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0111.危機一髪

 満身創痍の熊の魔獣も魔法で殺され、遺体の片付けと軽い掃除が終わると。

 次の試合用に檻に入った獅子が運ばれてきた。


 獅子は殺意充分で、少しでも檻に近づく者を威嚇し攻撃しようと果敢に前足を檻から出して振り回している。

 檻には長い棒が付いているため人には届きはしないが。


 そして、反対側から、鳥の魔獣が二匹入った檻が出てきて闘技場に置かれる。

 が、何かおかしい。

 魔獣独特の強烈な邪気を感じないのだ。

 鳥魔獣の鳴き声は


「ぴーぴーぴー」


 としか聞こえないが、何故か俺には


≪助けてくれー! 俺達は人間だー! ゲレナンド王国へ問い合わせてくれー!≫


 と解ったのだ。


 いかん、人が魔獣の餌食になる! 

 俺の探知も彼らは人種であることを示している。


 それが解った瞬間、俺は闘技場内へ飛び出していた。


 ビシイッと大きな音が響き障壁に穴をあけ闘技場に飛び込んでいく。

 障壁はすぐ再生され穴は無くなった。

 一安心だ、壊れたらどうしようかと思ったんだ。


 その間に二つの檻が開き獅子が凄い勢いで飛び出してくるので、出来るだけ死なない程度に頭をぶちくらわして気絶させ、二人の鳥人族のいる檻へ近づいていく。


≪大丈夫か? 助けに来たぞ≫

≪やった。この国で初めて言葉が分かる人に会った~! ありがと~!≫

≪ありがと~! 助かったよ~!≫


 そう言って、おいおいと泣き始めた。



「あれっ、タカ? なんであそこに? 今さっきまでそこにおったのに。聖これ何がおこっとるん」

「さあ? 僕にもさっぱりさ」


 聖は短く切った赤い髪を左右に揺らし両手を広げて見せた。


「タカ様は、あの鳥が人だったので助けに向かいました」

「えっ! あれ人なん? ケイちゃん、本当?」

「タカ様によるとそうらしいです。あのピーピーうるさいのが、助けてくれー! 俺達は人間だ! と聞こえたそうです」

「さすがお兄さん。凄すぎます」


 芽衣は、目がハートになって凄く興奮している。


「あ~、お兄ちゃん。助けを求める人放っておけないから」

「そうか~これが、人助けが趣味ってやつなんやな」

「なるほどね~。躊躇なく飛び出すあたり確かに凄いな」

「うち、惚れ直したわー。聖もそやろ」

「そうか? 僕は……いや、まあ、そんな事は?こほんっ、あるかもな」


 聖の顔は真っ赤に染まっていた。


「おっ、なんや聖が素直やな。天変地異の前触れか?」

「僕はもともと素直だ!」

「あははは、そんなわけあるかい。あははは」

「ぐぬぬ」





「おい、お前何をやっている!」


 気づくと、周りに剣士風の輩が5人ほどで俺を囲んでいた。


「なにって、人を助けただけだが」

「何を言っているんだ? 気でも狂っているのか? この怪しい奴が!」


 そう言放つが、強がっているだけのようで彼らの足は震えている。

 力の差は漠然と感じるのかもしれない。


 そう言えば結界を越えるために魔力の一部を開放していたな。

 ちょっと開放し過ぎたか?


「あのな」


 俺が言いかけた時。


「うわあー」


 一人恐怖に耐えきれなくなったのか、俺に切りかかって来た。


「おい、ちょっと待て、話を聞けって。うおっと」


 おもいっきり、袈裟切りが来るので慌てて避ける。


「こいつ、抵抗するぞ。やってしまえ!」

「ちょっ、避けないと痛いでしょうが」


 ヒュンヒュンと俺の居た位置に白刃が走る。

 避けて無かったら今頃なます切りだ。


「や、やめろって、話を聞けって」


 そう言いながらも俺は剣筋をすべて避ける。

 彼らは五人で連携し必死になって切りかかってくるも、俺から見ると遅すぎてまるで児戯のようだ。


 魔力による身体強化は体だけでなく知覚すらも加速する。

 魔力差が大きいと全く相手にならない。


 うおーー! わああー! 


