0110.闘魔獣観戦
前日に祭りも劇も散々見て回ったので、今日はゆっくりと集合し闘魔獣を見に出かける事にしている。
「おはよ、よー寝たわ。昨日はおもろかったな」
だが最近、毎朝朝食をうちで食べる美香には関係が無く、あくびをしながら朝一番からやって来ていた。
それも寝間着のままである。
年頃の娘がそれでいいのか?
と思わなくもないが、妹も寝間着でベースのリビングでくつろいでいるので、そんなものなのかもしれない。
まるで姉さんが出来たような気がするな。
でも、父さん達が居るので今は流石に着崩れてはいないが、そうでない時はかなりラフな格好をしている時も有って目のやり場に困る時がある。
「ふふ、タカどこ見とるん? 目つきがいやらしゅうなっとるで。うちってせくしー?」
と茶化しながら見せつけるように近寄ってくる。
スラッとしているけど、ちゃんと掛けていないボタンやジッパーの隙間からちらっと見えるたわわな横乳なんか見た日には淫欲に振り回され記憶が飛ぶこともしばしばだ。
「タカってほんと絶倫なんやな。うちも気持ちよかった♡(タカったら激しく揉みしだくんだもの)」
ダンジョンで鍛えたおかげか、初めて会った時に比べて見映えは少し幼くなってはいるけど、色気はグッと増した笑顔を見せる。
ええっ! いったい何を言ってている?
何を揉みしだいたんだ?
俺にはさっぱりわからない。
記憶が飛んでる間俺は何をされているのだろうか?
覚えていないなんて勿体な……やけに気分がスッキリし淫欲の力が弱くなってるような気もするんだが。
おほんっ。
話は変わるが、どうやら両親が昨日のうちに準備したみたいで、ベースのリビングにもアンテナ線や電源を引っ張りテレビが見られるようになっていた。
父さんもすっかりくつろいで、ウズラと寝っ転がってテレビを見ている。
確かにここは広いからな。
寝転がっていても全く邪魔にはならない。
家の居間だと狭いので父さんが寝転がっては母さんに邪魔だと怒られていたっけ。
ケイとアンは母さん監修のもと朝食を作り、ニノはそれを見て覚えようとしていて、先ほどまで起きていたガウはリビングの隅で立てったまま寝ている。
ほぼ人型でも寝方一緒なんだな。
朝食の出来る良い香りが広がり、ゆったりとした朝の光景が広がっていた。
「よお、おはよー」
朝食が終わった頃、元気よく聖がやってきた。
「まだ、寝間着のままなのか! たるんでるぞ。早く着替えて行こうぜ」
よほど昨日が楽しかったのか、恐ろしく張り切っている。
「まあ、待ってーや。うち今すぐ用意するさかいなっ! 皆ってまだ芽衣が来とらんがな」
「芽衣ちゃんいつもは、早いのにどうしたんだろ?」
皆が準備し終わってまったりしたころ、芽衣はやってきた。
「皆ごめーん、父さんが、どこに行くんだ? 何しに行くんだ? ってうるさくって」
ああ、さすがに親御さんが心配し始めたか。
逆によく今まで抑えられていたな。
「そのうちに、挨拶に行った方がいいかな?」
「お兄ちゃんが行くとややこしくなるから、今度私が芽衣んちに遊びに行ってみるよ」
そうか、まあそうだな。
「うちも付いて行くで~。そう言うのは大人がいた方が信頼度が高こうなるよってにな」
「美香が行くなら、僕も行こうか?」
「聖が行くと余計物事がややこしゅうなるわ」
「ぐぬぬ」
全くこの二人ときたら。
「ニノが何かしたらアンは耐えられないニャ。当分は付いて見張るニャ」
ニノの受け入れを進言したために責任を感じているアンは、ニノとウズラを見るので留守番したいとのことなので七人で出かける。
「さあ、祭りに繰り出そうぜ」
「お~!」
街中の公園に円形闘技場がいくつか仮設されていて、どこの闘技場もお客であふれかえっている。
皆娯楽に飢えているようだ。
確かにこの国の周りにはあまり強い魔物や魔獣が居ないが、そんな国でも戦時中国家の様な質素さが幅を利かせているらしい。
この世界魔法技術で色々な所は現代日本より上な所もあるが、エンターテインメントの分野はあまり進んでないのかもしれない。
周りに魔物が跋扈する世界ではそのような余裕はないのかもしれないな。
分からないけど。
印刷技術はあるみたいだけど本は高いし、識字率も低そうだ。
例えばこの会場には中空にオッズが表示されているが、数字と魔獣の姿のみの表記にとどまっている。
数字は分かる人が多いのだろう。
皆それを見て何番に掛けようとか、真剣に話し込んでいたりするのだ。
入場料は大体一人鉄貨二枚程度だ。
一番大きいメイン会場のみ鉄貨四枚だが、せっかくだからと大きい会場に入ることにした。
賭け札は売っていたが、全員未成年の為買わずに場内へと入っていく。
ワォーー! ワァーー!
