閑話 いじめ
始めは多少暗い話です。苦手な方は飛ばしてお読みください。
私は結城芽衣、中学2年生。いつの頃からか私はいじめにあっていた。
皆で私を居ないものとして無視すると言った簡単なものである。
しかし、これが結構辛い。
無視するなら相手にしなければいいじゃないと、思う人もいるかもしれないけど、周りに見知った人たちがいるのに誰も相手にしてくれないのは、本当にこたえる。
世界に私一人になったような気がして、つらくて情けない。
いじめられるのは、いじめられる方にも問題があると言う人がいるが。
私が何の迷惑をいったい、いつかけたのか!
私は皆に迷惑を掛けれるほど目立った行動はしないし、出来ない。
話が少し合わない。
趣味が違う。
私が無視されるのは、きっとそんな些細な事のせいだ。
中には話が合う人もいるけど、その人たちに話をしても全く応えてくれなくなった。
「おはよう」
と声を掛けても、そっぽを向く。
それどころか嫌悪の表情で逃げていく。
私の存在そのものを否定されるようだ。
「結城さん、私達と友達になろうよ」
死にたい! 本気でそんな事を考え始める、そんな時だった。
クラスで目立つグループに声を掛けられたのは。
私は嬉しくて有頂天になった。
最初は優しかった。
しかし、時が進むにつれて変貌していった。
「喉が渇いたわね。ねえ、結城さん、私お茶がいいわ」
「私はコーヒー無糖をお願いしていいかしら」
「これお金ね」
「はい」
最初はジュースを買いに行ったり、パンを買って来たりと、いわゆるパシリという状態になり、次第にエスカレートしていった。
「今月ちょっとピンチなんだよね、結城! お金出しといてよお願い」
買い物のお金を渡してくれなくなり、お金を貸せと言いだし、最後にはお金をくれと言い出した。
お金がないと断るとお腹を殴られ、なら万引きしてこいと近くのコンビニに連れていかれるのだった。
怖かった、クラスの中心人物である、彼女らに嫌われるのが、とても怖かった。
万引きをしないと言う選択肢を考える事が出来なくなっていた。
私はどうしたらよかったのだろうか?
警察にでも駆け込めば助けてくれたのだろうか?
殺人教唆は知っている。
強盗教唆とか窃盗教唆とかの罪はあったのだろうか?
いや、警察は私が捕まってからでないと動いてくれないだろう。
そして、動いたところで助けてもくれなさそうだ。
その時私はすでに犯罪者なのだから。
「いらっしゃいませー」
コンビニに入ると人気が無かった。
それもそのはずで、もう夜の11時を回っている。
こんな中で万引きすれば絶対ばれるよ、どうしたらいいの。
目の前に有る商品に手を伸ばしては引っ込めるを繰り返していると、なぜかレジにいるお兄さんが気になった。
誰? 見たことあるような、で思い出した。
あの人は木戸先輩だ。
うちの中学校のレジェンド! 未だにあこがれる女生徒は多い。
そして、杏子ちゃんのお兄さんだ。
あのグループ内でそれはやり過ぎなんじゃない? と私をかばってくれる唯一の人のお兄さんだった。
一度意識すると、とても気になってしまい、体が何だか熱く火照って来る。
今まで経験した事の無い感覚に戸惑いを感じ、とても万引きなんかできずにコンビニを出てしまう。
ああ、でもどうしよう、私、何も盗ってこなかった。
きっとひどい目に遭わされるわ。
怖い。
怖い!
怖い!!
「様子を見に来れば何やってるのよ! 物を見せるんだよ!」
もちろん万引きしてない私は指定の品なんか持ってはいない。
なにも出せないで、もじもじしてると。
「ちょっとこっち来な!」
「いやー! 酷い事しないでー!」
私は髪を乱暴に引っ張られ、コンビニの裏に連れ込まれる。
「なんで、盗ってこないんだよ! おらっ!」
凄まれると、またお腹を殴られた。
痛い、でもなぜか心の中はお兄さんでいっぱいになってきていて、余り辛く感じない。
これなら耐えられるかもしれない。
怖さが薄れていくのを感じる。
「もう止めなよこういうのよくないって」
杏子ちゃんが少しかばってくれてる。
杏子ちゃんと友達だったら、こんな目には合わなかったのかも。
その時だった。
コンビニの裏口が開いてお兄さんが顔を覗かしたのは。
「お前らこんな所で何をやってる!」
お兄さんの声を聞いて、私の心臓は、跳ねるようにときめき、ジュン、と濡れるのを感じた。
そして、その時の皆の驚きの顔はきっと一生忘れないだろう。
何人かは失禁したに違いない。
つんと、アンモニアの匂いがしたもの。
「やっべー、逃げるよ!」
などと言いあいつらは逃げていった。
「もう大丈夫だよ」
心臓の音はさらに激しくなり、お兄さんの顔を見ることが出来ない。
「あっありがとうございました!」
やっと声を絞り出し。
軽い会釈だけして、逃げなくてもいいはずの私もその場を逃げ出した。
家に帰ってもお兄さんの事が頭から離れない。
お兄さんの事を考えるとそれだけで胸が高鳴り、体が火照り、なんだかとても変、身体中が敏感になっていて耐えられない。
中々寝付けなくて、私は初めて学校に遅刻する羽目になったのだった。
なぜか、あいつらも遅刻していた。
それからあいつらは、もう私にちょっかいは出してこなかった。
よほどお兄さんが怖かったのだろう。
でも、杏子ちゃんだけはにこやかに私に声を掛けてきた。
「芽衣ごめんね! お兄ちゃん変な能力に目覚めちゃってって、遅刻はそのせいよね。でも今の気持ちは、お兄ちゃんの変な力のせいだから、忘れた方がいいよ。お兄ちゃんモテるからとんでもない競争に巻き込まれるよ」
それを聞いて私の中の女が目覚めた気がする。
負けないきっと勝ち残る。
「で、その変な力って何?」
私はどうやら今までより強くなったようだ。
その後いじめも収束し通常の状態に戻っていった。
お兄さんの影響力の凄さに私は驚き、ますますお兄さんの事が好きになっていくのだ。
好きです! お傍にいたいです。
次話 17時 更新予定
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