0084.グラさんの家族
俺達はウズラを連れ鬼人の村へと急いだ。
「ウズラっ!」
村の入り口で待っていたグラさんが、走り寄ってきてウズラ君を抱き上げた。
「まさか、連れ帰ってこられるとは! 転移が出来るほどの実力者は違うな」
ゴウラさんも一緒に待っていてくれたらしい。
「いえそれほどでは」
「はっはっは、謙遜するな。あれほどのオークの集落だオークキングもいただろうに生還できるとは凄い事だ! 君は勇者協会の人ではないのか?」
「はあ、俺は勇者協会に居たことはないです」
なるほど、そこまで情報をつかんでいたのか。
考えてみれば結構近い位置だし当たり前か。
「ははは、この村は公国にこの森の状況を伝える為にある村だ。それくらいの情報は調べてある。勇者の派遣はすでに協会に頼んでいて。派遣こそ予定より遅れてはいるが、そろそろ勇者パーティにあそこを滅ぼしてもらう算段だったのだ」
勇者協会とやらも人手不足なのか知らないが、いい加減なものだな。
下手をすればこの集落そのものも危なかったんだが。
「この村だけですかこの森に有るのは?」
「そうだ、我ら最強の種族たる鬼人族でなくてはこのような森で生き残ってはいられぬよ」
しかし、公国か、分からん。
『ガウ公国ってわかるか?』
『たぶん、セント・ブレイブ公国の事だと思うビャ。勇者協会の総本山がある国だビャ』
なるほど。
『ガウありがとう』
『ポキの知ってる事はいくらでも答えるので、どんどん聞いてほしいビャ』
ガウは頼りになるなあ。
「話は変わりますが。ゴウラさん、ウズラ君を不吉だと言ってましたよね」
「ああすまない。我ら鬼人族に伝わる古い伝承でな。そう信じている者が多いのだ」
なんだろう? 昔悪さをした銀鬼にでもいたのだろうか?
「ウズラ君には神気が有りますよ。勇者とか、賢者じゃないですかね」
「何だって! 本当か? それなら本国に報告しないと。すまんまだ適性を調べる年では無かったので分からなかったんだ。もう、ウズラを不吉扱いする者はいなくなるだろう。ありがとう教えてくれて」
ゴウラさんは村の中に走っていった。
ゴウラさんはまじめで気苦労な人のようだ。
ウズラを見捨てる判断もきっと身を切られるような思いだったに違いない。
大変そうだな。
「タカさん、今回はウズラを助けていただいて、ありがとうございました。何もない村でありますが歓迎いたしますじゃ。家にいらして下さい」
「はい、お邪魔します」
「お供しますビャ」
「アンも行くニャ」
「そうじゃな、皆でおいで」
「「「はい」ニャ」ビャ」
『ケイ、そっちはどうだ?』
『こちらは、問題ありません。第二層でレベル上げを楽しんでおります』
『いつも留守番を任せてすまないね』
『いえ、こちらも女子会みたいで楽しいですよ。お気になさらずに』
『そうかありがとう』
女子会って男子の悪口の会って聞いたことが有るぞ!
何を言われてるのか怖くなってきた。
俺って今最低なことしている自覚あるし。
おっと皆移動を始めている。
行かなくちゃね。
「お帰り。あら、ウズラ、無事帰って来たのね。よかったわ」
グラさんとは正反対の恰幅のいい奥さんが出迎えてくれている。
「そちらの方は?」
「ウズラを助けて下さった方々だ」
「そうなの、それはご苦労さんでしたね」
嬉しそうでは有るが息子が無事帰って来た割に反応が薄い奥さんだな。
「すまんね、ウズラは、妾の子なもんでちょっと他人行儀なんじゃよ」
うそ、このおっさん妾が居るの!?
