどうかよく分からないが、貰える物はもらっておこう。
彼女らも戦い魔物達を排除したのだから権利があるのだ。
きっと嫌がるだろうが無理にでも貰ってもらおう。
こっちの世界での買い物も楽しいんで貰わなくっちゃね。
彼女達はストイックすぎるよ本当に。
などと当たり前な事を思った。
「で、タカ。どこに行くんだ?」
「それは、この前の祭りの時に……」
俺は鳥人の二人を保護したいきさつを二人に話す。
「と言う事で、警備事務所に行くんだ」
「なるほどなあ。確かに彼らは分かりづらいが、ちゃんと見ればわかるはずだ。もしかすると分かっていてやった可能性が有るな」
「ひどい話なしけど。まあ、今から証拠をそろえ立件するのは無理なましね」
「そうだな、悔しいな」
そう話をしながら、警備事務所に向かって歩いているが、二人もずっとついてくる。
「ああ、俺、警備事務所に行くんで、それじゃあ」
「いいよ、その位付いて行くぞ。休みになったんで暇なんだ」
「はあ」
「はあじゃねーよ! お前もしかして忘れてるのか? 休みになったら世話になるって約束だろ!」
「そうなましよ。タカはん、ゲレナンドへ行く言うたかて、タカはんは異世界の人なましに勝手がわかりまへんでしょ。あちしらがアシストするなしよ」
それは、非常に助かる。
超豪華アシストだ。
するとこのまま日本へ来るつもりなんだな。
また、女性が増えてしまったな。
両親にどう説明したものか。とりあえずケイに伝えて食事等の手配をしてもらう。
警備事務所の前まで来ると、騎士はじろっと俺の顔を見るなり血相を変えてあちらから声を掛けてきた。
「あなたは、昨日来られた方ですね。準備が出来ています。昨日の部屋へどうぞ。んっ、後ろの方は知り合いですかって? 蒼天の剣のお二人! しっ失礼いたしました!」
「いいよ、そんなに緊張しなくても。今は非番でタカに付いて来ただけなんだから。なあ、タカ」
「そ、そうですよねマリー」
「そうなましに、気にせんといてなまし」
「は、はあ。分かりました。あちらへどうぞ」
何か納得できない顔で彼は入り口の方へ手を向けた。
「やあ、タカさんようこそ、準備できてますよ」
担当者の彼はそう言いながらこちらを見た。
「えっと、後ろの方は? 見覚えが有るような。……ええっ! 蒼天の剣!」
「ただの、付き添いだ。気にするな」
「そうなまし」
担当者の彼がちょいちょいと俺を呼ぶので近づくと。
「(タカさんって、本当に蒼天の剣の方々とお知り合いだったんですか?)」
「ええ、紋章見せたでしょう」
「(なら、そう言ってもらわないと、……)。えっと、その、少ないですがこれで許してください。これが一般の規定料金なんです!」
彼はそう言って小金貨5枚と小銀貨5枚を差し出した。
「小金貨が飛竜便普通席代で小銀貨が給与です。今更変更できません。これでよしなに」
深々と頭を下げたのだった。
それはきっと、重要人物用に特別規定料金が有って、タカの態度からさほど偉くはないのかなと思った担当者は適用しなかった。
だがその為に、一般市民の規定額を準備してしまったので、彼は平伏してしまったのだった。
まあ確かに偉くはない。
「はっはっは、面白かったな、あの慌てよう」
「シンディはん、悪趣味なしよ」
「いい加減な仕事をするからああなるんだ! 本来あいつらの仕事だろ! 鳥人族を元の国に帰すのは」
シンディさんは鋭くて厳しいな。
「その上、こんな贅沢そうな装備の、しかも俺達の紋章を持っているのに、せこい真似を考えるからだろ! 笑って何が悪い」
「まあそうなましな」
なるほどな。
自分たちが軽んぜられた事に怒ってもいたんだな。
「でタカ、そろそろ君たちの世界に連れて行ってもらえるだろうか?」
そうだな、どこに移動しようかな?
やはり俺の部屋がいいかな?
外も見られるしな。
「じゃあ、手を出してください」
「いいとも」
「あいなし」
手を重ねると俺は部屋へ転移した。
「あっ、靴は脱いでね」
「おおっ、今のが次元転移か。普通の転移とは違う気がするな、マリーは2回目だろ。何かわかったか?」
靴を脱ぎながら、シンディさんは言った。
「そうなましなあ、存在の有り方をずらした感じなましな。魔力化とはまた方向が違うなしなあ。あちし達には無理かもしれないなしなあ。でも、吸血鬼にこれが出来るとなると防衛はもっと考え直さなあかんなしなあ」
「ふむ、おおむね俺も同意だ。しかし、これは前もって詳しい座標が分からんと無理っぽいな。ほんの少し、そう微細なずれで、全く違う次元や場所に行ってしまう気がするな。吸血鬼が簡単に家に入れないのは、このせいだな」
「なるほどなましな。なら当面は大丈夫なしかな」
「だが対策は何か考えないとやばいのは変わらないな」
二人は周りも見ずに転移の考察を始めるのだった。
仕事モードですね。
二人とも休みとか忘れてないすかね。
次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。
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