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0006.記憶の旅へ

2/17 人狼の説明を追加

 そう言えば転移で洞窟の中に直接戻れるのだろうか?

 と思い付き俺は主様といた、あの椅子のある洞窟の中を思い浮かべ転移してみた。


 おお、ここは主様の部屋、ってまだ支配されていた時の感覚が抜けてないな。

 誰も居ない山の中の真っ暗な洞窟だ、よほどの物好きでもここには誰も来ないだろう。

 しかも、主様の寝室は入り口が解り辛い上に結界の様な物が張ってあり、誰も入れない。


 こんな所に金貨が眠っていても仕方ないねと、全ていただく事に決めた。

 箱はとても重く簡単には持ち上げられなかったが、一瞬持ち上げ抱え込んで転移すると部屋に持ち帰れた。

 が、あまりの重さに支えきれずに箱の下敷きになったよ。

 よく考えれば、持ち上げる必要などなかったんじゃないかと気づく。


 一緒に有った手帳の事を思い出し。


「あったあったこれだ」


 俺の机の上に投げておいた手帳を読み始める。




 ×月×日 

 俺は、いきなり前世を思い出した!

 その代わり今世の記憶があやふやだ。

 これはいわゆる転生だな。

 定番のチートがあるのか楽しみだ。


 あやふやながら分かることは、名前はフレッド、種族吸血鬼、なんでやねん! 

 人じゃ無くて妖怪かよ! 

 ゲームの世界か何かなのか? 

 人を馬鹿にしている。


 転生前の名前はなぜか思い出せない。

 くそ、思い出したと思った前世の記憶もあやふやなのかよ! 

 日本からの転生。日本の様子は思い出せる。

 記憶があやふやなのは気持ち悪いので日記を書くことにした。



 ×月×日

 俺のチートは探知能力だと思うな。

 他の能力より数段上の威力を誇るぞ。

 100km以内のことなら見たい場所をすべて見る事が出来る。

 そのうえ日本のとある街の様子も感じられる。

 この世界程はっきりとは見えないが、異世界の事が分かるってすごいよな。


 感じられるが帰 れ は  し  な  い  よ  う   だ  、   残       念  だ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 はっと気づくと俺は第三者の視点で主様を見下ろしていた。

 

 フレッドの知識などが蘇って来る。

 どうやら蝙蝠にされた時に植え込まれているようだ。

 なるほど異界の言葉がしゃべれるのはこういう事か。






 くそっ帰られないなんて。

 しかも、日に当たった体は灰になって飛び散ってしまう。

 死んだかと思ったわ。

 だから日中は外にも出られない。

 くそっ。



 主様の考えが俺にダイレクトに伝わってくる。



 ああ咽が渇いた。

 血が欲しい!


 はっ! 俺はなにを考えているんだ。

 そうか、俺は吸血鬼だった。

 血を吸わないと生きていけないのか?


 そんな馬鹿な! 夜になったら外に出て獣を狩って食べるのがいい。

 そうしよう。

 探知の能力があれば小動物を狩るなんて訳ないさ。


 すごい身体能力だ! 

 逃げるウサギを苦も無く捕まえたぞ!


 血の匂い。


 ガブッ


 俺はウサギの血を吸っているがまずい、これが人の血ならいいのに。


 はっと我に帰る。

 いつの間にかウサギの血を吸っている自分が居た。

 いくら美味しくても人の血なんか吸うもんか。


 すっかり血抜きが終わったウサギを手刀で簡単にばらし、火魔法でウサギをあぶってみると見た目と匂いはいい感じに焼けた。

 塩すらも無いので不味いとは思うが、これでいいか。

 ウサギの丸焼きを齧った。


「うげっ! げええ、おええ」


 直ぐ吐き出してしまった。

 まさか食事できない?


