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0118.冬二陥落する

「えへへ、タカごめんね。僕ちょっと変だったんだ」


 冬二が突然謝って来た。

 へ~なんだ? 冬二にしては殊勝じゃないか。


「『えっそんな事でタカさんに八つ当たりしてるの? 信じられない! そんなお兄ちゃん最悪』って妹に怒られちゃって。なら友達を紹介してあげると紹介してもらっちゃって。えへへ」


 こいつ、いつも調子のいい奴。


「まあ、あんまりは怒って無いよ?」

「そう言わずに、えへへ」


 なんだこいつキモイぞ。

 異常に上機嫌だ。


 今なら少々叩いてもニコニコしてるんじゃないか? 

 いや、しないけども。


 まあ、初めて彼女が出来そうなんだ。

 うれしい気持ちも分からんでもないがな。


「冬二、舞い上がっていると、足を掬われるのう。気を付けた方がいいのう」


 それはそうだがせっかくハッピーなんだ。

 水を差してやるな。


 可哀想だろ。

 どうせ短い幸せなんだから! 


 何気にタカが一番無礼な考えをしていた。

 本当にこいつら友達なんだろうか?


「分かっているがな。えへへへ」


 うわー何言っても駄目だこいつ。


「タカも、変な噂が立っているのう。無敵とか不死身とか死霊使いとか。またいったい、なにやってるんだかのう」

「さあね、俺にも分からないよ」

「そうかのう。まあいいのう、話せること以外は、危険そうだから言わなくてもいいのう」

「はっはっは」


 俺は笑ってごまかした。


 流石にハーレム準備に入っていて、恨みで闇討ちされたとはとても言えない。

 俺、そんなにいい思いなんか、まだそれほどしていないんだがなあ?

 でへへ。


 自然と変な笑いが漏れる。

 ショウは俺を何だこいつ? といった目で見ていた。


「冬二、何で戻って来てるんだ。お前裏切り者だろ」


 いつもの様に遅くやって来た聖がどストレートに突っ込む。

 聖には腹芸など無い!


「いや~、そんなこと言わずにさあ。聖さんも許してよ~」


 冬二も聖の言いように決して負けてはいないようだ。

 お互い面の皮が厚いのか鈍感なのか?


「さ~、どうするかな~?」

「そんなこと言わずにさあ」

「そうだな、今度のサバゲに参加したら仲間だと認めてやるよ」

「ええ~! そんな~」


 へ~意外と聖も考えてるなあ。

 俺は聖のデータを考え直さなければならないのか?


「あ~わかった、冬二君って私たちが嫌いだから来ないんだ」

「へ~そうなんだ、冬二く~ん?」


 すかさず聖の尻馬に乗るあかりと樹里は機転が凄い。


「いいえ、そんなことないです~。参加するよ~」


 冬二は半分涙目だ。


「やったね」


 おお、とうとう冬二が折れた。

 すごいな~女性の力は。


「じゃあ、次の大会登録しとくのう」

「分かったよもう。参加するからには勝つぞ~!」

「お~!」


 でも大丈夫かな~? 

 皆何回か参加してて、相応以上に実力が上がっているる。

 なのに冬二は一回参加経験があるとはいえ、まるで初心者なんだがなあ。


 帰り道に泣きながら『もうサバゲなんて二度とやるものか!』と叫んでいる姿が目に浮かぶようだ。


「大丈夫、私たちに任せといて、タカ」


 あかりがまるで俺の心を読んだかのように俺に耳打ちしてくれた。


 いったいなんで解るんだ? 

 俺ってそんなに表情に出るのか? 

 それとも愛のなせる業? 


