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カゲボウシ  作者: 生井澄広
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希望の影

短くてすみません。

初めて傍点を使いました。

 悪魔は差別されるような存在なのだろうか。そんな事ばかり考えている。入院して一週間くらいが経っただろうか、俺は独房にいた。


 祓うと脅され訳も分からず入院した俺が馬鹿だった。実際は病院なんてのは真っ赤の嘘で、ここは悪魔になった者や魔が差した人間、悪魔と人の子供やらが集まる収容所だった。


 悪魔に近ければ近い程、頻繁に解剖され実験材料にされている。かく言う俺も採血はもちろん、痛覚実験や修復実験と称して拷問と変わらない仕打ちを受けている。


 俺達は囚人とは違うらしく、働くことも許されない。悪魔にはそもそも人権が無いらしい。


 独房は常に薄暗くじめじめしていて独特に臭う。今が何時なのかもよく分からない。極限に近づいていくのをひしひしと感じた。


 食事は唯一の楽しみになった。何の薬物が入っているか、それで俺をどうしようとしているのかが分かるからだ。


 くちゃくちゃとわざとらしく食べる振りをして口内の影で包んで呑み込む。腹痛は拷問ほどではなかったし、その痛みで正気を保てた。俺のはいつも脂が浮いたような真っ黒だった。


 糞を調べられたら終わりだと分かっている。Xデーに向けて策の用意を迫られた。


 投獄から毎日、俺は影に話しかけた。俺様と名乗る砂嵐とコミュニケーションを図る為だ。


 監視官の前だと俺は役者になった。薬のせいで終わりに近づいていく人間、皮肉にも手本は山ほどいた。飯のせいだと笑われた時はしめしめとほくそ笑んだ。


 影は言葉をかけると返事はないが手を振るようにゆらゆらと揺れる。確かな反応にガッツポーズ。小さな進歩に心が躍る。


 そして思い出す、砂嵐との一方的な会話、その断片。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 俺が人間として死ぬまで煤貝誠を名乗っていい、人間を名前で縛ることで住み分けをしよう。そういう事だと勝手に思っていた。


 しかし名前で縛っていいと言っているのだ、悪魔も名前で縛ってしまえばいい。右左はっきり別れる程に。


 影に投げかける。


「契約がしたい、話をしよう」


 意識は闇に沈んでゆく。その時の砂嵐は確かに笑っていた。


生井澄広です。

無音の世界を取り戻しつつあります。

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