0113.劣悪魔の呪い
タカ様が結界を解いた一瞬の隙を突かれ魔法にて狙撃されてしまった。
眷属がそろっていたと言うのにタカ様を守れないとは。
「タカ様っ! くっ、ガウ」
「はいビャ」
タカ様を狙撃出来る程の敵を放っておくわけにはいかない。
わたくしたちはタカ様を狙ったと思える場所へ、探知外なのだが危険を覚悟して魔魔法で転移し、数匹の劣悪魔とタカ様に撃たれて灰になった劣悪魔の残骸を見つけた。
流石タカ様です。
こんなに強い輩が生き残っていたらどうなっていた事か?
残る魔力残滓からたぶんとても強かったであろうと予測できる劣悪魔。
さて、ここにいる劣悪魔、一体たりとて逃しはしない。
「死にさらせ!」
「殺すビャ!」
わたくしたちは、前回の劣悪魔戦で相対し苦戦した程度の強さを持つそこに居た劣悪魔どもをあっという間に殲滅しタカ様の元に帰った。
「ケイっ、にいちゃんが! 再生が! 始まらないニャ」
「落ち着きなさい、アン。わたくしたちの繋がりは切れてません。タカ様は生きています」
「だって、にいちゃんが!」
「これは、再生阻害の呪いが掛かっているビャ」
タカ様の体は煙を上げレベルアップをしようとしているが、それもままならないみたいだった。
やられた。
この街の戦いは最初っからタカ様を狙った陽動だったのだ。
一瞬の隙をつく為の……。
わたくし達を研究しつくしたかのような、恐ろしい戦略。
最後のタカ様の反撃が無ければ、滅びていなかった劣悪魔。
あれが生きていたとしたら?
あの劣悪魔達はタカ様と言う最大戦力をうしない戦力が半減したわたくし達を蹂躙したかもしれません。
「これは、ポキが、劣悪魔を過小評価してたせいビャ。もっと気を付けるように意見できていればこんな事にはならなかったビャ。これほどまでに大勢の劣悪魔が結託して作戦をこなすとは、ポキも思わなかったビャ」
「ガウのせいではありません」
わたくし達、眷属に聖属性を持つ者はいない。
わたくし達では解呪できない。
タカ様がいつまでこの状態を維持できるのかわかりませんし。
すぐにどうこうではないと思いますが。
長くなればどうなるか分かりません。
アンにああは言いましたが焦りますね。
「おーい、終わったで~」
どうやらまだタカの様子が分からない皆さまがお帰りになったようです。
「皆さま、わたくしの所へ。ダンジョンに移動します」
「えっ、性急だな何かあったのか?」
「説明はあちらで」
周りの観衆は劣悪魔の撃退に盛り上がり喜び、歓声を上げている。
救い主のタカ様がこんな目に遭っていると言うのに。
理性では何故か分かっていても感情が許せません。
こんな所には一時も居たくありません。
タカ様は良い人ですから、それでも皆が幸せならいいさと嘯きそうではありますが、わたくしには無理です。
ダンジョンに帰り、皆に説明すると。
「うわ~ん、お兄ちゃん。目を開けてよ。おねがい~!」
妹様はタカ様に縋り付いて泣いています。
「うっうそや! あのタカが、そんな」
「いや、大丈夫だ。タカは殺したって死なないはずだろ! うっうっ」
「お兄さん……」
皆一様に泣き始めてしまった。
「皆さんよく聞いてください。タカ様は死んだわけではありません。再生が呪いによって阻害されているだけなのです。呪いさえ解けば、復活なさいます」
「そ、そうか、泣いてる場合じゃないんだね。呪いを解かなきゃ」
「杏ちゃん。でも、どうやって……あなた、聖巫女の素質あるんでしょ。何とかならない?」
「芽衣、さっきからやろうとしてるけど、私の力じゃ無理みたい」
「なら、強い聖巫女さえ確保できれば」
「では、探しに行きましょう。わたくしに、思い当たる人物があります」
「それは、いったい?」
「蒼天の剣のマリーさんニャ」
「そうです」
「でもどこにいるニャ?」
「分かりません。タカ様なら勇者協会に伝手がありそうなので探すこともできますが。わたくし達では信用されないでしょう。しかし、何とか探し当てタカ様を助けていただかねば」
「あのう、思うんですけどミルスさんじゃダメなんですか?」
「芽衣、それだー!」
「そうですね、わたくしはミルス様に会ってきます。タカ様はベースの部屋に運び込んでおいて」
あそこはまだ、祭りをやっているのかしら?
