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隠し玉②


 相変わらずの派手な音、やっぱ沙樹ちゃん先生のブレイクはすっごいわ。

 手番は四季先輩の番だけどその前にブレイクで落ちたボール確認しないとね、落ちたボールは1,3,8。


 アタシの持ち球は1,3,10、11、14・・・うん?


「ちょっと沙樹ちゃん!?いきなりブレイクで2球死んでるんですけどぉ!?」

「いやそんなこと言われても・・」


アタシの引いた籤玉の中から1と3をを壺に戻し、沙樹ちゃん先生に抗議する。

「まあブレイクで何が落ちるかは運だから」

 言いながら四季先輩が8番の籤玉を壺に戻した、唯一被害の無かったタマっちは後ろ向いて肩を震わせている、笑ってやがる。


「えーと私からだね、じゃあこの落としやすい奴を」


 そう言って構えた四季先輩はアタシやタマっちが初めてやった時の動画と違ってカッコよかった、昔教わったって言ってたし、剣道とかやってるせいかな?なんか「姿勢がイイ」って感じ?


 丁度穴前にあった赤いストライプボールに狙いをつけてポケット。


「おお、ナイスショット」と言って小さく拍手。


 こっちからだと数字が読めなかったんだけど、赤いシマシマって何番だっけ?

 ポケットされたボールがリピーターに帰ってくる、それを確認して四季先輩が言った「えーと11番だね」


「えっ!ちょっ!?」


 11番まで死亡、残りライフが2になってしまった、残るは10と14、慌てて残り2球の位置を()()()()()()()()


 それを目ざとく見ていた奴が居た、タマっちだ。

「あれぇ?もしかして10番ってイツキさんの持ち球なんですか?」とかメッチャ楽しそうな笑顔で聞いてくる。

 アタシはクールに「ドウカナ?ほら次、百合園サンですヨ~」とポーカーフェイスで返した、完璧だ。


「あ、そう、じゃあ狙っちゃお」


 もっと簡単なボールがいくらでも有るのに、わざわざ10番を狙うタマ。


「オイ、こら、タマァ!!!!!」


 幸い10番は外れたのでホッとしていると四季先輩が笑っていた。


「はははは、君ら二人は本当に仲がいいんだね、なんかもう見てるだけですでに楽しいよ。お父さんに教わった時は体育の授業みたいだったからなぁ」


 そんな風に人から言われると、なんか照れる。


 ポリポリ頬を搔きながら「タマと話すようになったの3日前とかなんですケド」と言うと、四季先輩は「えぇ!?」って大げさに驚いてた。


 タマはタマで「先輩・・・解ります、この人ちょっと人との距離感おかしいんで」とか言ってるケド、四季先輩に「いや、君も相当馴染んでるように見えたんだけど」とか言われて目を見開いている、ざまぁw


 何はともあれアタシの番!

 自分のボールのうち10番はタマの奴に執拗に狙われそうだけど14番はサイドポケットの横のクッションにピッタリついてるっていう「コレどうやって入れるの?」って感じの場所に有る。

 コレ「超ラッキー」だよね!?だってコレさえ入れられなければ生き残りな訳だし。


 そんなワケでいっちょ派手にやっちゃおう!私のライフは残り2、その他のボールは全部四季先輩とタマ、二人のボールなワケだから・・

 「なんか入ればいいや!!」


 私のボール以外のボールが密集している部分「この方向に向けて思いっ切り撃てば3つくらいのボールには当たるよね」ってとこに向かって、全力でショットする!!!


「おりゃぁぁぁぁ!!」


 最初に当たったのは4番、その4番も7番に当たり手玉も4番に当たった後他のボールに、なんかブレイクショットモドキな感じでいっぱいボールが動く。

 当然その中にはポケットに入るボールもあるワケで。


「うーん、落ちたのは6と15だよ~さぁ誰かな?」


 落ちたボールを確認、少なくとも自分のボールでは無いので上機嫌に聞く。


「納得いかない!」


 すっごいイヤそうな表情で、6と15の籤玉を壺に戻すタマ。半笑いだけど目が笑ってない、逆にこっちは笑いが込み上げてくるw


「ぷ、クス、」



___________________________



 その後はアタシは同じよう強いショットでガンガン狙い、四季先輩は落としやすいボールを確実に、タマは10番を執拗に狙う、そんな感じに順番が5~6周した頃。


 

残るボールは7,9,12,13,14


挿絵(By みてみん)


 10番も入れられて残り1球になっちゃったけどその1球は激ㇺズの14番、タマと四季先輩は残りライフ2ずつあるけど、まだまだ勝負は解んないよね。


 現在手番は四季先輩「うわー、うっすいなー。コレ角度有るのかな?」と7番のカットを狙ってる。13番を狙わないって事は13番は四季先輩のボールなんだろうな、そんで7番はタマの持ち球か、フムフム。


 先輩のショットはギリギリハズレ、「あ~、おしい!」と思った瞬間「カチカチッ!」って音がした。


「ん!?・・何の音?」


 それはショット後の手玉が14番に向かい、クッションと手玉で14番をサンドイッチするみたいにぶつかった音だった。手玉は14番に跳ね返されたみたいになり、はずみで14番がちょっと動く。


挿絵(By みてみん)


「あぁっ!?」


 思わずポーカーフェイスも忘れて声を上げちゃうのもしょうがない、だってコレどう考えても大ピンチ!

