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第77話 拡大

 私はこの機会を逃さず、次の一手を繰り出す。

 オーディションの再開だ。


 以前はメイシャ主導で行っていたけど、今回からは私だけ。

 採用方法も含めて、すべて私の考えで進めることにする。


 第一、試験とか面接とかって、私のガラじゃない。

 どういう風にしょうかなぁと考えていたんだけど、一個ひらめいたのよね。

 早速、国中にオーディションの告知を出した。


 それだけじゃない。

 海の種族は姫の国。魔族やエルフ、ピクシーは魔族の国。地上の種族はトレントの森でオーディションを行う。

 種族なんて関係ない。

 歌いたい、踊りたいと思ったら、みんないらっしゃい!


 さらに、親に説得されて抜けていったフィーちゃんにも声を掛けてみた。

 なんと親から許しが出て、また来てくれるそうなの。

 しかも、歌やダンスのトレーニングは自己流だけども続けていて、しかも楽器の練習までしてたみたい。その姿を見てて、親も認めざるを得なかったようね。


 それとね、前のオーディションで、とっても笑顔の可愛い女の子がいたのよ。その笑った顔や声が、ことあるごとに脳裏に浮かんでいたの。今でも鮮明に覚えているわ。

 音程もリズムも取れないし、踊りも変な感じだったんでやめたんだけど、今ならわかる。歌もダンスも、後からなんとでもなるってこと。


 Yっ()が、まさにそうだったんだもの。

 迷いはないわ。

 そうしたら、その子も来てくれると言ってくれた。

 アミっていう。名前は、すっかり忘れちゃってたけど……。


 で、オーディションは何をするかというとね、まさにそういうこと。

 私が変装して、会場の椅子とか机とかの設置をしながら、みんなを眺めるの。


 当日は、国中から大勢やってきた。


 入り口で挨拶が出来ない子は、もうその時点でアウト。


 みんなにオーディションの流れを説明した紙を配る。

 この時、手伝いましょうかと言ってくれた子は、もうそれだけで、ほぼ合格。

 緊張して、なにも言葉が出来ないってならいいけど、なにも言わずに紙を受け取るような子は不合格。にっこり笑って、ありがとうございますって言ってくれたらOKね。


 もちろんその笑顔も、媚びるような感じはダメ。魅力的な笑顔なら高評価よ。


「せっかく来てやったのに、いつになったら始まるの、おばさん?」


 はい、あなた速攻アウトですからねっ!

 しかも一体なによ、おばさんって……。たしかに、おばさんには変装しているけども。


 意外に、こういうことの出来ない子が多いことに驚いた。


 歌とかダンスとかってね、上手くなってみてわかったんだけど、とっても恥ずかしいことなの。かっこいいとか素敵だとか言われて勘違いしちゃうんだけど、実は自分が何を考えていて、どんな者で、どう生きてるかっていう、そのものなのよね。


 つまり、裸の自分を見せること。


 いきなりやって来て、どうです私の裸を見てくださいなんて、気持ち悪いと思わない? 昔、ジェニーがやってたのはそういうことなのよ。もっともその度合いはそこまでひどくなかったからこそ、仲間と話して、切り裂かれるように傷ついて、そうやってギリギリのところで気づいてくれたけども。


 だからこそ、綺麗にラッピングして、頭を下げて、どうかお願いしますって言い続ける必要があるの。

 もちろん、中身が一番大事なのは当たり前だけど、いきなり剥き出しの身体と心を渡したら誰だって引いちゃうでしょ。

 人の気持ちって、全部、どことなくグロテスクなものよ。


 愛もそう、夢もそう。どんなにキラキラしていたって、醜悪さからは逃れられない。いくら幸せにしたいと相手のことを想おうが、大勢のお客さんのことを考えていようが、自分勝手で、わがままなことには変わりがない。


 楽しいってことだって、あのレストラン前の野次馬の顔見ていたら、背中合わせだってことがよくわかる。あの人たちだって、楽しみたいからこそ来たわけでしょ。


 それを好きになってくれるか嫌いになるかは相手次第。そこはどうにもならないもの。無理に好きになってとは言えない。

 でも、少しでも受け入れてもらえるように、自分に出来る限りのことをする。それと、本気の礼儀と感謝の心。これは、どんなに教えてようとしても、わかる人じゃないとわからない。だって、わからなくたって生きて行けるし、幸せにだってなれる。


 だからこそ、これだけがオーディションの絶対かつ唯一の基準なのよ。


 紙を配り終えたら、もう合格者は決まってる。

 書かれているスケジュールはニセモノよ。

 まぁ、さすがにウソでした、だけじゃ可哀相なので歌とダンスの披露はしてもらうけど、どうせ即戦力なんていないんで、誰でも一緒。


 オーディションが始まるまでに、決めてた子が間違いないよねって確認する程度ね。


 今回は6人決めた。


 他の場所でのオーディションでも、それぞれ5人ずつくらい集めた。

 一気に15人も増えちゃったわ。これからも、もっと増やしていくつもり。


 人族はもうすぐ完成する建物の、5階と6階に住んでもらう予定。

 獣人族は森での寝泊りでいいみたいね。


 海底は、一旦王宮を間借りするんだけど、これも新たに建物を建ててもらう。


 魔族も建物を建てて欲しいと言ったんだけど、魔王が、おらの家に泊まれと言って聞かなかったので、レッスン生への宴会参加の禁止と、だれかれ構わず話しかけるのはダメってことを条件にお願いした。寂しそうな顔をしていたけども、ダメっ。


 オーディションは、これからも引き続き開催していく。

 見込みがあると思った女の子は、一人でも多く欲しいもの。


 でもねぇ。これだけの子たちの面倒を、ほぼ私一人でみなきゃいけない。

 歌詞を書いている時間はなさそうかなと思ってた。

 そこで、歌詞も一般の人に(つの)ることにしたの。


 もちろん作曲はハンサムボーイズもアンディさんもいるから、そっちに任せるとしてね。まぁ、いつかは曲も公募で頼むようになるかもしれないけど。


 そんなに一気に手を広げて大丈夫かって話もあるみたい。でもね、今ここでやらないと後悔しそうな気がするの。

 メイシャも、これからはレストラン事業ではなくて、石板の販売に関することをメインに展開していくらしい。だからこそ、前もって準備をしておかないといけない。10年後、20年後も見据えて!


 他には歌手や演奏家のグッズや権利販売。

 それまで服だのなんだのに勝手に乙女隊の名前が使われて売られていたんだけど、そこらへんを規制していくらしい。当然、なんらかの反発はあるんだろうけど、メイシャはいくつか業者を選定して、委託販売という形で落ち着かせようとしている。

 メイシャらしい、賢いやり方よね。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m


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