 無理やりウサギの肉を飲み込んでみるが味もしない。

 そしてまたすぐに吐き出した。

 ウサギの血は吸えたのに肉は食えないなんて。


 がっくりと項垂れるのであった。

 そう思えば捕まえた時のウサギの体はすごく熱かった。

 まさかと思い自分を触ってみると俺の体は冷たい。

 体温がない。


 そうか、吸血鬼だからアンデッド! つまりもう体は死んでいるんだ。

 生き物じゃあない。

 これで転生と言えるのか!


 ああなんてこったい!

 とりあえず獣の血を吸ってでも生き延びてやる。

 そして人に戻る方法を必ず見つけてやる!!



 ある日、俺は情報を得るために夜の街に来ていた。

 だが、暗い外には人気がない上、戸や窓が締まっていると家に入ることも出来ない。

 霧化すれば木などすり抜けられるのに家の壁はダメだ。


 途方に暮れていると、一人の人間が酔いつぶれたらしく道の真ん中に寝ていた。

 ああ美味しそうだ、いい匂いがする。

 獣なんか比べ物にならない。

 あ、あああ、あ!

 気が付くと俺はそいつの首筋に牙を立てていた。


 美味しい、ああ美味しい。


 甘くて最高だ、脳が蕩けそうだ、俺は何を我慢していたのだろう。

 こいつらは家畜だ食物だ、とても上等な。


 あまりにも美味しかったので、しおしおになるまで血を吸ってやると、ピクリとも動かなくなってしまった。

 ふむ、血を吸い過ぎると完全に死んでしまうのだな。

 うげっ! 禿の酔いどれおっさんの血を美味しくいただいてしまった。

 いくら飢えていたとしてもこれは無い。

 せめて若者がいいな。

 それから俺は夜な夜な町に行き人を襲い血を吸った。


 だが、美しかった女性も、可愛い子供も、つい美味しくて吸い過ぎてしおしおになると見た目は大して変わらん。

 血を吸った後の見栄えが悪いと後味が悪くって仕方ない。

 何とか加減して吸う事も覚えないとな。

 特に小さい女の子は美味しいので加減が難しく大体気づいたら動かなくなっている。


 加減して血を吸えれば、血を吸われた奴らは皆俺の部下になる。

 帰るときには勝手についてくるのだ。


 だが奴らは使い勝手が悪い。

 命令しないと、なにも出来ないし感情もないから話し相手にもならないのだ。


 ゾンビか? 

 いや、命令したことは結構難しくてもちゃんとできる。

 腐るわけでもなく、ムカついて殴り壊しても壊れた所は再生するし、威力のある魔法攻撃や魅了も行える。

 偶には血を吸わせないとある程度で動かなくなり灰になる。


 あやふやな中にも割とはっきりと残る記憶としては、女性の裸に興奮を覚え楽し気な気分になっていたことを思い出したので見栄えのいい女に命令を下し裸にして眺てみるが、感情のない奴を見ていてもマネキンでも見ているようで現実感が無く、性欲もあまり刺激されない。


 つまらん。


 俺はこの洞窟で目を覚まし前世をなんとなく思い出してから、

 俺はここに来てから誰とも話をしていない。

 言葉を忘れそうだ。

 俺は泣いた。

 しかし、出るはずの涙は全く出なかった。


 俺は家に入る方法を見つけた。

 戸や窓を叩くなりして開けさせればいいのだ。


 栄養が行き届いた奴の方が血がうまい為、大きな家を狙って侵入する。

 まず、ドアを開けた使用人を魅了し家族団らんの場所に案内させる。

 見目麗しい者と子供以外はすべて部下の吸血鬼に吸わせ殺す。


 部下の吸血鬼にはアンデッドを作れないのだ。

 俺が止めないと最後まで血を吸い続ける。


 言ってみれば劣化吸血鬼と言った所だろうか? 


