0097.銃届く
俺は学生なので平日はもちろん欠かすことなく学校へ行く。
朝、教室に入るといつもの面々がショウの席の辺りでだべっている。
俺も遅い訳じゃないと思うんだけど、皆早いな?
だいたい、遅刻魔の冬二やギリギリの聖がめちゃくちゃ早い。
不思議だ。
聖が俺を目ざとく見つけたようだ。
「よお、タカ昨日ぶり」
「おはよう、聖」
「まあ、仲のよろしい事で。この、バカップルが」
「おい、タカ、冬二がカップルだってよ。照れるねー」
「ちゃんと聞け聖。その前にバカが付いていただろう」
「はっ、バカとはなんだ。この馬鹿冬二」
「ひっ! すみませんでしたー」
「怖いなら言わなきゃいいのにのう」
「冬二君はバカに見えるほど仲がいいって言いたかったのよね」
「あかりさん、ありがとう。惚れました。お付き合いください」
「またまたー、冬二君は。そのうち考えておくよ」
「聞いたかショウ。そのうち考えてくれるって」
「バカだのう」
「ふふふ、面白いですわねえ、冬二さんは」
「じゅっ、樹里さんが面白いって」
「ばかだのう」
「なんだようショウ。偉そうに。ははーさては、俺がモテるので羨ましいんだな」
「どこを、どうとったらそうなるのかのう」
「あははは、話変わるけど、聖さー、毎日タカの家に通ってるって、本当?」
「ああ、あかり。僕は妹さんと仲良くなってですねー。あと仕事の関係で」
「仕事ですか~。聖さん凄いですね~」
まずいな、樹里のつっこみがきつい。
聖じゃ誤魔化せそうもない。
俺は会話に割って入った。
「あれだよ、吸血鬼騒ぎの件に少々関わってしまって多少危険なんだ」
「そういえば聖さんってあの騒ぎが始まってから転校してきましたよね」
あかりも厳しい。
聖は目をうろうろさせ脂汗を掻き始めた。
「危険だし、この件には関わらないでほしい」
俺ははっきり言うことにした。
「分かりましたわ。タカがそう言うなら~」
「あたしも了解した。でも後で教えてね」
「話せる事ならね」
冬二とショウは横で言い合いをしているので聞いてなさそうだった。
「(タカ、例の物届いたみたいだ)じゃあね」
聖は小声でそう言い、自分の席に帰っていった。
「あら、私達も席に戻らなくっちゃ。タカまたね~」
樹里はウインクをして席に戻っていく。
「まてよー樹里、タカまたな」
あかりさんもまた席に帰っていった。
樹里さんもあかりさんも可愛いなー。
なんかリア充ってこんな感じなのかなあ。
しかし、やっと手に入るのか。
あれが! ふふふふ。
「はっはっはは」
「何がおかしい木戸貴志。たるんどるぞ。そこに立っとれ」
はっ! しまった声に出てた。
「すっすみませんでした」
どっと教室が沸いた。
くっ、この位は堪えないぞ。
くっくっく。
なんせ、実銃が手に入るのだからな!
この位くそくらえだ!
「あー、タカ変なスイッチが入っちゃってるよ」
「何のスイッチが入ったのかのう。まるで、実銃でも手に入れたみたいに見えるのう」
「なるほどねー」
「そこ、うるさい。四身冬二、三ツ木正太、二人とも私語はするな」
「はいっ!」
授業が終わって俺はルンルン気分で家に急ぐ。
「たっだいまー」
「お帰りニャ、にいちゃん。今日は一番にゃ。まだ誰も帰って無いニャ」
「お帰りーにいたん」
「二人ともいい子で留守番してたか?」
「うん、してたー」
「アンもしてたニャ」
「二人とも偉いぞ」
そう言って二人の頭を優しくなでる。
「にいたん、気持ちいいよ」
「アンも気持ちいいニャ」
ガウは周りの探索に出ていて今はいない。
そして俺は、聖が来るのを心待ちにするという普段からするとあまり考えられない状況でそわそわしながらも。
「それー鬼が行くぞー。捕まえるぞー。ガオー」
俺はウズラとアンとケイで鬼ごっこをして遊んでいた。
考えてみれば鬼人と鬼ごっこってシュールだな。
もちろん鬼は俺だ。
アンは本気で追いかけても捕まえられる気がしない。
「ただいまー、お兄ちゃん先に帰ってたんだ。芽衣も一緒だよ」
「お邪魔します」
「うちが来たで~」
「タカ殿ただいまですビャ」
そうこうしてるうちに、今日はミルスが来られないとの事なので聖以外のメンバーがそろう。
むう、遅いな?
迎えに行こうかな。
まだ家にいるみたいだし。
「ちょっと、聖を迎えに行ってくる」
「そう言えば遅いわね、お兄ちゃん行ってらっしゃい」
ピンポーン
聖の居るマンションの呼び鈴を押す。
「どちら様ですか?」
「娘さんの同級生の木戸貴志です」
「ああ、タカか、いい所に来た。荷物大きくて重いんだ。手伝ってくれ。今僕一人だから大丈夫だ、入って来てよ」
「お邪魔しますー」
部屋に入るとそこには変わった形のアタッシュケース2つと、アクセサリーや弾の箱がいくつか、散逸していた。
「持っていこうと頑張ってみたんだけど、崩れてしまって」
「無理をさせてすまないね。じゃあ、そのアタッシュケースを俺が持つから他の箱を上にのせて」
「分かった」
荷物を持って家に転移し、皆に披露しようとしたが。
美香から提案が。
「なあ、タカ。銃火器があるならベースに集合の方がええんちゃうやろか? うちの腕の発信機も大分前に電池切れてるみたいやし。うちらも土魔法が大分うまくなってな。あそこもかなり完成して、居心地もようなって来てるし、問題ないと思うんやけど」
「そうそう、私も頑張ったんだよ。お兄ちゃん」
「そうか、みんなよく頑張ったね。じゃあ、あっちで開けよう」
「わたくしはこちらに残って夕食の手伝いとウズラを見ていますので、皆さんいってらっしゃいませ」
「いつもすまない。頼めるか?」
「はい」
ケイはこうやって用事を頼まれると、とてもうれしそうだ。
「うちらも、調理は始めより多少マシになったんやけど、やっぱりまだ邪魔やねん」
「右に同じくだ」
「私、きっと出来るようになります」
美香も、聖も、芽衣も料理を諦めないなあ。
まあ頑張ることはいい事だ。
「ベースにキッチンを作って、バリバリ練習すんねん」
「美香、適度に頑張れな。よし、転移するぞ掴まれ」
俺達は探索ベースに向かって転移するのだった。
次回更新は金曜日になります、よろしくお願いいたします。
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