表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/102

第79話 新グループ結成

 新グループの構想は諦めないといけないかしら……。


 そう思っていたら、アミが手を挙げた。


「わたし、出来ます!」


 わお! 本当?!


 早速、4人を呼んでリハーサルを始める。


 でも、ん……?


 アミ、無茶苦茶……。

 音もリズムも合ってない。

 ベースは確かに弦が太いから力がいるんだけど、押さえられてもいないじゃない。


「ねぇ、弾けるんじゃなかったの?」とアミに訊く。


「今はまだ弾けません!」

「えっ、じゃ、なんで手を挙げたの?」

「今はまだ弾けないけど、弾けるようにします!」

「ベースを弾いたことは?」

「ないですっ!」


 キラッキラとした笑顔で言われた。


 ……私はこの笑顔に弱いのよ。


 確かにウソは良くないわ。

 やったこともないのに出来ますって言うなんて言語道断。


 でも、チャンスは「幸運の女神の前髪」っていう。

 幸運の女神は誰にでも訪れるけど、前髪しかなく、向かってくるときにしか掴めない。いくら後から追いかけようが無駄。

 その瞬間に気づいてすぐに掴んだ人だけのもの。


 その意味では他の練習生よりも、一歩どころか数歩も前に進んでいるのかもね。


「わかったわ」


 私はそう静かに言った。


「でも、少しでも甘えたら、容赦なくここから出て行ってもらいますからね」

「はいっ!」


 アミの声は華やいでいた。


 OKって言ってはみたものの、さてどうしたものか。

 とにかくベースは、カズ君にマンツーマンで教えてもらうことにしよう。


 でも、忙しいメイシャに歌のレッスンは頼めないし。

 他の練習生で私も手一杯になるかもしれない。まだまだみるくちょこれーとに教えなきゃいけないこともあるし……。

 とっさの思いつきで動いちゃったんだけど、色々と問題があることに気づいた。


――あっ!


 乙女隊のリーダー。チーちゃんにお願いしたらどうかしら。

 彼女ならメイシャ以外で一番私の考えを理解している。メイシャから直接歌のレッスンも受けている。


 メイシャが急にレベルアップしたのは、レイナに教え始めたこと。

 さらにレベルアップするには他の人に教えることよ。気づいてないで出来ちゃってたことが、きちんと理解できるようになる。

 チーちゃんのためにもなるかもしれない。


 チーちゃんに話したら、即答で「やります」と言ってくれた。

 それだけではない。乙女隊のみんなで、新グループのみんなを見ていきたいと話してくれた。


 どこまで任せるかは考えどころだけど、乙女隊のレベルアップにもなるかもしれない。

 いいかも!

 私は、新メンバーのことをお願いすることにした。



 アミはとても呑み込みが早かった。カズくんも驚いていたほど。

 私が見た時は、練習のしすぎで指はボロボロになっていたけどもね。

 それに、アミは他のメンバーとも、とても仲良くやっていた。

 あの笑顔の効果は私だけではないらしい。


 ジェニーは相変わらず突っ走るところがあったけど、前に私に言われたことがいつも頭にあるようだ。ウェンディを見習って、他の人がどうしたいかを考えているみたい。アミの一生懸命さも、口を出さずに、ただひたすら応援しているようね。


 で、そうやって積もりに積もった鬱憤(うっぷん)みたいなものを、ジェニーは歌う時にぶつけてる。あくまでメインボーカルなんだから、それも良し。迫力が増していいじゃない。


 意外にジェニーはマイがちょっと苦手のよう。突っ走ろうとする時のブレーキ役になってるそうだ。


「そこのフレーズ違うっ!」


 アミの間違いをジェニーが怒ったんだけど、実は間違えてたのはジェニーの方だったらしい。

 少し緊迫した雰囲気になったんだけど、マイが「全員にアイスクリーム一個で許してあげるね!」って笑いながら言ったそうだ。もちろん、その後にアイスを(おご)ってもらったかはわからない。


 いい切り返しよね。彼女の独りよがりな悪い面を、マイのユーモアが救ってくれてるんじゃないかと思う。


 フィーはアミの行動力に感化されたみたい。今までなにをするにも頭で理解してからじゃないとやらなかったんだけど、アミのとりあえずやってみようとする態度、それと成長していく姿を見て、考えるより先にやってみようというところが出て来た。


 乙女隊から定期的に報告を貰っているのだけど、いいチームになっているようね。

 アミのベースはまだまだ。

 他のメンバーの演奏力も、到底ハンサムボーイズとは比べようがない。自分のパートをこなすだけで精一杯。他の子の音までは聞けていないそうだ。


 それでも、グループとして完成しつつあると思う。


「あなたなら出来る!」


 みるくちょこれーとに入れなかった時、ジェニーとマイに言った言葉だ。

 二人とも、強く覚えていたらしい。

 その言葉を信じてここまでやってきた二人。

 そして、一旦は抜けたものの、諦めきれずに独りで続けていたフィー。

 そして、ベースを触ったこともないのに「弾ける」と言って参加したアミ。


 グループの目標は「あなたなら出来る」と大勢の人に伝えたいのだと言った。

 いいと思う。4人のこれまでが詰まった言葉よ。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