大きな声で怒号の様な声援が飛び交う、ある種異質な空間の様な場内に皆圧倒され言葉を失っている。
目の前では熊の魔獣一体と狼の魔獣が二体、激しく戦っていた。
この凄い歓声やらなにやらは会場の外には聞えなかったので防音も魔道具で何とかしているのだろう。
「すごいな」
俺はやっと言葉を発することが出来た。
「そうやなあ、予想以上に盛り上がっとるなあ」
「賭け事は人を変えるのね。町中は静かで整然としていたのに」
美香はその人の多さに驚いていて、妹は人々の熱狂ぶりに引き気味だ。
「どうやら、基本どちらかが死ぬまで戦うみたいだからな。人は血を見ると興奮するのさ」
聖が分かったような事を言っているが、まあ、それも有るだろうなとは思った。
空いている席が無いので立ち見となるが仕方がないな。
観客席は物理障壁と魔法障壁によって守られていて安全だという触れ込みである。
確かに球状に障壁が張られているが、大して強い物ではなさそうだった。
「ポキ達なら軽く破れるビャ」
「まあそうだよな」
戦っている魔獣はどれも強さ的には、ダンジョンの第一層の熊と大差ない。
そう、聖でなくても美香達でも余裕で勝てる相手である。
しかし、お互いが同程の度強さになっているため見ごたえは十分あった。
「グオー」
「ガウ―」
「ガウ―」
熊と狼の戦いは熾烈を極め、目がつぶれ飛び出していたり、腕や足が折れ骨が見えていたりと、まさに死闘と言った様相に皆引いていた。
双方とも敵を殺す事しか考えておらず全く手加減など無い凄惨な戦いだ。
「うげえ、ここまでとは思わなんだわ。うち、気持ち悪くなって来たわ」
「むう、確かに気持ち悪いが、せっかく入場したんだもう一試合見ていこうぜ! なあ、タカ」
美香が口元を押さえ気持ち悪そうにしているが聖はまだ観ていきたそうだ。
「うんっ、どうする皆?」
「そうね、だったらもう一回だけ見ようよ。お兄ちゃん」
「まあ、普段戦ってるから見られない訳じゃないんや」
「じゃあ、もう一試合だけな」
「次は、昨日見なかった劇でも見て回りましょうよ」
そうだな、芽衣もそう言うのなら、もう一試合見るか。
熊と狼の戦いは、終始二頭の狼が有利に戦っていたが、一頭が跳ね飛ばされて動かなくなってからは熊の一方的な勝利で終わった。
「ええっと、次の試合は、獅子の魔獣対鳥の魔獣やな」
「強さが同程度なら、飛べる分鳥の方が有利かな?」
「いや、捕まったら鳥なんて一瞬やろ」
「そうか?」
「どうかな?」
場外では聖と美香のにらみ合いが始まっていた。
なんだかんだ言って楽しそうだなおい。
次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。
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