 会場内に大きな歓声が上がる。

 どうやらこれがウケて、観客は大盛り上がりのようだ。


「ちょっと待てって言ってるだろ、俺はそこの鳥人族を助けただけだって」

「嘘を言ううな! こいつらは魔獣だ。まさか、そうか、お前は人魔だな」


 いかん、話が通じない。

 そう言っている間もビュンビュン切り付けてくる。

 ああ、さすがに腹が立ってきた。


「えーい、うっとおしい」


 俺は剣を抜くと、剣士たちの剣を全員分根元から切り落としてやった。


「うわあっ」

「いったい何が?」

「剣が俺の剣が」


 一番偉そうに命令を出してたやつの目の前に剣先を向け。


「話を聞け、この野郎」


 キッと、俺を睨んでくるが、俺はかまわずに話を続ける。


「この人たちはゲレナンド王国の住人だ。間違えて殺すとゲレナンド王国ともめるぞ」

「なんだと、ゲレナンドだと、こいつは何を言っているんだ?」


 そうかこれは、俺が全く無名で怪しいから信じるに値してないんだな。

 仕方ない。

 こういった時には他の信ある人たちを利用するのだ。


「これを見ろ」


 俺はハムドと蒼天の剣からもらった身分証明を出し魔力を通した。


「こっれは……なんだ?」


 俺はがっくりとしながらゆっくりと言ってやった。


「こちらが勇者協会の主力、蒼天の剣のエンブレム。そしてこちらがゲレナンド王国の身分証明だ」

「そっそれは、本物なのか?」


 ですよねー、分からないんですものねー。

 でも困ったな。


 少し間が開いたので俺はこの街にある魔獣用の檻の中をすべて探知してみた。

 よかった、他に人が混ざっていることはなさそうだ。


「まてまてっ! お前ら何をやっている」


 騎士たちが異常事態の知らせでやってきた。

 これ幸いと俺は二つのエンブレムを騎士たちに見せるのだった。


「そ。それは、蒼天の剣の信頼のエンブレム。そして、ゲレナンド王国の国賓の証明書。本物だあ」

「凄いな、この二つを併せ持つなんて」

「で、その、貴重なエンブレムを持つあなた様は、いったい何の騒ぎを巻き起こしたのですか?」

「俺はっ、そのっ、鳥人族がそこで気絶してる獅子の魔獣と戦わされそうになっていたから、助けに入ったんだ」


 騎士たちに詳細の説明を行った。


「おい、本部から種族チェッカーを持ってこさせろ」

「はい、分かりました」

「すまないが、双方、それがはっきりするまで待ってもらう」


 少々待つと、その種族チェッカーとやらを持ったお役人さんが数人でやって来て、鳥人族をチェックした。


「彼らはまちがいなく鳥人族の方々です。言葉が特殊で中々解り辛いのも特徴です。罪のない彼らをとらえて、檻に入れた挙句、魔獣と戦わせるなんて、ゲレナンド王国に伝わったりしたら外交上の大問題ですよ。ゲレナンド王国に睨まれでもしたら、小国の我が国は……」


 と顔を真っ青にしながら話した。


「すまん、あなた様の無実はわかりました。最悪の事態を防いでくれてありがとうございます。後は我々がちゃんと捜査し正します。だが、後日詳細をもう一度聞きたいのですが、騎士団詰め所を訪ねていただけないでしょうか?」

「分かりました来週なら来られると思います」

「では、それでよろしくお願いします。騎士団詰め所はこちらです」


 そう言って、簡易な地図をくれた。そして、俺達は闘技場を後にするのだった。

次回更新は金曜日になります、よろしくお願いいたします。

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