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第78話 夢

 地下のスタジオが完成間近だ。


 見学に行ってみたら、驚いたの。

 天井は光る壁になっていて、蛍光灯とか照明とか一切見あたらないんだけど、自由自在に暗転できたり色も変えられる。スポットライトだって思いのまま。

 壁の素材が気になってたんだけど、王立楽団のように音を吸収もできるし、逆に鉄板のようにいくらでも響かせることもできる。反射する量を指定して、思い通りに変えられるんだって。


 この世界では今までいた世界よりも、どことなく文明的には遅れてるんじゃないかと思ってたけども、一切そういうことじゃなかったの。

 人々の関心がモンスターとの戦闘にあって、そればかりが発達して来た。しかも、魔力っていう凄いものがあるんで、あんまり技術ってものが発展しなかったようね。


 立体的な映像を飛ばす技術、つまり前にいた世界のテレビや動画のインターネットの進化版みたいなものも一気にネットワークが整備されていったし、そのうち映像だけじゃなく、匂いやその場の「空気」も送ることが出来るそうよ。


 ドワーフ職人やトータ族などの力が大きいのだけど、平和になりつつある今、主に戦闘に向けられていた関心が、色々なところで応用されている。照明の技術なんて、国を挙げての戦闘の際に使われたものをコンパクトにしたものらしいわ。


 同じようなものを、魔族とトータ姫の国にも作ってもらう予定。


 本当は種族とかの垣根もなく、みんな一緒に歌って踊って欲しいんだけど、ネックはやっぱり人族のようね。一筋縄じゃ行かなそう。でも信頼できそうな人には伝えている。徐々に協力者も増えてきているのよ。


 ルネボレーの王様のところにも、城に忍び込んで王様の部屋にたどり着けた。直接ワープして、一対一で話すことができるようにもなってるの。相変わらず、ウサギの被り物したままの対面だけどね。


 人族が辿って来た、隠された歴史についても伝えた。

 とっても驚いていたわよ。

 その上で仲良くなって欲しいと言ったんだけど、そういう歴史があればなおさら、すぐには他の種族と仲良くなるのは難しいと断られちゃった。王家が主導してやるというわけにもいかないとも。

 当然かもしれないわ。


 ただし、人族が無闇に領地を拡大しようとはしないこと、この一点だけは約束してもらったの。


 点々と街がある理由は、強い種族や荒れた地形が間にあるせい。点在する街を統合すればさらに強大な力を持てる。

 また、平和になればなるほど、さらに人口は増えていく。住む場所がもっと必要になる。

 この二つを叶えるのは、領土の拡大を目指した侵攻。

 だが、他の種族の領地を奪い合うことになれば、また愚かな争いの歴史に突入してしまう。


 王様は、全力で阻止すると約束してくれたわ。


 そしてもう一つの私の夢。

 それは、育てたこの子たちに、素敵なステージを見せてもらうこと。

「あたし」だった昔には全然思いもよらなかったことよ。


 実は私自身の夢はもう一つあるんだけど、これ、叶うかなぁ。

 色んな所に手を回せば出来そうな気もするんだけど、正々堂々と叶えたいなって気もある。なんで、ゆっくり機が熟すのを待とうかなとは思ってるのよね。甘いかなぁ。


 地下ステージも見えて来たんで、あとは出演者選び。

 乙女隊、みるくちょこれーと、そして私。

 出来ればもう一つ、新しいのが欲しいところ。せっかく練習生の人数も増えていることだし。


 やはり、マイとジェニーは、ここで長い間トレーニングを積んでいるだけあって、周りの子たちと一つも二つも飛び抜けている。

 フィーも、いい感じ。


 ただ、どうしてもこの三人でグループを組むというイメージが湧かないのよ。


 ジェニーもフィーも歌は上手い。

 二人組ということも考えた。

 でも、ガンガン前に出てくるジェニーと、一見地味なフィーの組み合わせがしっくりくると思えないの。

 しかも、この二人ではあんまりインパクトが感じられない。

 そこにマイを入れたとて、あまり変わり映えはしない。


 メイシャにも相談してみたが、もうわたしは口を出さないわと言われてしまった。

 グループ名だけは考えてもいいけど、と笑ってたけど。


 そんな時にね、マイがヒロさんにドラムを教わってるところを見たの。

 もちろん教わってるとは聞いてたけど、正直そんなに期待はしてなかったのよ。もともと音楽をもっと知りたい、っていう理由だったし。


 でも、見てて驚いた。

 基本的なところは、しっかりマスターしている。

 ヒロさんほどシャープなリズムではないし、少し複雑になると途端におかしくなる。単なるドラマーとしてステージに立つのは、まだ無理だろう。


 では、グループのメンバーならどうだろうと考えた。


 ジェニーもギターの腕は上達していた。

 フェリペさんみたいに尻尾も使った超技巧的なソロなんてもちろん出来ない。

 でも、単純な伴奏なら問題ないかも知れない。しかも、弾きながら歌える。


 今までグループというものを、メンバー全員で歌って踊って、というようにだけ考えていたが「バンド」というのはどうだろうかと思い返してみた。


 ジェニーがギターでボーカルを取るって、それだけでもワクワクしない?

 ちょっとやんちゃなジェニーの性格も、バンドならウリになりそうだし。


 あっ、フィーはピアノを練習していたわね。

 ギター、ベース、ドラムというスリーピースバンドだと、どうしてもギターに技巧が求められちゃう。それも、ピアノがあればカバー出来る。

 全員コーラスも出来るガールズバンド。……いや、フィーとツインボーカルでもいいかもしれない。


 そうすると、あとはベースか。

 カズくんに入ってもらっても、勿論いいんだけど。

 可愛らしいカズくんだから、妙にぴったり溶け込んじゃう感じもして笑っちゃった。

 いやいや、ぷいぷいと首を振り考え直す。


 あくまでガールズバンドじゃないと!


 その足ですぐに練習生たちのところに行き、ベースが出来る人いないか聞いてみたの。

 いや、……浅はかよね。居るわけないじゃない。しーんとしてたわ。


 さすがに楽器なんて弾ける子いないわよね。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m


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