0093.首都ルシャ
ミルスに話を聞くと”セント・ブレイブ公国の首都ルシャの近くだったのでは”と言う事なので。
火曜日が休日だから、ついでにそこまで足を延ばしておく事にする。
考えてみれば一人なら探知できる範囲で転移も出来るのでアッと言う間に首都に到着した。
アンスラルドよりはるかに大きい街壁にある入街ゲートに並んでいると、蒼天の剣のシンディとマリーが血相を変えてやってきた。
俺も大きな魔力の接近にびっくりしたがお二人だとわかって安心した。
「なんだ、突然現れた大きな魔力ってタカか! お久だな」
ほっと落ち着いた様子でシンディが声を掛けてきた。
「そうやわ、慌てて損でしたなしー」
「お久しぶりです。シンディさん、マリーさん」
「小悪魔か何かが、侵入しようとしてるのかもと冷や汗かいたぜ」
「お二人が居られれば心配ないのでは?」
「そうでもないさ」
「でも、びっくりしたなしに」
「しかし、また強くなっているな。まあ、街に入って茶でもしながら話そうぜ」
「はい」
入街手続きを済まし、その街の大きさと先進性に驚く。
ここは、中世などではなく”未来の街”そう言うのが正しい街だった。
魔法文明の粋を集めた、そう、輝く天を突くようなビル群は日本でも見る事は出来ないだろう。
ちょっと背が高すぎませんか?
「この世界には地震とかないんですか?」
「地震ってなんだ?」
「いや俺らの世界だと地面が大きく揺れる災害なんです」
「へーそれは怖そうだ」
「地面とか揺れたら飛ぶしかないなし」
そうだよね半重力魔法有るなら揺れても怖くないか。
って地震って概念ないのかよ!
雨も少なそうだし災害自体が少ないっていいよな。
あっ代わりに魔物いたっけ。
おしゃれなテラスのある喫茶店に入りゆったりとした椅子に座った。
シックな服装の店員さんが注文を聞きに来ると。
マリーさんがにこにこしながら。
「あちしは、この贅沢フル-ツケーキええなしな~」
「おれは、甘茶。タカも頼めよ、ここはおごってやるから」
「じゃあ、シンディさんと同じもので」
「甘茶2つだ」
「はい畏まりました」
と優雅に会釈する店員さん。
アンスラルドでの騒ぎがあれからどうなったのかを二人から聞いていると。
捕まった司教のカルロと司書ゲブンは極刑になったようだった。
死刑か、なかなか厳しいな。
いや、聖水頼りのアンデッド討伐なんかは全滅とか有ったと言うので妥当かなと思い直した。
極刑以上の罰は無いので仕方ない。
そんな話の中マリーさんは超甘そうな大きいケーキをうれしそうに頬張っている。
太るぞマリーさん。
「で、タカはどうやってここへ?」
シンディさんが聞くのでダンジョンと遺跡の話を隠して、ここまでの道中と鬼人を助けた話をした。
「オークキングをやるとは大したもんだな」
「そうなましな。凄い事なましよ」
二人は俺を誉めてくれた。
そして、俺は鬼人族の村を通り途中まで神気を持つ子供ウズラを連れていたことを話すと。
「それは、おかしいな。勇者協会は鑑定のために街に呼ぶなんて聞いた事が無いぞ」
「そうなましね。必ず鑑定官が出向くなし」
えっ、それはどういうことだ?
「そう言えば、鬼人族の村は再三予算の増額を求めていたな。いまの主計係はせこいから断っていたみたいだけど」
俺の心臓は急にバックンバックンと大きな音を立て俺の耳の中で響いた。
するとウズラはどこに行ったんだ?
バスラは何をしたんだ?
俺が傍に居ながら分からなかったなんて。
「この世界おっと名前を知らないか。俺たちは”オーバス”って呼んでいるんだが、このオーバスでは人身売買は基本禁止されてはいる。しかし、全てを取り締まれるわけではない。特別な性質を持つ子供は高く取引されている、と言うのを小耳にはさんだことはあるな。胸糞悪い話ではあるんだが」
「でも探知で悪意を感じられなかったんだ!」
「探知も万能ではない。本人が悪いと思っていない事は邪気なら別だが、普通の人相手だと探知しにくいんだ」
「悪意が無かったと?」
「そうだ! それどころか村のための正義だと思っているだろう」
なんと言う体たらくだ。
あれほど探知だけに頼るまいと思っていたのに。
くそぅ! くそっ!
