第65話 ツアー準備とYっ娘と
とうとう近づいてまいりました、ワールドツアー!
会場の設営もあるんで、だいたい1~2日おきに日付を設定。
合計11か所のツアーで、トータル1か月の長丁場になったわ。
まぁ、とはいえ、ステージが終わったらワープで帰れるのよね。行った先で寝泊りとかはないから、前世でやってたようなツアーに比べると遥かに楽だわ。
今回新しく入った9人には、まさかトータ族の話はまだ出来ないし、ワープも見せられないんで、ゴードンレストランとメヒスキだけ、裏方として手伝ってもらうことにした。
そうそう、この娘たち。妹って意味での「Younger Sister」から「Yっ娘」って名前をつけたの。
全部で9人だったので、三人一組で3組。もちろん、仮の組み合わせよ。
1組目は『Yっ娘さくら組』。
歌の上手かったフィーちゃん、可愛いルナちゃん、どこでも寝れるマイちゃん。
2組目は『Yっ娘もも組』。
歌の上手かったジェニーちゃん、可愛いアリスちゃん、ダンスが出来るウェンディちゃん。
3組目は『Yっ娘たんぽぽ組』。
歌の上手かったリリーちゃん、ダンスが出来るセリーナちゃん。『忍耐力』のケイティちゃん。
歌が上手い子を分けたのは、それぞれの班ごとに模範が欲しかったから。自分たちだけでも練習できるようにね。ダンスの方は、まぁ、出来ると言ってもそこまでではないんで、あんまり気にしてない。
で、組ごとに同じ部屋に寝泊まりしてもらうことにした。
いいよね、こういうの。青春っぽい!
ツアーの準備しながら、メイシャとあたしでレッスン。
面白いことに、それぞれの個性が見えてくる。
フィーちゃんは意外に頑固さん。面接の時には、とっても大人しかったかな。
じっとあたしの話を聞いて、きちんと理解できてからでないとやってみようとしない。石橋を叩いて渡るタイプかしら。とにかくまずやってみてよって、少し歯がゆく感じることもある。けど、出来るようになるまでいつまでも練習してる。
ルナちゃんはその逆で、聞いたらすぐにやってみないと気が済まないタイプ。でも、出来た出来たってすぐ思い込んじゃうのが玉に瑕なのよね。
どこでも寝れるマイちゃん。彼女は本当に逸材だったかも。言われたことの対応力が半端ない。頭の回転が速いっていうのかしら。言った言葉に、パッとなにかしら反応してくれる。面白いこともすぐ思いついて言える。
まだ歌もダンスも上手くはならないけど、才能を感じるの。
他の子も、それぞれに個性があって面白い。
まだまだ完全には個性が表に出ていないし、当然アピール出来るまでには至っていないんだけど、なんとなく将来どうなっていくか見える気もする。
人族以外の場所には連れていけないしレッスンも出来なくなるので、その間はグループごとでの自主練習になっちゃう。だからこそ、それまでに急いで一人ひとりの課題を見つけて、伝えてあげないといけない。時間がないので詰め込んでレッスンしてるっていうわけ。あんまり焦っちゃいけないのかもだけど。
ちなみにこの後は、エルフ族との合同練習……。
まぁもう、目がクルクル回っちゃうぐらい忙しいわ。
でも、なんとか乗り切らないと! 今は、とても大事な時に違いないって思ってるから。
で、エルフ族は山の上に住んでいるの。普通に歩いているとわからないんだけど、呪文で街が姿を現したのよね。あれはびっくりしたわ。
一度行ってるんで、今回はワープでひとっ飛びだけど。
エルフの里には、あたしとハンサムボーイズ、そして乙女隊も連れて行った。
メイシャはYっ娘のレッスン中でお留守番。
本当はレイナも連れて行きたかったんだけど、なんとなく声を掛けそびれてしまった……。
エルフ族の楽器は、人族のそれと同じ。
というより、エルフの楽器がオリジナルであり、エルフが人族に広めたのだという。
そのため、逆に昔ながらの作りで、ハンサムボーイズの楽器と細かいところが異なる。
ヒロさんが作ったアンデロを見て、その進化具合に驚いていた。魔力を効率よく伝達するための仕組みや、フレットの高さの調整など、弾きやすさに違いが出ているようだ。
ヒロダーにももちろん、興味津々だった。
カサーマなどは逆で、ジュゲンさんが驚いていた。本体やパーツの素材の違いというのだろうか。たしかにエルフの方が音は豊かだ。
楽器には細かな違いはあったが、演奏が始まってしまえばなんてことない。
音で会話する、っていうのかしらね。お互いに顔を見合わせながらソロを取り合い、パートを入れ替え、モチーフに誰かが応答する。特にジュゲンさんとエルフのカサーマ弾きの掛け合いなんて、鳥肌が立つくらいだったわよ。
歌が入るとなかなかそうはいかないんだけど、楽器だけの演奏だと自由度が高いので掛け合いが特に面白い。
歌なしの曲も演奏リストに入れようということになった。
エルフからはカサーマ、ヒロさんからはアンデロを贈りあった。
もともとエルフって、気位が高くて、もちろん地位も高い種族だという。
びっくりしたんだけど、実は魔族が最上位に近いんだって。エルフはそれに並ぶ種族らしい。
トータ族やトレント族がその下。
人族は最下層。でも、いつの間にか知恵や団結力で、その階級制度から抜け出したらしい。その間に他の種族との戦闘の歴史もあるそう。
人族はそのことを一切、忘れてしまっている。その記録をわずかに残しているのが、神話ということらしい。
プリンシペさんによれば、屈服の歴史を持っていると敵に対峙した時に恐れを抱くというので、記憶の改ざんが政治的に行われたらしい。
人族はそれが功を奏して巨大な一族に成り上がったけども、歴史的な記憶を失くしたことで、世界を危機に陥れる種族になってしまったのは皮肉なものね……。
でも、こうして種族や階級制度を超えて音楽で仲良くなっていくって、この世界にとって、良いことに違いないんじゃないかしら。うーん、まぁ、政治的なことはメヒスキの王様やトータ姫のような賢いのに任せて、あたしは仲良くやるってしかなさそうだけどもね。
とにかく今は、ワールドツアーの成功を目指そう!
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