0096.新しい家族セカンド
『ガウ、今どうしている。終わったので帰ろうと思うんだが』
『夕飯を食べるために家に帰っているビャ。皆にタカ殿が帰ることを伝えるビャ』
『よろしく頼む』
ウズラも引き取ってやりたいが、すでに親に無理を言ってアンを引き取ってもらっている。
まだ働いてもいない学生の身分でこれ以上親に無理を言うのは、さすがに我儘な俺でも躊躇する。
寂しそうなウズラを見ないように振り切り転移した。
家の食堂に行くと妙にテンション高く母さんと父さんが俺に声を掛けてくる。
「貴志、ウズラちゃんってどこ?」
「[ウズラちゃん、おじさん怖くないよ。隠れてないで出ておいで]」
皆食卓を囲みつろいでいるようだ。
そして母さんと父さんは俺を見るなり言ったのだった。
そういやあ、お父さん達もミルスから言葉習ってたっけ。
しかし、上手だな。
「いや、ウズラは連れてきてないんだ」
「あら、ウズラちゃんは、家にでも帰したの? でもお兄さんが売ったんでしょ。危なくないの?」
母さん、詳しいな。
「えっと、施設に入ることになって」
「貴志、それはウズラちゃんが決めたのかい?」
「えっと、そうではなくて」
「なら、ちゃんとウズラちゃんに聞いてきなさい。父さんたちはその位の甲斐性は余裕で有るつもりだ。らしくない気を遣うんじゃない」
「いいの? ウズラを引き取っても」
「いいと言っている。さっさと行け。親を甘く見るんじゃない」
「そうよ、甘く見るんじゃないわよ」
「ありがとう、父さん、母さん。俺行ってくる」
「ああ、楽しみに待っているぞ」
俺はウズラのいる勇者協会に急ぎ戻る。
ウズラは部屋の隅に一人でいた。
「ウズラ、もしよかったら、俺の家族になるか?」
「うん、お兄たん。ぼくお兄たんの家族になりたい!」
ウズラが俺に抱き付いてきて泣いている。
すまん、不安にさせたようだな。
「協会のお姉さん、俺がウズラを引き取ってもいいですかね?」
「はい、たぶんそうなるだろうから、好きにさせろと、シンディさんから言われていますので大丈夫ですよ」
シンディさん、ぱねえ! 展開をどこまで読んでるんだ。
他の子たちも気にならないではないが、俺は俺の知り合い、さらに言えば好きな者を優先して助けるのだ。
すべてを救えるわけではない。
俺は基本、我儘なのだ。
まあ、助けたとはいえ初見の俺に付いてきたいと言う子もいるまい。
「さあ行こう」
「うん、お兄たん」
俺は、ウズラを連れて家へと転移した。
「[あらあら、なんてかわいい子でしょう。お父さんも来て]」
母さんはそう言ってウズラを抱きしめた。
「[母さんと呼んでいいのよ]」
「[かあたん]」
「[父さんと呼んで]」
父さんも母さん込みで包み込むように抱きしめていた。
「[とうたん]」
「[よろしくね、ウズラ]」
「[よろしく、ウズラ]」
「[うん]」
周りで見ている皆もほろりとしている。
うちの親は凄い! 世界に誇れる素晴らしい親だ。
俺もその子供として頑張らないとな。
「さあ、料理が冷めるわ、食べましょう。[はい、これがウズラちゃんの分。ここに座って]」
「[うわぁい、ありがとう。かあたん]」
俺達が昔使っていたであろう背の高い子供用の椅子がちゃんと準備してあるあたり、凄いなと再び関心する。
「[おいしいよー! ぼくこんなの食べたの初めてー。えへへ]」
「[おかわりも有るからね、しっかりお食べ]」
「[うん!]」
「さて、今日はもう疲れたので終わろうと思うんだが」
「うん、お兄ちゃん。それでいいと思うわ」
「そうやな、色々あったもんな」
「僕はまだいけるが、それでもいいよ」
「じゃあ、解散と言う事で、送っていくよ」
と、皆を家に送り、家に帰ると妹が。
「お帰りなさい。私とアンは先にお風呂に入ったから、ウズラを入れてやって」
「ああ、分かった。ウズラお風呂に入ろう」
「ぼく、水で体を洗った事はあるけど、お湯って初めて~。楽しみだな」
アンはお風呂屋に行ったことが有ったと言うのに。
あの村は言うなら国立の防人的存在なのに。
なんて質素な暮らしだったんだろうか?
首都はあんなに未来的なんだ。
もう少しちゃんと対応してやらないとだめなんじゃないだろうか。
まあ、それでも身内を売るのはどうかとは思うが。
あの環境で頑張り続けるのは責任感が強い部族だと言うのは分かる。
そこで生活していない俺があーだこーだ言うのは間違えているのかもしれないが、今の俺には受け入れがたいことは確かだ。
そう言えば妹はアンと入っているが、俺は親や妹と入っていた頃以来だな、この風呂に他の人と入るのは。
ちょっと待てよ、ガウはどうしているんだろうか?
考えて無かったよ。
後で聞いてみるか。
「よし、ウズラ服を脱ごうな。はい、ばんざーい」
「ばんざーい」
「よし、脱げたー。お風呂に入ろう」
「やったー! おっふろ! おっふろ!」
「走るなよ。ころげるぞ」
「はーい!」
「さあ、体を流すぞ」
ジャバー。
「ああ、あったかーい」
「さあ、湯船に浸かって」
湯船に入るウズラの股間が見えるが。
うんっ? 小さいち〇こはあるが、玉が無いぞ。
「ウズラ、変な事を聞くようだけど。鬼人は皆もこんな玉が無いのかい?」
俺は自分の玉を指さして見せる。
「うーん、皆にはあった~」
そうか、ウズラはその辺も変わっていたんだな。
「お父さんは何か言ってたかい?」
「ウズラは他の人に無い物を持ってるんだよって」
「そうか、その通りだね。いいお父さんだ」
「とうたんは優しかったけど、意地悪する友達も兄妹も多かったんだ。でもとうたん頑張れって、いつも言ってくれてたんだ。とうたん今どうしてるのかな~。あ~! にいたんの見たことないほどおっき~。ぼくの皆よりちっちゃいんだ~。バスたんは、ぼくの口にこれを無理やり押し付けたりしたよ~」
自分のと俺のを触りながらふざけた様に言うウズラは明るいが。
いくらウズラが可愛いからって言ったって何やってるんだバスラ?
バスラの奴どれだけウズラを虐げていたんだ?
うう、俺が泣きそうだ。
ウズラを大切に守っていこう。
そう決意を新たにした。
「バスたんのは嫌だったけどにいたんのはなんか好き」
ウズラはそう言うと俺のをぺろりと舐めたのだった。
「うっ! ウズラそんな事をしてはダメだ!」
俺は肩を押してウズラを引き離した。
「どうして? ぼくとうたんのは舐めていたよ? とうたんは好きだったし」
まさかの実の父グラの虐待である。
いや種族特性か何かかも知らんけど。
「もうそんな事をするな!」
「どうして?」
「どうしてもだ!」
俺は戸惑うウズラを抱きしめ、いつの間にか号泣していた。
次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。
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