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0005.コンビニはとんでもなかった

100PV越えありがとうございます

 夕食時、妹の様子が何か変なことに気づいた。


 妹の杏子(きょうこ)は小5になった位から、大体にほぼ無視か偉そうにあれしろこれしろと指図してくるようになっていた。

 小さい頃はおにいちゃん、おにいちゃんと、少し煩わしい位に懐いていたのに!

 お風呂だって一緒に入っていたのに!

 あっ、思い出したら涙出そうになった。


 そんな妹も、今は中2で、生意気盛りの反抗期で多少美人なのを鼻にかけてか気も強い。

 俺への冷遇も拍車かかっていて、取り付く島もない状態だった。


 それが今はどうだろう? こちらを時々チラッと伺っては頬を赤くして下を向いているのだ。

 しかし、あの勝気な妹もこうなると可愛い。


 しかし、なぜだ? 妹の心証がよくなる心当たりがない。

 頭をひねり考えてみたら思いついた。

 ああ、魅了のテストをした壁の向こうは妹の部屋だ。

 壁を越えて見えなくとも通じるのか。

 元から知ってる吸血鬼の能力の印象から目を見ることで効くのだと勝手に思っていた。


 次の日、夜勤に備えて早起きだ。

 昼寝して夜勤だぜー。

 もちろん日の出とともに一度焼けたぜー朝早いのでテンション高いぜー、なんてね。

 朝食時には妹はいつもの冷たい感じに戻っていた。


 魅了は効きやすいが切れるのも早いな。

 それならそれで必要なら切れたらまた掛ければいいんだし。

 ま~使い易くっていいか。

 効果が長く残るのも逆にめんどくさそうだからな。


 テンションがだだ下がった俺はその日はたいして何もせず自堕落に過ごしてしまった。

 夕方にもう一度日に焼かれ死にそうな辛い思いをした後、少し間をおいて夜勤の時間になる。


 コンビニに行きレジカウンターにいた出っ歯でひょろい兄ちゃんにバイトの旨を伝えると、横にいたガタイの良いおっさんに店長は奥にいるからそっちに行くよう言われた。


「店長はバックルームにいるよ」


 おっさんに言われたので「失礼します」と一言断ってからレジカウンターの奥へと俺は入っていく。

 唐揚げなどする調理器の先にある部屋に入る前、ドアに“バックルーム 入るときは一言掛けること”書いてあるのを見つけた。


「こんにちはー、お邪魔します」


 と声をかけ、へー、コンビニの奥ってこうなっているのか! とキョロキョロしながら、ドアを開けようとすると。


「ちょっと待て!」


 と中から声がし。


 ゴンっ! ガサガサ


 何かあわただしい音が聞こえてきていた。


 いったい何なんだ?

 少し待つとドアが開いてバックスペースの部屋から焦った風な店長と思しき人が顔を出した。


「ふん、新しいバイト君か! お前は他のコンビニのバイト経験はあるのか? ああん!」


 店長は何か機嫌が悪い。

 そんな言い方すると普通のバイト君は辞めるぞ!

 俺はまあどちらかというと図太い方だからこれくらいじゃ辞めないけど。


「いえ有りません」

「ちっ! めんどくさい!」


 なんでなんだー? 

 と思い店長をよく観察していると、言葉ではないのだ、直感的な物なんだが。


『こいつHの邪魔をしやがって!』


 とホントに何と無く分かった。


 うんこれもきっと能力だね。

 新しい能力か? いや探知を集中して使ったからだな。

 探知はどんどん精度が上がっていくな、慣れてきたからなのかな?


 しかしHの邪魔とはいったい仕事中に何をやっているんだ? こいつは。

 周りを探知すると、どうも相手らしい人も見つけた。

 そこのロッカーの中に半裸で隠れているよ。

 隠れている彼女は収まりきらないのか軽くだが自分で慰めている。

 声こそ漏らしてい無いが、エっエロイ、なんてこったい!


 店長によるレクチャーが始まるが、もちろんお相手はロッカーに隠れたままだ。


「あ~これくらい常識だろ!」

「いえその、分かりません」

「分かれよこの位!」

「えっとこうでしたかね」

「だー違うぞ!」


 だが機嫌の悪い店長は教え方も雑だ。

 これは不味いと軽く、そう本当に軽くだが店長に魅了を使うと段々機嫌もよくなってきた。


「まあ、初めてなら仕方ないか、基礎から教えるぞ」


 ふう、便利な能力だ。これだけでも人生楽に渡っていけそうだ。


「あとは実地で教えるからついて来て」


 そう言うと店長が部屋から出て行った。


 俺は「あっふうん……」押し殺した色っぽい声がロッカーから聞こえるのを無理やり無視して部屋の外へ向かう。


 カウンターに出てレジを習い始めると。


「お疲れでしたー」


 とバックスペースから三十路に入ったばかり位の、まあ、普通よりはちょっと美人めの機嫌の悪いおばちゃんが現れ店の外に出ていった。


 げっ! あれは、はす向かいのおばさんだ。


 やばいと慌てて魅了を掛けたが届かなかった。

 後で機会が有ればやっておこう。

 近所のおばさんに嫌われるのはきっとまずい。


 しかし、あのおばさん、えっと、たしか荒瀬さんだっけ? 

