誠に生きる
生きた心地しかしない。
ザンエイは師匠の身体に戻り、純粋な悪魔『残影』として受肉したのだ。
俺は……俺は愚か者だった。浅ましい腹積もりで半身である悪魔にすり寄って、図星を疲れ投げやりになってこんなことになってしまった。
「今までテキトーに生きてきたツケが回ってきたのかもな」
ずっとそうだ。
「師匠に拾われたからってだけでこの世界に逃げてきたんだ」
何をしてもつまらなかった。
「非日常的に思えたから、何かが自分を埋めてくれるような気がしたんだ」
でもそれは。
「一人が怖かったんだ、ずっと」
俺が欠けているからじゃない。
「師匠が死んだ時から俺の時間は止まってる、そういう嘘でごまかしてきたんだ。でも…………」
俺は…………。
「自分を殺すのはやめだ」
残影は受肉したてのごつごつした身体を震わせている。俺の話など聞いていない。だがそれでいい、俺が話しかけているのはコイツじゃない。
「真名をもって存在を許されよ、その名を」
「『赤裸』」
病院に落ちる雷。それは誕生のファンファーレ。
もう砂嵐じゃあない。
「誠よ、この真名はどういう意味だ?」
「名は体を表す、そういうことだ」
服は雷で焼け焦げ、裸は痛々しく赤かった。それが何よりも自分らしく、誇らしく思えた。
「業魔全一を成したのか、面白い。最初の晩餐といこうか」
正面から襲い来る巨体。隆々とした筋肉に影をまとわせ、一撃には確実に屠るという意志がある。
「術魔の開示は必要無い、俺はお前だからな」
構えた手から伸びた影が揺らめく。
「月法など私の術魔の模倣に過ぎん!」
残影はこの時勝利を確信していた。
「唯識術魔〝泥炎〟」
拳を黒い炎が包む、次第に手が黒ずんでいく。肉の焼ける臭いが立ち込める。
「コレ結構痛いんだぜ」
正面衝突、オーバーラン。すれ違い様に互いに一撃。
誠の腹部は深く抉り切れて鮮血を撒き散らしながら臓器がうなだれている。
対して残影傷は無い、が影がゆらりと揺らめき始める。
「なんだこれは、見かけ倒しか?」
残影の影は誠の拳と同様、黒い炎が力強くうねりをあげる。
足元からじりじりと燃え広がる。見る間に全身大炎上、もう影を武器には出来まい。
「熱い、が耐えられない訳では無い。この炎に焼かれて朽ちる前にお前の身体を頂こう!」
呑気に喋っているうちに足元の影を使い素早く懐まで潜り込む。
「「俺達、な!!」」
両の拳をありったけの炎で包む。身体を捻切るつもりで拳撃に回転を乗せる。回転の力で上半身と下半身が分離、ドリルさながらに一撃。
《螺旋黒》
黒い炎が渦を巻いて残影の身体を駆け抜けた。腹を穿ち炎は全身を蝕んだ。
残影は灰さえ残さず死んだ。俺も自身の炎と共に揺られ灰と化した。
生井澄広です。
最後まで読んで頂いて誠にありがとうございます。
今作は私が初めて完結させた作品ということもあり、かなり無理矢理で理解不能な内容になっていると思われますが雰囲気だけでも楽しんで頂けたら幸いです。
正直書いてて自分でも文章下手過ぎて伝わらんだろうと思っているのですが、こうしたかったんだろうなぁ~(遠い目)と見守って下さい。
今後ともよろしくお願いします。