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閑話 見えざる活躍

 ここは、某都内にある内閣官房機密調査室。

 いわゆる内調の秘密部門だ。

 

 私は若くして副室長になった。

 自分で言うのも何だが、すべての誘惑を断りどこの派閥にも属さない稀な存在だ。

 己の優秀さのみで大きな手柄をいくつも勝ち取り出世した為、鋼鉄の女と揶揄されている。


 おや、L.T会からの機密メールだ。

 世に発表されない博士の発明によりこんな場所でも完全に機密を守ったやり取りができる。

 いや、ケイさんにはきっと隠せないか。


 こんな私でもL.T会では目立つ存在でもない。

 私が思うに貴志君からもらっている神気と言うものが影響し、魂の力が普通の人よりかなり強くなりその才能も人間では考えられないほどの可能性や性能があたえられているのだと考えている。


 そうでないと会の皆の実力が総じて常人離れしている事の説明がつかない。


 その上、ダンジョンで鍛えた戦闘力と言った面、フィジカルでも魔法でも常人の域を越えてしまっている。

 仕事柄色々な者の情報を知る私が邪魔だからと言っても、もう簡単には害せないさ。ふふふ。


 会はまだまだ中高生が中心だからこの先どんな影響力を持ってくるのか想像するだに恐ろしい。


 おっと、メールを確認しないとね。なになに、防衛省と警察庁が貴志君の秘密を探るために一度与えた銃を取り上げた。だって! 


 なんて馬鹿な事を。

 そりゃあ、貴志君の存在を把握したい気持ちも分からないではない。

 私の所にも今回の吸血鬼騒動は詳細が上がってきており、その報告にも真の解決者が誰なのか不明とある。


 まあ、私はL.T会で貴志君が解決したと知ったのだけど漏らすつもりが無いどころか、知ろうとする者は排除するつもりなのだが。


 頭固いと言うか現状が理解できてないというかバカなんじゃないかとも思える。


 最新の装備を持った警察も自衛隊にも降魔師にも全く手に負えなかった吸血鬼どもを簡単に始末した者に喧嘩売って、もし買われたらどうするつもりなんだろう?


 情報戦でも勝てないから正体が分からないというのに。

 責任者一同皆殺しにすることも可能だぞ。


 ケイさんなら顔色も変えず淡々とこなすだろう。

 しかも全く証拠を残さずにだ。


 知らないというのは本当に怖い事だな。

 さて、情報を集めますかね。


 少しデータを集めて検討した結果行動を開始した。

 私は秘匿回線で電話を掛ける。


「はい、調査班、高橋です」

「田中だ。メールは見たか?」

「はい見ました」

「なら話が速い。XXとXXとXXの身辺を調査して、脅せるネタを探せ」

「了解しました。すぐに見つけます」


 警察庁はこれで良しと。

 防衛省には直接のりこんでみるかな。


 久しぶりに会に貢献できる案件だ。

 腕が鳴るよ。


 楽しくなって来たぜー。

 私は意気揚々と防衛省へと向かう。


 私はアポを取り防衛政策局長室を訪れていた。


「これはこれは、内調の若きエース田中さんでは有りませんか。ご本人が直接とは痛み入りますな。歓迎いたしますよ」


 秘書官がお茶を優美な応接机に出し、そこに座るよう示唆する。

 うちは機密部署故、予算も少なくボロ机しかないがな。


「で、内調さんが私に何の御用でしょうか?」


 にこやかだ。私もにこやかにしながら。


「いやね、私も吸血鬼事件に興味がありまして調べていたんですが。今此方で例の少年Aの所在を探しておられるとやら聞きましたのでね。国家危機だと思いましたのでご忠告をと」

