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第67話 暗雲の予兆

最終章「天国への階段」開始いたします。

 あれから半年が経過した。


 ゴードン&カンパニーの経営は順調だ。

 レストランは依然として予約がなかなか取れない状態。


 2回ほどワールドツアーも行ったわ。

 人族では3国ほど開催場所が増えた。フェルガさんのところでは、さすがにまだ出来ないんだけど、マルオリ共和国でも噂になったらしく小さな体育館で演奏させてもらったの。


 深海でもいくつか増えたし。

 そうそう、トータ姫と昔の姫の国が和平条約を結んだんだって。姫の新しい国のことを知った者が魔族に討伐の依頼に行ったんだけど、プリンシペさんに断られたことで危機に感じたようね。なんたってバックには驚くほどの数の種族が控えてるもの。


 あと、楽器の売り上げも急成長中。

 それに、一番の売り上げは、石板のようね。


 で、特に忙しくなったのは、メイシャなの。

 全ての部門の経営状況の把握に加え、今後の戦略計画の策定、そしてステージ。


 新曲の石板への録音は私もやったけど、他のレストランからの依頼も多く来てしまい、とてもあたし一人じゃ賄えなくなってもいた。

 録音の仕方は教えてあるが、さすがにピクシーだけに行かせるわけにはいかないわ。

 あたかも誰かが録音作業しているかのように、実際はピクシーが録音する。そんなことを頼めるのはメイシャしかいないのよ。


 必然的に、メイシャの負担は増えていた。

 あたしの部屋に来ても、居眠りをしてしまうほど。

 仕方ないとは思うけど、少し寂しい……。


 とはいえ、あたしだって忙しさは半端ない。

 新しい歌詞も書かなきゃいけないし、レストランで歌わないといけないし、よそのレストランからステージについてのアドバイスを求められれば、乗ったりもする。

 演奏できそうな場所に交渉に行くのも、あたし。


 そしてメイシャもあたしも、一番手がかかるのはY(ワイ)っ娘だった。


 もちろん、一人一人はいい子よ。

 でもね、歌や踊り、ステージの技術を覚えるのって、そんなに簡単なことじゃない。


 オーディションに合格したんだから、すぐにステージに立てると思い込んでた娘もいたようで、そんな甘いもんじゃないと言いつつ、心のケアもしてあげなきゃいけない。


 段々と個性も見えるようになってきた。


 Yっ娘もも組のジェニーちゃん。

 歌がうまいと思って取ったんだけど、歌自体は伸び悩んでる。

 でも、気が強いところがあって、グイグイとメンバーを引っ張ろうとしてくれてる。


 ただ、同じ組のウェンディちゃんもリーダー気質のようで、しょっちゅう衝突しているのよ。このウェンディちゃんは、踊りが出来るってことで取った子。とはいえ、とっても綺麗にバック転が出来るってくらいだけどもね。


 このウェンディちゃんの踊りへの突っかかり方は驚くほどなの。些細な事なんだけど、右腕の角度はこっちの方がいいとかね。ウェンディちゃんも踊りには自信があるようなので、なかなか引かない。同じ組にして失敗しちゃったかなって思うほどぶつかってる。

 でも、この二人は、組をまたいでみんなを引っ張ろうとしているところもある。別の組にしても、あんまり関係ないかも……。


 今のところは、ウェンディちゃんの方がみんなには好かれてるみたい。

 ジェニーちゃんが気の強さでみんなを自分の意のままに引っ張ろうとするのに対して、ウェンディちゃんは気配りも上手い。きちんと相手の言い分を聞こうとするのよね。

 さらに、自分から率先してなんでもしようとする。背中を見てね、って感じ。

 ジェニーちゃんは、そんなウェンディちゃんに嫉妬しているところもあるんじゃないかな。


 まぁ、二人とも悪いことじゃないわ。


 同じく『もも組』のアリスちゃん。

 ものすごく可愛らしい子なんだけど、相当苦労して来たみたい。家が貧しくて、このオーディションも親というか、家を支えるために受けたらしい。

 ステージに立ちたい、歌って踊りたいって夢を持ってる子がほとんどの中で、ひたすら現実を見てるの。どう振舞ったらいいかを常に考えてるっていうか。


 でも、そういう大人な性格が災いしてか、周りの子に気を遣いすぎて、やりたいように動けないみたい。そのことと、ステージに立つためには『自分』が目立たないといけないというジレンマも抱えてるようだわ。

 まだ15歳なんで幼く見えるし、たまに大声でケラケラ笑ってるのを聞くと実際にその通りなんだけど、いきなり考え込むように黙っちゃうこともあって、そういう時は哀愁まで感じちゃう。あたしには、そのギャップも魅力だと思けど。

 歌もダンスも、ほとんどやったことがなかったらしいけど、とっても熱心で、一番成長度合いが大きいかもしれないわね。


 で、ちょっと困っているのが、タンポポ組の三人。


 リリーちゃんは、入ったとき一番歌が上手かったの。今でも、みんなの中では一番上手いかもしれない。

 ただ、ダンスが苦手。というより、やる気が感じられないのよね。はぁ……。歌でいいじゃない、って思ってるのかなぁ。

 他の娘ともあまり関わり合わないようにしてるみたいだし。


 セレーナちゃん。

 ダンスを習ってたようで、唯一、ちゃんと踊れる娘って感じだった。とってもハキハキしてる。ものすごく受け答えがいい。……いや、なんか良すぎるの。

 レイナがステージ終わって泣いちゃったとき、笑ってたんじゃないかなぁ、やっぱり。

 一度見ちゃったのよね。


「歌もダンスも出来ないんだから、邪魔よ」


 マイちゃんに、そんなことを言ってたの。

 あたしとかメイシャ、あと、特にリーダー格のジェニーちゃん、ウェンディちゃんには従順なんだけど、他の子にはそんな態度なのかなと。


「全員ステージデビュー出来るほどには実力がない。何年かかるかもよ」って言った時、ものすごくイヤそうな顔したのがこの二人だったし。


 忍耐力で採用したケイティちゃんも、あたしに笑うんだけど、嘘くさい笑いなのよね。愛想笑いというか、そんな感じ。


 グループはあくまで仮なんだけど、実はこのたんぽぽ組。一番最初にデビュー出来るかなって期待してたのよね。歌もダンスも一番得意そうな子がいるし、なんてったって忍耐力はアイドルの必須要素だから。

 もうすぐ地下のステージが完成しそうなんだけど、そこでデビューさせられるかなって期待もしていたくらい。

 でも、到底無理そう。


 弱ったなぁ……なんて思ってたら、本当にマズいことが起きちゃった。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m


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