 しかし頼りになるなあ。


 そして、数日後あったサバゲはまるで接待プレイの様に、あかりと樹里が冬二を支え活躍へと導く。


 聖と少し前から参加している美香は我関せずと二人で競いながら楽しんだようだ。

 あの二人実に仲がいい。


 所属チームは負けはしたけど、冬二は美人同級生二人による接待プレイに酔いしれ機嫌よくゲームを楽しんだ。


「冬二君、私たちに惚れても今はダメだよ! 二人とも想い人いるからね」


 と釘までしっかり刺すのを忘れない。

 しかし、まるでチャンスが有るかのような雰囲気だけある完璧な言葉を掛けた。


「えっ! ああ僕彼女いるから……」


 冬二のハトが豆鉄砲でも食らったような、それでいて残念なような表情は実に面白かったな。


 女ってすごい、男なんて全く歯が立たないよ。

 もちろん俺もだ。



 今回のハーレム形成騒ぎはもちろん、美香達に報告した。

 隠すと碌な事にはならないからね。


 ただ、すでにケイは根回しを終えており。

 皆の反応は”とうとうか。同じ人を愛する人が、ハーレムの仲間が増えるって思ったのと違ってうれしい!”と言った感じで終わった。


 俺はもっと揉めるかと思っていたんだが、すでにハーレムは形成されていたらしい。


 もっとも聞き分けのなさそうな聖でさえ”仕方ないな~タカは”と言った感じで全く揉めなかったのだ。

 俺はケイの手の上ですっかり転がされ、すべてを容認するしか方法は無かった。


 よって、ケイの目論見通り巨大ハーレムがどんどんと完成へと進んでいる。

 ほぼ、俺の意向など当事者なのに考慮されない、と言うか言えないのだ。


 うれしくないと言ったら嘘になる。

 俺のスケベ心がある所も避けられない理由の一つであることは言うまでもないのだった。


 たぶん、ケイは俺より俺に詳しいのだろう。

 弱点への総攻撃である。


 なので、逆らえるはずもなかったのだ。

 ケイが俺の為に。

 そう、俺が俺の心の奥底に抑え込んでいるアレの対策なんだろうかなと、おぼろげながらも分かりもするのだ。


 ケイが本気で俺の為に行動している。

 その邪魔は俺には無理だ。




 早いものだが、あの祭りからもう一週間が過ぎまた週末が来た。

 鳥人族を助けた時の事情徴収に行く約束だったのでめんどくさいが、地図にある警備事務所へ向かっている。


 街の中心から少しだけずれたあたりに、高い壁に囲まれたいかにも警備厳な感じがする建物が有った。


「おっ! ここかな?」


 騎士の歩哨もいるしきっとそうだろう。


「あの、先週の闘魔獣で鳥人族を助けた者なんですが」

「ちょっと待て! 確認する」


 歩哨のうちの一人が中に駆け込み二人で帰って来る。


「忙しい所、わざわざありがとうございます。本件の担当者と当事者はこちらです。付いて来ていただけますか」


 案内された先には、がっくりと項垂れている担当者と鳥人族の二人が居た。

 鳥人さんの内の一人が俺を見つけるなり。


≪おおっ、あんさん、来てくださったのか、よかった≫

≪やった、やっと話が進む≫


 俺を見るなり二人の鳥人がピーピーと騒ぎ出した。


「ああ、御足労をおかけして申し訳ない。話を聞かせていただけますか」

「分かりました。…………」


 俺は、事の顛末を詳しく話した。


「警備の剣士達の話と矛盾もないですし、もういいですよ。ありがとうございました」


 俺が帰ろうとすると、また、鳥人の二人が騒ぎ出した。


≪まってー! 帰らないで僕達を助けてー!≫

≪なにを助けるんだ?≫

≪こいつらの用意した翻訳機がおんぼろで、全く話が通じないんだ。お願いだから訳して≫


 なるほど、それは困ってるんだろうな。


≪分かったからもう騒ぐな。翻訳すればいいんだな≫

≪ありがとう。助かったよ≫


「あのう」

「何でしょうか?」

「よかったら俺が通訳しましょうか?」

「それは助かりますが良いのですか?」

「乗りかかったっ船ですので」

「ありがとうございます!」


 担当者はとても安堵した表情を浮かべた。

次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。

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