0120.ピーとビィ
さて、問題の移動手段だが、誰に聞けば一番早いかな?
ミルスやアンは知らなさそうな気がするし、フレッドの知識から拾い出せないかな。
だめだ、フレッドこの辺りの生活なんて知らないや。
すると、聖北騎士団かなやっぱり。
アルバとかなら知ってそうではあるけど、なんかいやだなあ。
まあ、当たって砕けろだミルスに聞いてみよう。
俺は二人を連れてベースへと戻った。
≪びっくりしたな、あれが転移か~≫
≪いい経験したけど、絶対できなさそうに感じたよ≫
≪ここの部屋を使ってくれ≫
俺は吸血鬼の洞窟に急遽2人部屋を作り案内した。
≪おわあ、ちゃんとベッドがある≫
≪ベッドで寝られるとか久しぶりだ≫
≪窓がないんだな≫
≪ここは地下基地なので我慢してくれ≫
≪へえ、地下なんだな、まさに秘密基地って感じだな≫
≪食事時まで部屋でゆっくりしていてくれ≫
≪いろいろとありがとう、了解した≫
二人は部屋へと入っていった。
リビングに行くと、皆がぐったりして休んでいる。
もちろん眷属の3人はいない。
休みなく頑張っているのだろう。
「お疲れ」
「だんだんと、ダンジョンもハードになってきたわ、うちも流石に疲れたわ」
「僕は、L.T会の皆も凄く頑張ってるので、対抗心を燃やして頑張ったらくたびれちゃった」
そうなんだ? そんなに頑張ってるんだ。
「ミルスにちょっと聞いてみるんだが、ゲレナンド王国に行く方法とかわかるかい?」
「たぶん、飛竜便が出てると思うけど、よく分からないわ。タカ、ゲレナンド王国に行くの?」
「うん、助けた鳥人の二人がゲレナンド出身で帰りたがっているんで、送って行く事になったんだ。洞窟に部屋を作ってそこで休憩させているよ」
「タカも難儀な性分やな、そんなの喜んで引き受けるんやからな(まあそこが魅力でもあるんやけどな)」
「ゲレナンドってハムがいる所だろ。会ったらよろしくな」
「そうね、お兄ちゃん、私たちもよろしく言っておいてね」
そうか、行く気はないと言うか、会う気ないんだね。
ハムの奴、嫌われてるなあ。
俺は結構好きな奴なんだけど。
俺も気を付けないとな。
こんなふうに皆に嫌われると立ち直れないよ。
さて、ピーとビィー二人分の昼食を増やしてもらわないとね。
キッチンに行くと、母さんとアン、ニノが調理を始めていた。
「今から二人分増やせる?」
「その位なら増やせるけど、女の子増えたの?」
「いや、鳥人さんが二人。二人とも男だよ」
「なら、量が要るわね」
そりゃ、連れて帰るのが女ばっかだったけど、ガウとかウズラとか居たじゃないか。
ガウは今は女になっちゃったけど、元は無性だったんだし。
などと、どう考えても無理な言い訳を考えてしまった。
今から巨大ハーレムを構築しようかと言う破廉恥男が何を言っても無駄だ。
しかし、どうにも巨大ハーレムとか現実感が無くてぴんと来ない。
どうしたもんだろうか。
いや皆、過去にいいなって思ったり、好きになった娘だったりで不満は無いよ。
うん、不満はない。
だが、不安なんだよ。
情けない事にな。
おっと、ぐだぐだ言っても仕方ない。
受け入れると決めたからには頑張ろう。
「にいちゃん、そろそろ出来るニャ」
「じゃあ、皆を呼んでくるよ」
食事に皆が集まると、ガウを見たり、アンスラルドで歩き回る亜人の人々を見たりした事でいろいろ慣れてていきたと思っていたが、両親はピーとビィーの外見には流石に驚いた。
体は羽毛に覆われ頭は人っぽいが、鶏冠やくちばしもある。
腕は翼と一体になっていて、関節が二つあるように見えるが、よく見ると腕の関節ではなく手のひらの関節である。
小指の部分が太く長く力強くなり、翼の先を形成していて普段は折り曲げている。
折り曲げると他の指で物を掴んだりの邪魔にならないようにたたまれるが、腕に見える部分より遥かに長いため隠れはしない。
しかしあれでもつのだろうか?
指の部分は羽ばたけばその荷重に耐えきれず折れてしいまいそうに細い。
いや飛べると言うんだ気とお何か秘密があるのだろう。
足の指は長くて掌の様な為、木の枝とかにとまりやすそうだ。
と言うか股間はかろうじて羽毛で隠れてはいたが、人だと思うと妙にいやらしい感じだ。
なので俺はズボンを自分の部屋から取り寄せ履かせてみた。
警備事務者の奴らも服ぐらい用意してあげればいいのに、今まで素っ裸で放置していたようだった。
やっぱりひどい奴らだな。
上半身は羽が邪魔で何も着せる事は出来ない。
水浴びをしていて裸の所を捕まったって言ってたなそう言えば。
羽毛や羽は綺麗なブルーに輝くようなピンクの羽がちりばめられている。
二人をよく見ると鶏冠の部分が少し違っていた。
今のところ違いはそこしか分からない。
≪俺の両親だ≫
「ピーピー≪お邪魔しております≫」
「ピーピーピー。ピー、ピー≪息子さんには命を助けていただきました。その上に基地にお招ききいただきありがとうございます≫」
異界に言葉を多少覚えてきた両親も、これは流石に分からないだろうから俺は通訳すると。
「あ、ああ、自分の家だと思ってゆったりしなさい」
「そうね、ご飯も食べてね」
おっかなびっくりでは有るが両親は応えるのであった。
「ピーピーピー≪私がピーですよろしくお願いいたします≫」
「ピーピー≪僕がビィーです≫」
なるほど、鶏冠がⅤの字なのがピー、Wなのがビィーだな覚えたぞ。
≪それじゃあ、そこに座って食事をしてくれ≫
≪おお、見たこともない食べ物だ≫
≪珍しいね、僕たと結構あっちこっち旅したけど、どれとも違うよ≫
へえ、異世界を旅ねえ。
それは面白そうだよな。危険も多そうだけど。
まあ、地球でさえ俺は日本を出たことが無いからその後かな、各地を回るのは。
≪ピー、ビィー。飛ぶのが苦手だって言ってたけど、どれくらい飛べるんだい?≫
食後まったりしている所に聞いてみた。
≪ああ、そうだな。高さは50m位かな、距離は1500m位は行けると思うよ≫
なるほど、それでは飛ぶのが得意とは言えないか。
≪そう言えば兄貴、長いこと飛んでないから飛びたいなあ≫
≪ここは、山の中の洞窟なんだ。外に出て飛んでみるかい≫
俺はそう言いながら洞窟の出口付近につながるドアを廊下の行き止まりに作った。
≪えっ、出られるのかい。なら出たいなあ≫
≪そうだよ、空が見たい≫
≪ならこっちだ、ついてきて≫
俺は洞窟の外に二人を案内した。
≪おおっ、小さい鳥くらいしか飛んでない、いい空だな≫
≪タカありがとう、兄貴さっさと飛ぼうぜ≫
二人がばっと広げた翼は、とても大きく力強そうだった。
風の魔法を併用して、二人は空へと舞い上がっていく。
俺が蝙蝠の時、重力魔法を利用して飛ぶより、とても魔力効率がよく、美しい姿で、晴れ渡る綺麗な空を飽きるまで飛び続ける二人だった。
そうか、苦手でも飛んでこその鳥人なんだな。
次回更新は金曜日になります、よろしくお願いいたします。
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