プロローグ・百合園多磨
ひらがな4文字っぽい部活動系漫画、そのビリヤード版って感じです。
楽しんで頂けると幸いです。
どうしてこうなった・・・・・・
お気に入りの乙女ゲーム、そのビリヤードイベントが凄くカッコよくて、ちょっとリアルでの雰囲気を味わいたかった、ただそれだけなのに。
いま目の前に居るのは二人の同級生、一人は確か隣のクラスのちっちゃい子。この店の店員と同じポロシャツ姿って事はこの店でバイトでもしてるんだろう。これはまあいい。
もう一人は同じクラスの『ギャル』
名字は確か猪熊で、同じ『ウエ~ィ』系の友達から「五姫」って呼ばれてたからそれが名前なんだろう。
場所はビリヤード場、店内はほぼ満席で空いているテーブルは1つ、そしてほぼ同時に入店した私とギャル。
その二人を前にして、ちっちゃな店員が提案したのだ「同じ学校なんだし、一緒にやったらどうですか!?」って。
無理!!!
同じクラスとは言え、入学以来まともに話した事など一度も無い。そもそも陰キャでオタクな私とその子では人種が違う!一緒にやってる時、後からその子の友達が来て合流とかされたら、光属性の陽キャに囲まれて消滅するぞ私、マジで!!
そもそも人付き合いが苦手な私は瞬時にそう考えて、丁重にお断りしようとしたんだが。
「え~!?マジそれ良いかも!、確かおんなじクラスの人っしょ?いいじゃん、いいじゃん」
おおう、グイグイ来る、これがコミュ力と言う奴か。
その後店員のちっちゃい子(古賀沙樹と言うらしい)も含めて話すうちに、私とその『ギャル』が同じテーブルを囲んで一緒に楽しくビリヤードをプレイする事は、すでに既定路線となっていた。外堀は完全に埋まり逃げられる雰囲気ではない。
もう一度言う、どうしてこうなった・・・
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「おー、何か凄いお嬢様みたいな名前!」
私の名前を聞いた時の『ギャル』こと猪熊五姫さんの反応だった。
『百合園多磨』それが私の名前だ。
「ええと、そっちは『猪熊さん』で良いんだよね・・」
と返すが猪熊さんは、凄いイヤそうな顔をした。
「あー・・アタシ名字で呼ばれるの嫌いなんだよね~、『猪熊』とか無しでしょ!全然可愛くないし。だから名前で呼んでくれればいいよ、呼び捨てでいいから」
猪熊さんは自分の名字が嫌いらしい、個人的には凄く解る。
とりあえず「じゃあ五姫さんで」と返しておく、同性とはいえいきなり名前呼び捨てとか私にはハードルが高い。
私も猪熊さんとは別ベクトルで自分の名字が嫌いだった。
「百合園さん」とか名前負けが過ぎる。かといって名前で呼ばれるのが好きかと言うとそうでもないが、仕方が無いので「私も名前で呼んでくれればいい」と言った途端、五姫さんは全く躊躇わず呼び捨てにしてくれた。
じゃあ「タマ!」
その瞬間、某国民的ファミリーアニメの白い人面猫が頭をよぎる。
「あはははは、タマっ、タマって、あははは」
五姫さんの頭の中にも同じ映像がよぎったのか、自分で言って自分でウケている五姫さん。
いや、流石にそこまで笑わなくても。ちょっと腹が立ったので思わず暗黒微笑を浮かべて言った。
「五姫さんもちょっともじってニックネーム風の方が可愛いかな?、五姫さんとかどう?」
「ゴ・・ゴキ・・・」
笑っていた五姫さんが笑い止んで、顔を引きつらせる。
「いやゴメン笑いすぎた、じゃあ『タマちゃん』か『タマっち』で!」
んー、まあ落としどころか。
もっと険悪になるかと思ったが、五姫さんはすぐに謝って「なはは」って感じに笑ってる。
ギャルって事でビビってたけど以外と話しやすいし嫌味も無い、完全に光属性だなこれは。
そんな訳の分からない感想を持っていると、テーブルの清掃を終えた沙樹さんから声がかかる。
「準備できましたからコチラへどーぞー」
呼ばれた私達は顔を見合わせて、沙樹さんの呼んでいるテーブルに向かって歩き出す。
これが私がビリヤードにかかわるようになった第一歩だった。
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話ごとに誰視点で書かれているかが変わったりしますが、基本的に主人公二人のどちらかの視点で進んで行きます。1週間に1話程度のペースで進めていけたらいいなと思ってるので、よろしくお願いします。
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