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カゲボウシ  作者: 生井澄広
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墓参り

勢い任せに書きたい訳ではないのですが……

どうしてもそうなっちゃうので仕方ないですよね。

 世界は退屈でできている。 

 師匠は言った

「お前の心には穴が空いている。その穴に大事なもんを落っことしてるんだ」

 俺の心から何かが欠けているのなら、その何かはどこへ行くのだろう。

 その何かのあった穴は、どうやって塞げば良いんだろう。


 十五の時に師匠は死んだ。殺されて当然のクズだったけど、俺には必要な人だった。

 いつも死体を相手に話しかけていて、決まってその死体は生き返る。

 医者とは違う気味の悪い仕事をしていて、抜けてる癖に妙なところが真面目で……


「なんで死んじまったんだ」


 広い丘にぽつんと独り。嗚咽が混じりに墓にもたれる。

 だめだ、感情に流されるな。十七にもなってみっともない。恥ずかしい。


「恥ずかしくない、恥ずかしくなんかない」


 小声で自分に言い聞かせる。今だけだ、泣いて良い。

 ポツリポツリ、次第に強く。雨が心地よかった。

 その時は少し許されたように思えた。


 ピリリと、空気が変わった。

 ゾワゾワと寒気が走る。毒に侵されたように空気が不味い。

 ぎょろりとした一つ目玉に剥き出しの歯茎、二メートル半の顔から濁った羽根が二枚。

 素早く影を確認する、ああやっぱり。



 悪魔だ。



「チッ」


 思わず舌打ち、棘がある。感情を操れ、怒りは後でいい。


 化物との距離は十メートル、詰めて一撃、冷静に組み立てろ。

 どこから出た?

 ここは開けていているが結界は張ってある。

 だとすると…


「ああ、俺か」


 自分の尻は自分で拭かないとな。


 立ち上がってほんの少しジャンプ、体をリセットする。

 雨粒が見える、よし。


 一気に駆け出す、水しぶきを上げる程に。

 ずるずると自分の影を脚に這わせる。生まれ変わるようだ。

 更に早く、地面が捻り切れる程に。


 悪魔目掛け一瞬の跳躍。

 脚から胸を伝い腕、拳まで影で覆う。

 笑顔で拳を振り抜いた。


「イギギギィエエエエェエェェェェ!!!!!!」


 顔面を抉られ、奇声をあげる悪魔。姿はたちまち崩れ、泥になっていった。

 返り血は全て影で受けた。後は雨が洗ってくれる。


「柄にもなく感情的だったな」


「仕方ないだろう不愉快だったんだ、水を差されるのが」


「分かってる、次から気をつければいい」


 俺が複数に別れて高ぶる気持ちを鎮火する。

 自分で生み出した悪魔を片付けて発散か。気持ち悪いな。


「師匠、また来ます」


 俺は墓を後にした。

生井澄広です。

今作「カゲボウシ」は出来る限り続けて書きたいと思っています。

精進します。

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