↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/102

第61話 メイシャと、うふふ……?

 みんなをそれぞれ送り届け、ゴードンレストランに戻る。

 食事をとろうとしたが、みんなあまりお腹に入らないみたい。

 そりゃそうよね、あんなもの見せられたら。


 飲み物だけにして、今日はゆっくり休もうとそれぞれ部屋に戻った。

 でも、あたしもやっぱりまだ巨大樹の興奮が醒めないのかしら、ベッドに入ってもなかなか寝付けない。


 ドアをノックする音が聞こえた。


「先生?」


 声のするほうを見た。かすかに扉が開いて、明かりが漏れている。

 ドアの隙間からメイシャが顔を見せていた。


「どうしたの?」


 私はベッドから身を起こして、答える。


「ちょっと……」

「眠れないんでしょ。どうぞ」


 メイシャはあたしの言葉にこくんと頷き、部屋に入ってきた。

 ステージは今日で2度目だ。最初は限りない緊張が一気に脱力して、放心したように寝てしまうが、2回目だと、興奮状態になることがある。現に、あたしがそうだった。

 しかも古代樹のあの光景を目の当たりにしては、眠れなくなるのも無理はないわね。

 メイシャは、まだ化粧もそのまま、花柄のついた黒いワンピースも着たままだった。暗い部屋の中に綺麗な顔と、すらっとした花柄の姿態だけがうっすらと浮かび上がっていた。


「今日もいいステージだったわね、メイシャ」

「はい、ありがとうございます」


 落ち着いた声だったが、やっぱり興奮しているのだろう。かすかに震えて聞こえた。

 緊張とないまぜになった豊かな響き。彼女の声は天性のものね。


「先生」

「ん?」


 メイシャの顔を見る。途端にうつむいた。

 うつむいたまま、口を開く。


「先生……」

「なあに?」


 メイシャが顔を上げる。少し目が潤んでいた。それは、今まで何度も見てきた中で、一番美しい顔だと思った。ドキッとしたほどだ。


「ずっと好きでした」


 そう言うと、あたしの体に抱きついてきた。ステージが終わった後に抱き絞める感覚とは違う。あまりに急な言葉と動作、そして表情に、全てのつっかえ棒が吹き飛んでしまうような錯覚に陥る。

 私は平静を装い、メイシャの頭を撫でた。

 メイシャはその手を握り、自分の背中に回す。そしてわたしの顔に、その綺麗な顔を近づけてきた。

 とてもいい匂いがした。



 ◆◆◆◆◆



 その後のことは、あまりよく覚えていない……。

 ただ、気づくと私もメイシャも裸になっており、ベッドの中だった。


 最初の世界で、あたしは童貞くんだったけど、まぁ、知識は色々とあった。

 いろんなことも見て、知っている。今時、中学生だってその位の知識はあるだろう。

 一番は興味本位。それと、独りでやった時の快感。

 ……とはいえ、そんなに大したものではなかった。

 女性としたら、きっともっと凄いんだろうなという漠然とした夢を抱いていた。

 そんな程度のもの。


 でも、そんな抽象的な感覚でメイシャとしたわけではない。

 男としてメイシャを見ていたわけではないの。


 最初の転生後におばちゃんになった後、色んな人と仕事を取るために寝ても来たけど、誰一人愛せなかった。

 愛しいという感情が心に湧き上がることは、一度もなかったのよ。


――でも、今日。


 とても綺麗な花を心から愛でるかのように……。


 経験はないとメイシャは言ったが、どちらかという私の方が子供のように甘えちゃった。メイシャはそんな私をとても綺麗な花のように扱ってくれたの。

 転生前の経験や知識なんかじゃなく、今のあたしそのもの。


 少し痛くもあったけど、我慢できた。いや、我慢じゃない。心地よい感じ。

 メイシャも同じようなことを言ってたわ。

 それと、毎日のように私のことを考えながら独りでやってたんだって、顔を赤らめながら話してくれた。それも、とっても嬉しかった。


 ステージや輝く巨大樹の興奮があったのは、否定できない。

 きっとメイシャに最後の後押しをしてくれたんだと思う。


 でも、それだけじゃない。


 あたしも、心のどこかでは願っていた気もする。

 どこかで、メイシャとこんな関係になりたいと思っていたに違いない。


 先生と生徒だから。

 同じステージに立つ仲間だから。

 ゴードンさんの娘だから。

 わたしもメイシャも女性だから。


 そんな言葉で、自分を抑えていた。

 ステージでのメイシャの姿を見るたび、タガが外れそうになるのを必死になって押し殺してた。どこかで、とっくにそのことは気づいていた。

 必死に、必死に押さえようとしていた。


 でも、一線を超えてしまった時、安堵している自分に気づいた。


――これで、いいんだ。


 心から、これで良かったんだと思った。後ろめたい気持ちはない。

 どうしたって、自分には嘘はつけない。

 なるべくして、こうなったと思えた。


「先生? あっ……?」


 メイシャの声ではない。

 ドアのところに人影があった。


――レイナ?!


 廊下を駆けていく足音が聞こえた。

 きっと彼女も今日のことで眠れなかったんだろう。しかも、ステージでは歌い出しも失敗している。

 わたしに相談しに来たんだと思う。


 でも、どうしよう。見られちゃったかもしれない……。

 メイシャとのことは決して後ろめたいことではなかったが、誰かに見られるというのは困りもの。


 どうしよう……。

 ……どうしよう……。


 あたしはメイシャに、今日限りにしようと言った。

 もちろんその約束はすぐに破られて、カギをきちんとかけようという約束に置き換わってしまったのだけど……。


お読みいただき、ありがとうございました!


ブックマークなどなど、まことにありがとうございます。

更新の励みとなっております!


引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。