 そしてここで順番は四季先輩の次、タマだ。


「先輩、ナイスパスです!」


 メッチャ上機嫌で14番に向けて構えるタマ、あーダメだ。


 14番を入れられた時点で、アタシの持ち球が全滅。


「あーもう負け負け!」開き直って14番の籤玉を壺に戻すと、ソファーから立ち上がった。


「飲み物頼んでくるけど、なんか飲みますー?」


「じゃあ済まないけどアイスコーヒーで」「ウーロン茶お願いします」


 OK、四季先輩がコーヒー、タマがウーロンね。


_________________


アタシの分のカフェオレと一緒にカウンターに注文、四季先輩とタマの決着がつくまでアタシは改めて店内を見まわしてみた。


 入り口の方からビリヤードのテーブルが6台、奥の方にもビリヤードのテーブルみたいなのが1台有るんだけど、やけに大きくてポケットが無い。

 壁際に歩いて行くと、窓の反対側の壁にはキューが沢山立てかけられている、最初はインテリアみたいな飾りかと思ってたんだけど、それぞれのキューの下にネームプレートが有るって事はーマイキューって奴カナ?

 そしてガラスのショーケース、中にはダーツとビリヤードのグッツが置いてある。ダーツの矢とかビリヤードのチョーク、キーホルダーとかは分かるんだけど・・・

「なにコレ、タップ?」

 直径1㎝位の丸い皮のナニか。

「って、高っかっ!!」


 見た感じ1個50円位でもよさそうなのに、書かれている値段は軒並み1500~2000円、中には4000円近いものもある。


 コレはナシだけどキーホルダーとか可愛くていいかも、値段も450円だし。


 一回りしてテーブルに戻ると、1回目の隠し玉で最後まで生き残ったのは四季先輩だった。よーし、次は勝つ!


__________


 それから2回、計3回のゲームが終わった頃、ちょうど時間が来た。結果は四季先輩の2勝、タマの1勝。

「結局一回も勝てなかった・・・」


 ゲーム代は四季先輩のパパさん持ちなので飲み物代だけ払おうとしたら、「別にそれも一緒でいいよ」と言われてしまった。せっかくなのでごちそうになる、ラッキー。


 ちょっとお金が浮いたので、さっきのショーケースを覗く。


「うーんやっぱり5番かなー」


「何?キーホルダー?」

 後ろから覗き込んでくる四季先輩に答える。


「学校のバックにつけてる奴が、そろそろヤバいんで代えよっかなーって思ってるんですよ。この5番とか色が可愛いし、ミカンみたいでイイかなって」

 アタシが目を付けたのは明るいオレンジの5番ボール。


「へえ、いいね。私はそうだな、4番とかいいかな・・ピンクとか似合わないかもしれないけど」

「解りますよー、色で言ったら4番か5番が可愛いですよね」

 照れたように笑う四季先輩がなんか可愛い。


 その隣でタマが手に取っているのは、番号の入っていない白いボールのキーホルダー。

「ってタマっち、何で手玉!?」


 メッチャウケるんですけどwww

 笑うアタシにタマが余裕の表情で言い返してくる。


「だって手玉って一番重要なボールじゃないですか、後普通だったら9番とかが人気有るんだろうけど、4番5番も含めてすぐビリヤードのボールって解る物より、こういう『一見ビリヤードのボールに見えない』のをつけてる方が、解ってる人から見たら『やるな』って感じじゃないですか。


「うっわー、ひねくれてるぅー」

 一体何と戦ってるんだタマっちは(笑)


 そんなこんなで、3人とも選んだキーホルダーを買った、お揃いって訳では無いけど何かむず痒い。


 帰り際「今日は楽しかったよ、昔父親と一緒にやった時はこんなに楽しいと思わなかったけど、これならまたやりたいな」って四季先輩が言ったので、アタシとタマっちは先輩とLAIMを交換する。


「また誘ってね」

 そう言って颯爽と去っていく四季先輩はやっぱりカッコよかった。


「クラスのツレに四季先輩とLAIM交換したって言ったら羨ましがられそう!」

 タマっちは四季先輩が登録されたスマホを見ながら「どうしてこうなった・・・」とか呆然としてる。


 また一緒に遊びたいのは勿論だけど一つ問題。ソレはつまり楽しいのはイイんだけど「全っっ然、勝てない!」って事よ。


「よし」


 帰り道アタシは、「次やるまでに、コッソリ練習して上手くなってやる」と密かに決意した。


 







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