彩3
あの場所は、
と言って、僕はまた言葉に詰まった。
何を返答すればいいのか?なんて考えていなかったし、第一、何の理由があって僕は彼女を止めているのだろうか?
たった、一言。
危ないからさ、と僕の内心とは関係なく口は動いた。
彼女はそれを聞いて、くすくす笑いが止まらなくなったようだ。
自殺しようとする人に、危ないはないんじゃない?
そういって笑う彼女は、さっきとは打って変わって、まるで普通の女の子のような笑い方だった。
そうだね、
と僕は言ってから、
それもそうか、
と一人納得した。
あなたは、
と彼女は僕に話し掛けて、
変わっているわね、
と締めた。
君ほどではないさ、
と僕はまた話し掛け、
たぶん、
という希望的観測で締めた。
そして、僕は彼女を見て、くすくす笑いが止まらなくなってしまった。
こんなふうに会話している僕達を見て、クラスメートは、
僕を、神だと勘違いしたらしい。
次の日から、僕は誰を見ても、視線をずらされるはめになった。
(僕が廊下を歩いているだけで、空気がぴーんと張り詰めるんだ。苦しいなんてものじゃない)
そのたった10分たらずの会話で、僕は多くのクラスメートを遠ざけ、
代わりに、
彼女ー彩ーという友達が
出来た。
僕達は毎日一時間置きに、2〜3言話す仲になった。
彼女が、実は未来が見えることも解ったし、歌が好きで、驚くくらい上手だということも解った。
ついでに言うと、
一緒にお弁当を食べる仲にもなった。
すこし、言わなければいけない。
「未来が見える」
これからお話するのは、
彩の、その力が垣間見えた時のお話である。
前フリだけでも言っておくと、
僕の学校には、元原という体育教師がいた、いうことを知っておいてもらいたい…。