 こんな所で浮気しているなんて! 

 仲がよさそうな夫婦に見えるのに人は分からないもんだな。


 レクチャーも一通り終わって店番が始まった。


「ありがとうございましたー」


 帰る客に声をかけ店内を見回しても人がいない。

 店の前にある駐車場にはヤンキーがたむろしているが基本暇だ。

 まあ、深夜のコンビニなんてこんな物なんだろう。

 吸血鬼? になったおかげで俺は全く眠くはないが、いっしょにいる赤坂さんはそうでもないようで


「ふあ~~~あ」


 何度も隣であくびをかましている。


「お前は、眠くはねーのかよ! すげーな。俺は眠気覚ましに掃除してるから、ここ頼んだぞ」

「はい」


 店内に流れるコンビニのイメージソングが繰り返されるのを、暇だなと思いながら聞いていると。

 中学生くらいの女の子が一人店に入って来た。


「いらっしゃいませー」


 こんなに遅くにウロウロするなんて、親はなにしてるのかね~と自分のことは棚に上げて思っていると。

 キョロキョロと落ち着かない、様子がおかしい。

 観察しているとビビりながら商品に手を伸ばしては引っ込めるを繰り返している。

 こんな人の居ない時に見つけてくださいと言わんばかりだが、どうやら万引き未遂かな。


 気が弱そうなかわいい娘だが、ほんと人は見かけによらないな。

 人間不信になりそうだよ。

 万引きしようとする悪い子は万引きする前にお仕置きだべ~!


 まあ丁度いいテスト相手かなと思い魅了を試してみた。

 店内くらいの広さであれば力は届くようだ。

 指向性を与え女の子に絞るのも成功、先輩には効果は出ない。

 俺は彼女を見ないで、探知で見張りながら魅了を掛けていく。


 すると段々ソワソワし始めぽわぽわ状態になった。

 注視して魅了を掛けても威力は変わらないようだな。

 彼女は赤くなってこちらをちらちら見ていたが。

 万引きを諦めたのか、店を出ていった。


「ありがとうーございました」


 テストにご協力いただいて。


 彼女は俺の探知範囲内で一時逡巡し、友達らしい娘に会うとそのまま裏口の方へ移動していった。

 そこには数人の女の子がいることが探知でわかる。

 あっ殴った! コンビニの裏口でなにをやってるのかね~。


 脅されて仕方なく万引きしようとしていたのかね? 

 しょうがねーなアフターサービスだ助けてやろう。

 俺は裏口から出て彼女らを睨みながら、


「お前らこんな所で何をやってる!」


 と怒鳴りながら反撃も怖いので魅了の力も飛ばした。


「やっべー、逃げるぞ」


 彼女らは蜘蛛の子を散らすように逃げていったが、逃げる連中の中に妹の顔が見えた。

 あっちゃーあの子は……。


 万引き未遂の彼女に


「もう大丈夫だよ」


 と言ってやると。


「あっありがとうございました!」


 と軽く礼をしてこちらも見ずに走り去っていった。

 あれ、もしかして俺不審者扱い? やんならー。

 ってまあいつもの事? 

 いや、魅了を掛けた娘だよね、やっぱ不審者扱いか?


 色々あったがそろそろバイトも終わりの時間が来る。

 眠気に耐えるのが大変な夜中のコンビニのバイト眠くない俺にはばっちりだな。

 仕事が終わって家に帰り、朝日が昇るとともに日光浴。


 朝食時に妹が居た(そりゃいて当たり前)。

 赤くなり下を向いて食べている。

 食べ終わると横に来て


「勘違いしないでよね。私が虐めてる訳じゃないんだからね」


 と呟き、部屋に上がっていった。


 おお妹がツンデレに。

書くときに調べはしたんですが、通常コンビニに裏口は無いそうなんですが。ここには例外的にあると言う事でよろしくです。

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[良い点] <テストにご協力いただいて。 時々ワードセンスがキラリと光っているのがクスっときてずるい!!! 現実世界で魅了無双、何か癖になっちゃいますね!!! ってか店長何やってんだよ!!!(世…
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