0095.貨物船
『ケイ気を付けろ! 囲んでいる奴らは皆ただ者じゃない』
『はい、とても強いですね』
この魔力は尋常じゃない。
勝てないかもしれない。
『ケイ、もしもの時は転移でダンジョンに逃げるぞ』
俺は転移の準備をそっとし、ケイは俺の肩に触る。
囲みの中から二人こちらに歩いてくる。
んっ、何か覚えがある魔力だ。
「よお、タカ、鬼人族の子供がいない、と言う事はハズレだったのか?」
「ハズレだとしたら、また一からなしなあ」
「シンディさん、マリーさん何で?」
「悪いが、君たちを利用させてもらった。ここは人身売買のアジトじゃなかったのかい?」
「いや、アジトだった。が、すでに連れ出された後だったんだ」
「ほほー、マリー」
「あいなし」
「彼らに付いて行って、サポートを」
「あいなしー」
「俺達はここをつぶす」
「したら、あちし達は追いましょかー」
えっ、なんか話についていけない。
すると、周りを囲んでいる方々は味方ってことでいいんですよね?
「どっちに行ったかわかるなしー?」
「はっ、はい、ルシャに向かったと言ってました」
「すると、あのルシャとここの直線上にいる貨物船が怪しいなしな。遅れずについてきなし。途中の探知も忘れずにするなしよ」
マリーさんは飛び上がり聖魔法の転移で移動する。
俺達も真似をして転移した。
なるほど一瞬では有るがその間も探知可能だったんだな。
これなら早い! 横の範囲はその分狭いけど。
しかし光の速度で移動中にも探知できるとなると魔力は光なんかより相当早い事になる。
魔力って何なんだろうな?
転移中の探知には怪しい物は何もかからない。
まだ森の上に貨物船がいた。
「こんな森の中穀物運搬船が居るのは怪しいと思っていたなし。案の定探知を阻害する魔法障壁が仕掛けられているなし」
それは確かに怪しい。
というかビンゴ?
「大したことない障壁なし。あちしの探知をこの距離で阻害できないなし。中に人が載っているなしな。悪意のある見張りが3人いるなし。侵入するなし。ついておいでなし」
ええっ、俺には中の事が全く分からないのだけど。
マリーさんは貨物船に飛び乗ると手招きをする。
俺達も行かねば! 続けて飛び乗った。
そこには、飾りっ気のない鉄でできた建屋がある。
入り口に扉もなく入るとすぐ下に降りる階段があった。
「あちしは、対人戦は苦手なし。指示出すさかいによろしくなし」
「はい、分かりました」
とは言うが、マリーさんが俺達より弱いとは思えないんですけど!
俺達は階段を降りその先の通路を見る。
「あそこの角の陰に一人いるなし」
「はい」
俺は聖魔法の転移で後ろに回り込み首に手刀を食らわせた。
「タカはん、面白い転移の仕方をしなすしな。転移中に曲がるなんてすごいなし! 普通タイミングが解らずぶつかって死ぬなし。あちしにはできないなし」
「次はわたくしが」
「ケイはんにはあちしがさっきやっと見つけた探知阻害の魔道具を壊してほしいなし」
「タカ様?」
「ケイ、そうだな。ここはマリーさんに従ってくれ」
「はい分かりました」
「どうやらもっと前の方の3区画先にこの位の大きさの魔道具があるなし」
マリーさんは手を広げ大きさを示す。
「それを破壊ですね」
「そうなし。これはこの壁を抜けられるケイはんにしか頼めないなし」
「分かりました行ってきます」
『タカ様これでしょうか?』
ケイは俺にイメージを送って来た。
『そう、それだきっと』
こんな事も出来るんだな。
『では破壊します』
パーッと周りが広がっていく。
探知がしっかり使えるぞ。
あっウズラがいる。よかった。
他にも8名ほど捕らえられている子供がいた。
その部屋の外で残り2名が見張っている。
「二人で行くなし。あちしは手前、タカはんはは奥なし。では行くなし」
二人とも一斉に飛び出し腹パンを決めたのだった。
俺はカギのかかったドアを力ずくで開け。
「ウズラ! 他の皆大丈夫か? 助けに来たぞ!」
「あっ、お兄たん、ここどこ? バスたんはどこ?」
「うわーん、恐かったよー」
「私たち、助かるの?」
「あーん、おかーさんに会いたいよー」
「おかーちゃん、おとーちゃん、わーん」
拉致されていた子供たちが皆一斉に泣き出し収拾がつかない。
「皆! 大丈夫よ。あちしが、聖巫女がきっと守るなし」
「おねーちゃーん!」
「おにいたーん!」
皆に二人は泣きながら抱き着かれて身動きが取れなくなった。
「タカ様、皆を助け出せてよかったですね」
「ああ、よかった。しかし、こんな事があちこちで起こっているかと思うと気が滅入るな。あっ、ああ、心配するな。俺もすべてが助けられるなんて思ってはいない。今は助かったこの子たちの為に喜んでいたいんだ」
「そうですね。わたくしもうれしいです」
マリーさんも普段の言動を感じさせないほどの優しい顔で皆の頭をなでている。
俺も見習って皆の頭をなでるのであった。
しばらくの間そうしていると。
「こっちはどうなったんだ?」
大きな声でシンディさんがやって来た。
「おっ! その様子なら万事OKってとこだな」
「シンディさんそちらはどうなんですか?」
「こっちも万事OKさ。一人とて逃さず捕まえたさ。後はこの船を囮にしてルシャの仲間をすべて捕まえる。黒幕もだ!」
おおっ、シンディさんが燃えている。
「と言う事でタカにはこの子たちを協会本部まで連れて行ってほしい」
「俺、位置が解りませんよ」
「俺が今から連れて行ってやるさ。付いてきな」
甲板に出ると。
「今回の事は本当にありがとうな。奴らが暗躍している事は分かっちゃいたんだが、国の偉いさんも関っているらしくてな、尻尾がつかめなくて行き詰っていたんだ」
「そうだったんですね。お役に立ててうれしいです」
「おお、うれしいこと言ってくれるね。抱きしめちゃろ」
俺は、ぎゅーっとシンディさんに抱きしめられた。
ははは、はずかしいな、もう。
「後は俺達がやる。任せてくれ。悪は逃さん!」
そう言うと、シンディさんは離れ。
「協会本部に飛ぶぞいいか?」
「はい」
俺はシンディさんと協会本部と思われる建物の上空に転移し、シンディさんに捕まって降下すると建物へと入る。
その後、貨物船に帰ると俺達は勇者協会本部内へ子供たちを連れて転移した。
すぐに協会員の女の人が対応してくれる。
シンディさん手回しがいいな。
「まあ、この子達ね。もう大丈夫よ! ここは勇者協会本部なのだから」
「あのう、ウズラ達はどうなりますか?」
「親族に売られた子供は残念ながら元には帰せません。施設に預ける事になると思います。それは、また売られるからです。そうでない場合は元の環境に帰します」
「ではお願いします」
「おにいたん、ありがと。ばいばい」
「またな、ウズラ」
ウズラの何とも言えない寂しそうな顔が俺の心に重くのしかかった。
次回更新は月曜日になります、よろしくお願いいたします。
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