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0105.繫がり

 アンは見てしまったのだ。

 探知によると信じられないほど大きな魔力を持った魔物の存在を。


(あれを倒せればアンも進化出来るニャ)


 そう考えた時、アンはふらっとタカ達から離れ、その魔物に向かってしゃにむ走り出していた。




 アンを抱きかかえて分かった。

 アンの魂が急激な魔力消費に耐えきれず崩壊し消えゆこうとしている。


「アン死ぬなー! 死なせてたまるかーー!」


 俺は全力でアンの魂を再構成し始める。

 そして、同時に燃えそうなほどに熱くなっているアンの体を冷凍魔法で冷やす。


 俺は進化によって今まで使えなかった自然属性魔法を使える様になっていたのだ。

 アンは魂の崩壊だけじゃなく体も壊死が広がっていくので体の再構成も進める。


 そう、体と魂を同時に再構成するにはとんでもない演算力と魔力が必要だが、進化して強くなった俺には何とか演算出来るはずだ。


 全力で魔力を絞り出していく。

 だが、魔力不足なのか、破壊の速度に再構成の速度が追い付いて行かない。

 このままではだめだ! なんとかしないと。


「タカ様、魔物です。魔物はわたくしに任せて、アンを頼みます」


 そう言ってケイは炎の虎や炎の蛇に向かって行き、魔力を奪い倒していく。

 その度に俺にも魔力が補填されるが焼け石に水だ。

 間に合わない。


 いったいどうしたらいいんだ?

 アン頑張れ絶対助けてやるぞ!


 何か打開案は無いのか?

 俺は焦りながら必死に賢者や吸血鬼の記憶をつまびらかに調べ、少しでも有効な方法を模索していく。


『吾輩は周りの魔力がないと転移出来ない』


 そしてハムの言葉にたどり着いた。

 つまり周りの魔力を用いれば実力以上の事が出来る。

 そう言う事だ。


 そうだ、ここは魔力に乏しい地球じゃない。

 魔力豊富なダンジョンの中だ。


 俺は周りの魔力を探知し知覚し利用可能な魔力へと変えていく。

 すると今までにない魔力が体中に溢れてきた。


 よし、これならば! 


 俺は再構成に取り込んだ魔力を加え全魔力を注ぎ込む。

 すると、徐々にだが破壊速度を構築の速度が上回って来た。

 これならきっと間に合う。

 すごい! 

 このダンジョン無限だと思えるくらい、いくらでも魔力を調達できるぞ。


 ぶわぁっと魔力が体から溢れ、その魔力でアンの体中を現状に合わせて最適化し再構築していく。

 おお今まで最適化なんて出来なかったぞ。


 つまりアンの取り込んだ魔力に見合う力を持つ体、魂に再構築されていく。

 そして、それが必要なくらいあの大きい炎の獅子は強かったと言う事だろう。


 なまじ、焼失魔法と言う無茶苦茶な魔法が使えるお蔭で倒せてしまった。

 聖が陰陽の力で実力以上の敵に勝てるのと同じことが起こったと言う事だ。


 アンの止まりかけていた心臓が力強く鼓動を刻み始め、止まっていた呼吸もゆっくりとだが始めた。

 体から煙も出なくなり落ち着いてきたようだ。


 もう大丈夫だ! 

 一時はどうなる事かと思ったよ。


 しかし、あの炎を纏って戦う姿は凄かったな。

 俺も今度やってみよう。


 まずは腕だけに焼失の炎を覆ってパンチからだな。

 うん、そうしよう。

 などと考えている内に崩壊しかけていたアンの魂と体の再構成は無事終わった。


 後は受け入れた魔力に魂と体がなじむのを待つだけだ。

 アンは今まで苦しんでいたのが嘘のように安らかな寝息を立て始めた。


「ケイ、お疲れ様。皆の所に帰ろう」

「はい、タカ様」


 アンを抱きかかえ第2層に行くと皆がアンを心配して集まってくる。


「タカ、どないやった?」


 美香が誰よりも早く駆け寄って来た。


「とても危なかった。もう少し到着が遅れれば手遅れになる所だったよ」

「そないか、まあ。間に合ったんやろ?」

「そのはずだ」

「まさかなあ、僕じゃなくてアンが暴走するなんてなあ」


 聖、お前暴走するつもりなのか?