「はあ、忠告ですか? 何のことやらわかりませんな」


 と手を広げながら韜晦する。


「私のつかんだ話ですと、何でも瑪瑙家を通してアサルトライフルを譲渡したが返されたとか?」


 私はゆっくりとにこやかさを崩さない。


「ふむ、なぜそれをあなたがご存じか分かりませんが、仮にそうだとして何か問題でも?」


 彼は素直に応える。

 我ら内調に隠し事をしても碌な事にならない事を知っているからだ。


「ええ、大ありなんですよ。Aの事はどこのカメラでも確認できず。ネットを使ったイリーガルな調査でも引っ掛からない事はご存じですね」


 私は少し前のめりになりシャツの隙間から少し胸の谷間が見える体勢になる。

 貴志君以外には見せたくもないがこれも任務達成のためだ。


 私みたいな小娘が短時間で海千山千の官僚を揺さぶる為には致し方ない。

 私もこんな事までするのは初めてだ。


「ええ、だからこそ、からめ手を使ってもしかしたらと思ったのですが、バレてしまったようですな。ははは」


 私の胸元を覗きながら笑い、話をそらそうとする。

 なんで笑ってられるんだこいつ。


 だが警戒感が緩んだようだ。

 そこですかさずキッと睨み胸を隠す。


「それが問題なのですよ」


 局長は流石に不味かったと思ったのか少し慌てた様子が見えた。


「証拠は撮ってありますので。セクハラで訴えますよ」


 ニコッと笑って見せる。


 「ほう」


 すこし表情に緊迫感が浮かび始めた。


 セクハラは噂でさえ官僚にとって命取りにもなりかねない。

 がこの手は諸刃の剣。


 こちらの本気度が分かって局長は真剣な表情へとなっていく。


 今まで私を馬鹿にしていたようだがやっと真面目に聞く気になったようだ。


「局長は、ご存じですか? 件の吸血鬼に銃弾やビーム等がまるで効かなかったことを」

「ああ、機動隊が使った霊障自動追尾迎撃装置での迎撃結果ですね?」


「そうです。霊障相手の場合精神に直接攻撃され反撃できない場合が有るのでその対策がなされた自動反撃銃火器の事です」

「ええ、知っていますよ。発射し命中したデータがあるのに全くダメージを与えられなかった件ですね」


「そのデータからの分析ですと、彼らを倒すには戦車からの劣化ウラン弾数発の直撃が必要ではないかとの報告を聞いています。つまり街中では倒せない。広い空間におびき出し遠距離から戦車以上の火力で狙う必要が有った」

「それで?」


 まさか、そこまで私たちが知っているとは考えていなかったのか、局長は冷や汗を流し始める。


「そんな吸血鬼が7人もいたのですよ? 1人は瑪瑙家の天才が葬った。ですが残り6人は、A達があっという間に葬った。知ってますか? 吸血鬼達は反応速度も半端がなく、ほとんどの自動射撃を避けていたことを」

「それがどうかしましたか?」


「なら、問いますが、あなた方はAを倒せますか?」


 みるみるうちに局長の顔色が青くなる。


「いっ、いや、Aの行動から予測すると好戦的人物でないとの結果が」

「ふう、だからと言って喧嘩を売られて怒らないとは限らないでしょうに。実戦でも情報戦でも、国家機関がかなわない個人に。……怒らせればあなた個人を秘密裏に消す事なんか訳も無いかも知れないんですよ?」


 きっと簡単に実行できるよね。


「しっ知らん。もう帰ってくれ!」


 局長はガタガタと震えている。


「ならこれを」


 机に彼の痴態と今回のライフル事件の立案から実行まで経緯データが入っているメモリーチップを置いた。


「私ごときが調べられるデータ。Aが知らないといいですね。幸運を祈ってますよ。ではまたの機会に」


 内調から回って来るデータの辛辣さを知っているのだろう。

 それを見た局長はすっかり項垂れていた。


 ふう、これでこいつはいいだろう。

 後、関係者は3人っと、頑張りますかね。


「るん♪」


 彼女はうれし気に次の標的の元へと歩みを進めた。

次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。

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