「じゃがの、不吉の子と言われるウズラにもちゃんと接してくれる優しい嫁なんじゃ」
なるほど? そんなもんなのかな。
家に入ると沢山の子供たちがいて。
「ウズラお帰りー」
「誰この兄ちゃん?」
「ひゃー天使の輪だー」
「モフモフしたいな」
「虎獣人さんだー!」
「尻尾がいい」
かなりうるさい。
しかし、多すぎないか?
「すまないねえ、うるさくて。この人あちこちで子供作っては連れて帰ってくるから」
「へっへー」
つい上ずった声が出てしまったのは仕方ないと思う。
そして、このうるさい中でもまだ寝ているウズラは大物だと思った。
お茶をいただきながらゆっくりしていると。
「ウズラを助けてくれた方々がいると聞いてきたんだけど」
「お帰り、バスラ、あちらでお茶を飲んでいらっしゃるよ」
「そうか、ウズラを助けていただいてありがとうございます。あなたたちを案内する係に選ばれた、ウズラの兄のバスラです。これからよろしくお願いします。これでもこの集落では強い方なんで安心してください」
グラさんと同じ青鬼さんだが、体もデカく強そうな息子さんだな。
「こちらこそ、よろしくお願いします。案内は週に1日か2日で、野営とか無しで暗くなる前に転移でこの村に帰って来ます」
「なるほど、何日も野営しながらの移動を覚悟していたんだが、それは楽そうで安心したよ。転移が出来る実力者と聞いてはいたが本当だったんだね」
「ううーん、おはよ、ぼくオークに攫われる夢見ちゃった」
ウズラが目を覚ましたようだ。
「ウズラお前をオークから助けて下さった方々だお礼を言いなさい」
「えっ……夢じゃなかったんだ。お兄たん、ありがとう!」
「じゃあ、今日のところは仲間を待たせていますので帰ります。バスラさん、又来ますのでその時は案内お願いしますね」
「ああ、分かったここにきて俺を呼びな。必ず案内しよう」
「お兄たんたち、ばいばい」
「ああ、またな」
俺達は鬼人の村を後にしてダンジョンへと転移した。
「かなり、体をいじられたビャ」
「尻尾を引っ張られたニャ」
俺は二人の頭を撫でた。
「よく我慢したね偉いぞ二人とも」
「我慢するほどの事もなかったビャ」
ガウはちょっと照れたように言い。
「アンも大丈夫だったニャ」
アンは嬉しそうだ。
二人ともなりは子供みたいだけど精神的には俺より大人だな。
俺はつつかれ過ぎて最後にはムカッときていたからな。
「お帰りタカ、どういったあんばいだい」
「ああ、聖。鬼人の女の人たちがオークに攫われていたんだが……銀鬼のウズラが体の色で差別されていてね……オークの集落にまで連れていかれていたウズラもちゃんと助けた。そのお礼にここから先を鬼人さんに次の村まで案内してもらう事になったよ」
俺は鬼達を助けに行ったいきさつをかいつまんで皆に話した。
「へーほな、どないな人が案内してくれるん?」
「体が大きくて強そうなウズラのお兄さん。青鬼のバスラさんと言う方だよ」
「なるほど、タカ。そんな事があってたんだね」
「ウズラ君助かってほんまにえかったなあ」
「でもお兄ちゃん、案内なんか居ない方が早く着くんじゃあないの? 鬼人さん達ってちょっと恐そうだし」
「まあそうなんだけどね、何か報酬を要求しないと助けさせてくれなそうだったから仕方ないんだ。それに見た目より気の良さそうな人達だったよ」
「鬼さんとの探索楽しみです」
芽衣はほんとぶれないね。
「タカ、第三層へいこう、僕はもっと強くなりたいんだ」
第三層に聖を連れて行くとすぐレベルアップして寝てしまったので、聖を他の皆に預け、俺達は第四層に行き何段階かレベルを上げ、今日のダンジョン探索を終わった。
次回更新は水曜日になります、よろしくお願いいたします。
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