「俺、やることが出来たので帰ります」
「そうか、なら少し独り言だ。公的に根拠のある犯罪奴隷以外の奴隷売買はどこの国でも違法だ。契約書等も無効だな。たとえ荒事でも大丈夫、本当に人身売買組織の人間であれば殺しすら罪になりにくいさ!」
「ありがとうございます!」
「まあがんばれや」
俺は礼をし急ぎ皆のもとへ帰るのだった。
「いいのかな~、あんな風に焚付けてなし」
「ふんっ、人身売買をする奴は屑だ。多少痛い目を見ればいい。俺達もすぐ動くぞ」
「仕方ありませんなしなー。休暇が無しなし」
「いくぞ」
「あいなしー」
「ケイ、手を貸してくれ! ウズラが売られた可能性がある。手分けして探知するんだ」
皆は探索ベースにいて丁度休憩をしていた。
「はい、タカ様お任せを。わたくしウズラの魔力特性を覚えております」
「皆、すまん見つけて助けるまで帰ってこないかもしれない」
「お兄ちゃん、わかったわ。任せといて」
「タカ、ウズラ君が可愛そうや。速く助けてやってな。でも、売られるって何でや?」
「実は……」
俺は急いで簡単に説明すると、皆怒りの感情をを隠さずにそれぞれに感想を漏らした。
「そんなっ、ひどい!」
「うちな、バスラってなんか変やなって思っとったんや。説明なんかでけへんけど」
「私もちょっと変だなって思ってた。なんか、ウズラ君に冷たいように感じてたし」
「そうか? 僕にはわからなかったけど」
聖には分からなかったか。
まあ、俺にも分からなかった。
ケイとアンは悲痛な顔をするにとどまった。
ガウの表情は読めない。
「じゃあ、アン、ガウ後を頼む」
「アン、やるニャ」
「任せるビャ」
「よし、ケイ行こう」
「はいっ! タカ様」
おう、やる気いっぱいだな。
俺達はウズラと別れた村の手前に来ていた。
「ここから手分けをして、首都ルシャまで探知をして飛ぶぞ」
「はい、わかりました」
俺達は、探知サークルが多少かぶるくらいの距離に離れて並んで飛ぶことにした。
フシュー
久しぶりに蝙蝠の姿になり。
『よし、探索開始』
ウズラ、待っていろよ! おにいたんが必ず見つけてやるからな。
首都ルシャにつく手前にいくつかある小さい町の一つにバスラの魔力を見つけた。
バスラはまだ午前中だというのに、人気のない飲み屋街をふらふらと歩いている。
ケイに連絡し合流後、俺は人型に戻ってバスラに近づいて。
「おい、バスラ!」
「これは、タカさんじゃないか。どうしたんだ? こんな所で」
「それは、こちらのセリフだ。ウズラはどうした?」
「あ、ああ、ウズラは、協会に預けて来たんだ」
「それはどこだ? 案内してくれ」
ここまで言うと流石にやばいと思ったのかポーカーフェイスが崩れ、バスラは急にしどろもどろになった。
「えっ! いやあ……それは秘密の場所で……」
「協会では呼び出して鑑定することなど無いと蒼天の剣に聞いたぞ。ウズラはどこだ?」
バスラ位魔力があると思考までは読み取れない。
悪意があるか無いかくらいしか分からない。
俺はバスラの首を右手で捕まえ持ち上げ再度聞いた。
「ウズラはどこだ?」
いくら、バスラの背が高くてもこうすれば足は付かない。
「うう、苦しいやめてくれ! 知らない! 俺は知らない!」
どこまでも白を切るバスラに。
怒りが腹の底から湧いて来て俺はとうとう切れた。
「これを見ろ!」
俺は小さい焼失の火を左掌の上に灯し下の土に投げ土が消える所を見せた。
「この魔法に当たれば必ず焼失する。まずはどこから消えたい?」
「うわあっ! なんだその魔法は? ありえない! そんな威力の魔法なんて見たことも聞いたこともない!」
バスラの顔がどす黒くなっていく。
「さあ、吐け! ウズラはどこだ? 消えたいのか?」
「ひいいっ! お前は! なっ何者なんだ?」
今一度掌の上に焼失の火を浮かべ顔に近づけた。
「まて、話す! 話すからやめてくれ」
俺は焼失の火を消しバスラを足が付く所まで降ろした。
「げほっ、げほっ、仕方なかったんだ。魔獣を狩ったくらいでは、皆の食料は用意できないし、政府も仕事料金を上げてくれないしで、村は存亡の危機だったんだ」
「だから何だ」
「ウズラが勇者協会に入っても金にもならない。それよりもあんな銀色の忌子、売ってしまって金にした方が村は助かるんだ」
くっ、こいつそんな事で実の弟を。”殺せ! こんな奴生きていく価値ない! 殺せ!”魂の奥から淫欲以外の感情が初めて沸き立ってくる。いや殺すのは……だめだ殺さない!
「そんな事はどうでもいい。ウズラはどこだ?」
ヴゥン
む! 今俺から魅了以外の力が出て来た気がする。
「ひぃっ! 助けてくれ! 言うから」
怯えが凄くひどくなった。これは恐怖を与えているのか?
バスラの手の力が緩んで握りしめていた、中金貨が3枚零れ落ちる。
もしかして? ウズラを売ったお金か! 胸糞悪い。
「この町の西の森の中で奴隷商と取引した。きっとその奥に隠れ家がある」
嘘ではないはずだな。
「そうか」
「行きますかタカ様」
「おう、行くぞ!」
俺はバスラを打ち捨て西の方角へ急ぐとする。
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