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第82話 養分

 ゴードンさんが亡くなってから、15年以上が経った。


 その間に、ジュゲンさんも亡くなった。さすがに高齢だったので、ゴードンさんの時とは違い、悲しむというよりも、むしろ明るい別れだったように思う。


 亡くなる前、最後のステージでは、アンディさんが参加してくれた。

 もちろん、アンディさんは怪我の後遺症でまともには弾けない。

 まだ動く左手一本で、低音部のみを演奏した。


 ジュゲンさんと一度でいいから共演したい。

 アンディさんのたっての希望だった。


 ジュゲンさんは最後のステージでも、最高の演奏をしてくれた。

 終わった後、すっかり皺も増え、背中が曲がってしまったアンディさんに「まだまだじゃな」と言って笑わせていた。


 葬儀は国葬。すっかり大人の顔つきになった国王も参列していた。

 ルネボレーと国交のある国からも、数多くの人が訪れた。

 そしてもちろん、ジュゲンさんの演奏を聞いてきた多くの人々も。


 他の種族の世界での追悼ツアーも行った。

 ジュゲンさんは、どこの世界でも、死ぬまで人気者だった。


 指先は、鍵盤を叩きすぎたせいか、石のように固い。その石のような指で、私と握手をし、若い女の子のお尻を撫で、そして華麗にピアノを奏でた。

 偉大な指だと思う。



 ゴードン&カンパニーはさらに拡大路線を取っていた。


 ルネボレーだけではなく、世界各地でもその名を知らない者はいないほどである。

 今まで以上に様々な分野の事業を行っているそうだ。

 もっとも私は興味ないので、細かいことは知らないけども。


 相変わらずアイドル部門については、私が責任者になっている。

 私の考えで、私のやり方でアイドルを世に送り出し、石板を作る。

 これまでと、なにも変わりはない。

 ただ、マネージメントや営業、経理部門など、多くの人が増えた。顔を見たこともない人も大勢いる。


 演奏についていえば、今ではバックバンドを5つも抱えるようになっている。

 各地でのライブに対応するためだ。

 もちろん、カズくんがリーダーのハンサムボーイズが筆頭ではある。ピアノには、エルフ族のピアニストが代わりに入ってくれた。


 もちろん、新たなアイドルグループも数多く増えている。


 だが、乙女組は、三人とも結婚を機に引退。ただしトレーナーとして、三人とも私の手足となって動いてくれている。

 今でも心強い三人だ。


 きらきらストーンも、解散した。

 ジェニーはソロで今でも歌い、マイは元アイドルのタレントとしてテレビなどで引っ張りだこである。

 フィーとアミは引退して主婦となっている。表舞台には顔を出さないが、旦那さんや子供の世話の合間に、たまに私に会いに来てくれる。


 みるくちょこれーとは、解散ではなく、活動休止と言う形で、それぞれ単独で現役を続けている。みんな結婚をし、子供を産んでから活動を再始動した。


 まだ活動を続けている人には、若い子の面倒も見てもらったりもしている。


 今の私の役割は、グループ結成まで練習生を育てること。

 オーディションで採用をし、育て、効果的なメンバーの組み合わせを考えてグループを組ませる。そこまで。


 グループを組んだら、先輩に頼ったり私に相談しに来ることはあっても、主に自分たちだけでその後はやっていってもらう。

 それまでの力をつけてあげるのが、私の役目だ。


 その後のグループでも、解散したものはいくつかある。


 欲をいえば、どのグループも解散なんてして欲しくなかった。

 年齢に関係なく、結婚などとも関係なく、ずっと、アイドルグループのままでいて欲しかったの。


 でも、このところ思うの。アイドルというのは、花火のようなものかもしれないと。

 ぱっと大きく咲いて、さっと消えてなくなる。

 アイドルとは、限られた瞬間に、どれほどの大きな花が咲かせられるかということなのかなと。

 そういうものなんだと思うようになってきた。


 ただし、花が散ったとしても、実がなる。


 今、元アイドルと言われながらも活躍している子たちは、実をつけてなお、大きくなろうとしている。それまでに吸い上げた沢山の養分をもとに、これからも吸収しながら、さらに大きな実をつけようとしている。


 そうなれるように、まだ芽吹いたばかりの芽に、私はいっぱい養分をあげようと思う。


 時に鬼のように厳しいかもしれない。

 でも本当に身につけるには、厳しさを知らなければならない。お客さんの目は、私が怒鳴るより、遥かに恐ろしいものよ。


 その中ででも、自由に羽ばたけるように。


 そんな私の考えも、なかなか通用しなくなってきたらしい。世間から批判されることも多くなった。あまりに厳しいというので、逃げ出す子も出て来た。

 そうならないようにと、採用する時に気を配ってはいるんだけど、なかなか思い通りにばかりはいかないものね。どうしたって、その子のことを全ては見通せないもの。


 そんな中でも、努力してグループになっていく子を見ていると、とても嬉しくなる。

 一人として同じ子はいない。

 一瞬たりとも気が抜けない。


 だから面白い!


 グループを組んで、その娘たちがグループの魔法(マジック)で科学変化を起こしていく様を見ると、本当にやってきて良かったなって思う。

 本当に大変だけども、私にとっては楽しくて嬉しくてワクワク出来ることなのよ。


 そう思うからこそ、みんなに言うの。


「あなたなら出来る」と。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m


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