先ほどの公園にわたくしは転移し、霊体に戻り姿を消して祭りを続行しているミルス様に接近する。
「ミルス様。そのまま話をお聞きください」
「いったい何? ケイちゃん」
ミルス様は表情を変えずニコニコしたまま、麦の穂を周りに撒きながら問い返してきた。
「蒼天の剣の方と連絡を取りたいのですがどうすればいいでしょうか?」
「聖北騎士団本部には連絡用の魔道具があるわ。でも彼女たちは忙しいので捕まえれるか分からないわよ。何が起こったの?」
「タカ様が強い呪いを受けました。解呪を頼みたいのです。彼女たち以外ではタカ様の体質などを知りませんので、出来るだけ蒼天の剣の方々に、マリーさんに頼みたいのですが」
ミルスの顔は一瞬表情が曇ったが、すぐ元の表情に戻り、穂を撒くのもやめない。
「もう少しで私の役目も終わるわ。すぐ連絡するのでちょっと待ってね」
バアァーと残りの麦の穂を風の魔法で飛ばし。
「皆さんありがとう、今日はこれで終わりです」
と拡声魔法で言い。
ワァーー! と大声援がわき起こる中。
「ケイちゃん、急ぎましょう」
「はい」
わたくし達は聖北騎士団本部へと急いだ。
「タカはどんな状態なの?」
「頭を撃たれて再生を阻害されているので、意識不明です」
タカ様でなければ即死でしたね。
「そっ、そんな、タカっ!」
ミルス様は歯を食いしばり泣かずに耐え、厳しい表情になった。
流石ですね。
聖女と呼ばれるだけは有ります。
「必ず、マリーさんを呼んでやる」
ミルス様は通信用魔道具を起動しマリーさんの魔力をサーチし始める。
「お願い、探せる範囲に居てっ!」
中々面白い魔道具ですね。
解析して元気になったタカ様に知識を渡しましょう。
「あっ、いた! いたわケイちゃん」
”ビービーガーガー、なんなし? 通信やね。こちらマリー、誰でっしゃろ?”
「アンスラルドの聖女ミルスです」
”ああ、聖女様なしね、今忙しいなし手短になし”
「タカが劣悪魔の呪いの掛かった魔法で頭を撃ち抜かれて意識不明なの。マリーさん助けて」
”それは大変なしね。すぐ行きたいのはやまやまなしけど、こっちも魔獣と魔物のスタンピードで町がやられそうなし。で手が離せないなしよ”
「マリーさん、ケイです。わたくしとガウが代わりに戦います。わたくしたちはあの頃より更に強くなっていますので、お役に立てると思います。また、タカ様も復活されれば参戦なさると思います」
”シンディはん、ああ言ゆうてなしが、どうしまひょう”
”ガガッ、じゃあマリーを連れにここまでこい”
「分かりました、シンディさん。そちらに向かいます。そちらはどこでしょうか?」
”ラウル公国のマク市だ。地図は有るか?”
「ミルス様地図は?」
「これです」
わたくしは地図を詳細まで記憶する。
「分かりました向かいます」
”では、我々は戦いながら待っている。急げよ。ブッツン”
どうやら通信は切れたようね。
「ミルス様、わたくしはガウとアンを連れて行きます」
「ケイちゃん気を付けてね」
「はい」
わたくしはそう答えタカ様の部屋に転移した。
次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。
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