 血を吸うついでに金貨もいただいてやった。

 金など使い道が無い気もするが何故かほしかったので。

 金についての記憶もはっきりとはないが、人だった頃の欲望がまだ残っているのかなと嬉しくなったから止めはしない。


 この世界には獣人などの亜人もいて、面白半分に血を吸ってみたが人ほど美味しくない。

 しかし、血を吸ってやるとただの吸血鬼ではなく、吸血する狼人間(人狼)(ワーウルフ じんろう)になって面白い。

 こいつらは体力の化け物だ。


 まあ、獣人の中でも狼獣人などは、見た目がごっつくなるだけだが。

 獣人は生命力が強く、そのせいなのか死にきらない? ので、多少の意思表示を行う。

 つまり会話だ、会話ができるのだ!


 簡単な会話のみだが、会話をするのはどれくらいぶりなのか?

 吸血鬼になる前の記憶があまり無いから分からんが、今の俺には会話した記憶が無いな。

 それだけですごくうれしかった。

 

 その上、獣形態、人形態、人狼形態、などになれる面白機能付きだし、見ていて飽きない。

 

 ならばと思い女に服を脱ぐように指示してみたが、毛むくじゃらで大して美しくはなかった。

 だが、多少残っている感情のおかげで恥じらいの様な行動が見えるので被虐心が刺激され、それなりにみなぎった。


 いろいろ、帰るために実験をしていると、様子を見られるだけかと思っていた地球の街からも人が攫えるみたいに感じたので攫ってみた。

 すると、人だったはずの者が意図せずアンデッドの吸血蝙蝠になった。

 異世界への移動には何らかのリスクが有るのかもしれない。


 まあ、いまさら吸血鬼の俺が帰っても居場所はないからもうどうでもいいか。

 リスクを冒してまで帰りたいとはもう思わなくなっていた。


 吸血蝙蝠、こいつも吸血鬼どもと同じく命令しないと動かないが、超音波カッターや火魔法も使えて、それなりに戦力にはなりそうだ。


 そう今は戦力が要るのだ。

 探知に俺の大規模討伐を相談する連中が引っ掛かったのだ。


 俺はやりすぎたのだ。

 何も考えず血を吸いすぎたのだ。


 人間たちの行動は早かった。

 甲冑を着た騎士共が100人以上で攻めてきた。


 しかし、ギリギリ、死にきっていないせいで日の中で動ける人狼たちは人間どもに比べて非常に強く、この洞窟につく前に騎士共を全滅させる事が出来た。


「ふっふっふ、ざっまあみろ」


 俺はいい気になって、気ままに吸血を楽しんだ。

 もう敵は居ない! そう思い込み慢心したのがまずかったのか。


 奴らが来たのだ。

 そう勇者と聖巫女の二人組。

 人間たちが奴らに助けを求めていたのは知っていたのだ。

 だが、所詮は弱き人間であるそいつらに何ができるのか、と高を括っていた。


 それは間違いだった。

 奴らが探知内に入ったのでどんな奴らなのかとちょっと確認してみたのだが。

 後ろから様子を見ると。

 

 恐怖!


 吸血鬼になってから感じたことのない強い恐怖が内に広がった。


 そして、その魔力の大きさに唖然とした。

 今まで魔力の大きさとか気にした事がなかったのに痛いほどわかった。

 奴等には勝てないと。


 俺に探知で見られていることに気が付いたのか、聖巫女が振り向きかけるのが見えたのを最後に探知で見る映像がブラックアウトした。

 いやそれだけじゃない、もう何処も見る事も探知することも出来ない。


 まさかこんな事が? もう探知できないのか? 

 いやあの地球の町はまだ感じることが出来る。

 あの町から援軍を呼ぼう。

 少しでも多く。


 今回はここまでだ。後は奴らに勝てれば、記録しよう。

 これを見て感じる事のできる同胞よ! 奴らと敵対するな!



 目が覚めた俺は自分の体を触った。

 暖かい俺はまだ生きてる。

 嬉し涙が滝の様にあふれ出るのであった。

次話 18時 更新予定

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当にキド様が吸血鬼になってしまったのかと思ってゾクゾクしました… 主様も転生者となると、その根源となった本当の主はどこにいるんでしょうか!?
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