「アンちゃんはきっと置いて行かれたくなかったんだよ。だから、焦っちゃったんだよ」

「杏ちゃんも私も皆も付いて行けるもんなら付いて行きたいんですよね」


 妹と芽衣がアンに共感している。

 二人とも暴走しないか心配だな。


「そうか」


 俺は言葉少なく答えた。

 このままダンジョンに居ても危険かもしれない。

 なのでベースに帰る事にした。


 俺は第二層からベースへと続く入り口を作り、自宅リビングへもベースから繋いだ。

 各入り口には魔法陣を敷き結界を張っておいた。

 これで部外者の侵入は簡単には出来ないはずだ。


 アンとガウはベースの各自室のベッドに寝かしつけた。

 と言うか、ガウは卵なので置いたが正解かな。


 人数が増えたせいでで家の居間(リビング)や食卓も狭く感じていた。


 だが、ベースの居間と家の居間を直結し出入りを簡単にできたので広いベースに集まれば何も問題ないだろう。

 いろいろと問題が解決だ。

 ついでに各人の家の部屋にベースの部屋を接続していいか聞いてみる。


「それすごう便利や。お願いやからすぐやってや」

「私もそれがいいです」

「僕はここに住みたいくらいだからな。問題など無い」

「タカ、いつ夜這いに来てもええんやで」


 俺にはそんな恐れ多い事は出来ないよ。


 各自の部屋を探索ベースに接続し自由に皆これるようになった。

 皆は今まで自転車や徒歩でやって来ていたからな。

 かなり楽になっただろう。


「私の本が運べる~」


 芽衣はすごく喜んだ。

 他の面々もご満悦だ。


「ケイ、まだ調子は戻らないか?」

「はい、何故か時間が掛かっています。わたくしも、ガウももう少しだと思います」

「そうか、無事進化出来るといいな」

「はい」


 その後、ケイとアンの部屋に入り様子を見ている。


「ガウもこちらに連れてきた方がいいか」

「そうですね。その方がガウも喜ぶと思います」


 ガウの部屋とここを空間接続し、ベッドごと連れてくる。


「気持ちは分からなくもないが。無茶しやがって」


 俺はアンを危険な目に追い込んだことを悔みつぶやいた。


「タカ様、わたくしやアン、ガウの三人にとってあなたは最悪の状況から救っていただいた恩人でもあります。その後も良くしていただき、非常に感謝しています。あなたの役に立つためであればなんでもできるのです。でも、さすがに今回のアンの行いは無謀でした。わたくしが叱っておきますので、あなたは優しくしてやってください」


「うん、わかった。いつも、損な役回りを頼んですまない」

「いえ、年上として、眷属として当たり前なのです。気にする必要は有りません。お役に立てることがうれしくて、立てられない事はさみしいのです」

「そうか」


 眷属化はかなりまずいな。

 これほどまでに思い込むなんて。


 ガウも同じなのだろうか? いや、見てると同じ感じだよなあ。

 もう、よっぽどでないと眷属化は控えるようにしよう。


 うん? なにか? 魔力の新しいつながりが有るような?

 こっこれは! アンにも眷属の繫がりができてるう!

 ああ、つくるまいと思った傍からなんてこったい。


 しかも、皆との繫がりが今までより遥かに強固になってる気がするぞ。


「アンは第三眷属ですわね」


 とケイが嬉しそうにつぶやいたのが印象的だった。

次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。

楽しんでいただければ幸いです。

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